ページの先頭です。
本文へジャンプする。
サイト内共通メニューここまで。

会長声明・決議・意見書(2017年度)

男女共同参画社会に向けての宣言

2018年02月28日更新

 日本弁護士連合会が,平成14年5月23日に開催された第53回定期総会において,「弁護士会における男女共同参画の実現なくして男女共同参画社会の実現はありえない」と宣明してから早15年が経過し,各単位会に対しても,個別の取組みが求められている。
 当会においても,基本的人権の擁護と社会正義の実現という弁護士の使命を果たすため,男女が性別にかかわらず能力を十分に発揮し,活躍できる環境を会内で整備することが急務である。
 近年の会員数の増加に伴い,当会における女性会員の絶対数は増えているものの,全会員数に対する女性会員の割合は,20%程度に止まっており,当会の理事者,常議員,委員会委員長など役職者に占める割合はさらに低い割合に止まっている。それ以外にも,就職差別,ハラスメントによる被害,男女間の収入格差が現在も存在しているおそれがあり,男女共同参画に向けての環境整備を拡充する必要がある。
 そこで,当会においても,男女の実質的な平等を図るとともに,女性会員の施策・方針決定過程への積極的な参加や活動領域の拡大を実現させ,男女相互の視点から種々の施策を検討し,もって男女共同参画の推進に寄与するため,下記の活動指針を実現していくことを宣言する。

  1.  男女共同参画を実現するための「基本計画」を整備し,同計画に基づいて組織的横断的に活動を行うため,会長を本部長とする男女共同参画推進本部を設置する。
  2.  理事者,常議員,委員会の委員長など役職者に関して,積極的に女性会員を登用し,会の施策・方針決定過程への女性会員の参画を拡大する。
  3.  就職・処遇において,性別による差別的取扱いがないよう配慮を促し,受入れ事務所,取扱業務の拡大等,男女会員の実質的な平等を確保する。また,勤務時間内外を問わず,セクシュアルハラスメント,パワーハラスメント等,差別的な取扱いを防止する施策を講ずる。
  4.  男女を問わず,出産・育児,介護等の家庭の事情に関わらず,各会員が業務,会務活動,研修などに参加するための支援策を検討する。
  5.  男女共同参画に関し,会員に対する研修,啓発活動を一層充実させる。
  6.  様々な分野における女性会員のロールモデルを収集し,会員及び法曹を志す学生に情報提供を行うこと等により,当会における女性会員割合の拡大を企図する。

以上


2018(平成30)年2月26日
神奈川県弁護士会



宣言の理由


  1.  神奈川県弁護士会でのこれまでの取組み

    当会においては,これまで,産前産後期間及び育児期間中の会費・公益活動免除制度の創設,ハラスメント防止に関する規則及び指針の創設等,男女平等実現のための施策がとられてきたところである。

  2.  政府・社会の動向

    現政府においては,「社会のあらゆる分野において,2020年までに,指導的地位に女性が占める割合が,少なくとも30%程度になるよう期待する」との政府目標が掲げられ,2015年(平成27年)4月から有価証券報告書に女性役員比率を記載することの義務化や,女性の役員登用を公表する試みが内閣府,経済産業省を中心になされている。
     また,企業内でも,出産・育児,介護等のライフイベントに伴って勤務時間が制約される社員が企業を離れることを防ぐべく,そのような社員に対しての環境整備,同環境の調整が図られる等,社会全体の意識に急速な進展がみられる。

  3.  神奈川県弁護士会としての今後の課題と目標
    (1)「基本計画」の整備,及び男女共同参画推進体制の構築・整備

    男女共同参画社会の理念を当会においても実現させるためには,当会において「基本計画」を整備し,統一的な取組みを行っていく必要がある。
     加えて,単に「基本計画」を整備することのみならず,その計画達成状況を今後も随時,把握していく必要があるため,当会に男女共同参画推進本部を設置し,会長を本部長として,数値目標の設定を含めた男女共同参画推進の具体的施策を検討し,同施策の運用を中長期的に行っていくべきである。

    (2)施策・方針決定過程への女性会員の参画の拡大

    当会では,2017年(平成29年)7月1日時点での会内女性会員割合が約19%(会員数1597名,女性会員307名)である中で,2017年(平成29年)年度の役職者に占める女性会員の数と割合は,執行部(会長・副会長)は1名(17%),常議員5名(13%)と低い水準にとどまっている。かかる数値は,下記の表記載のとおり,年度によってはこれを下回ることも多く存在する状況である。また,女性会員のいない委員会が存在することに加え,女性会員が存在する委員会においても女性会員の出席割合は,男性会員の出席割合と比べて,10~30%程度低いという差が認められる状況である。

  4.   平成
    24年度
    平成
    25年度
    平成
    26年度
    平成
    27年度
    平成
    28年度
    平成
    29年度
    会員総数に対する女性会員比率 20% 19% 20% 19% 20% 19%
    会長,副会長に占める女性会員比率 0% 0% 17% 17% 0% 17%
    常議員(※1)に占める女性会員比率 12% 20% 17% 20% 18% 13%
    委員会委員長,副委員長に占める女性会員比率 11% 16% 8% 14% 11% 19%
    支部役員(※2)に占める女性会員比率(川崎) 12% 10% 10% 20% 20% 20%
    支部役員に占める女性会員比率(県西) 20% 0% 0% 0% 20% 17%
    支部役員に占める女性会員比率(横須賀) 0% 0% 25% 25% 0% 0%
    支部役員に占める女性会員比率(相模原) 25% 25% 33% 30% 20% 10%

    ※1:常議員の総数は,平成27年度より,40名に変更している(平成26年度までは,35名)。
    ※2:支部役員とは,支部長,副支部長,幹事を指す。


    今後は,本部支部ともに,役職者就任,会務活動参加におけるさらなる男女平等の実現が期待される。そのためには,役職者就任,会務活動への参加に障壁となっている事由を,執行部が毎年調査する機会を設けることや環境整備の検証が不可欠であり,その上で,委員会等の開催時間,参加方法の多様化等,障壁事由を取り除くための施策を整備することが必要である。

    (3)就職・処遇における男女平等確保,差別的な取扱いの防止
    1. 就職・処遇における男女平等を実現するためには,男女間でみられる就職時の取扱いの差異などに対応する必要がある。
       また,業務の執行において,男女で不都合が生じることのないよう,女性会員への業務妨害に対するサポート体制や,職務上の氏名を利用できる環境の整備を今後充実させていくべきである。
       就職・処遇は,雇用を決定する個々の会員の決定事項であることはもちろんであるが,一定規模以上の事務所において女性会員を採用することを努力義務化することや,業務分野における収益性の差と男女間の収入格差との関連性について多角的に調査・分析し,関連性が認められる事項については関係機関に対して提言を行うこと等もまた,実質的な男女平等確保に資するものと考えられる。
    2. 差別的な取扱いの防止という点に関して,これまで当会では,2011年(平成23年)に「ハラスメントの防止に関する規則」,「セクシュアルハラスメントを防止するために会員等が認識すべき事項に関する指針」を施行した。また,2017年(平成29年)の理事者決定により,「パワーハラスメントの防止に関する指針」を施行した。これまでの当会の取組みについて,再度検証し,実効的な制度となるよう,会則の制定・改訂を含めて,検討を重ねる必要がある。
    (4)仕事と家庭の両立支援

    男女平等の観点からは,会員の出産・育児,介護等のライフイベントに伴う労働時間の制約に対応する必要がある。そのためには,会員の男女を問わず利用することのできる,ライフイベントに伴って業務が制限される場合のサポート体制の構築が必要であると考える。
     サポート体制の構築には,会員それぞれの協力も不可欠であるから,多様な働き方についての情報提供もあわせて行っていく必要がある。
     今後は,出産を控えた女性会員や,育児中の会員がより充実して業務を行えるよう,会館内に育児室を設けることや,一時預かり保育等の保育サービスの提供も検討していくことが望まれる。

    (5)研修・啓発活動の必要性

    男女共同参画の必要性,上記の各施策の必要性について,個々の会員の理解が不可欠であり,定期的に,個々の会員が男女共同参画の重要性を認識,理解する機会を確保することが必要である。
     もっとも,当会は,新しい法曹養成制度の開始により,直近10年で会員数が飛躍的に増大したことで,会員集会や総会等での対面での周知では限界が生じており,別途,全会員に対する研修,啓発活動の実施が必要である。

    (6)女性弁護士のロールモデルの収集,会内における女性会員割合の拡大

    特定の女性会員に負担を強いることなく目標の実現を行うには,女性会員の増加及び女性会員の各種活動への積極的な参加もまた必要になってくるものである。
     女性会員の増加及び女性会員の各種活動への積極的な参加には,様々な分野における女性弁護士のロールモデルを収集し,当会会員のみならず法曹を志す学生に対し情報提供を行い,その検証を継続していくことが必要と考えられる。


    以上の施策を実現するため,本宣言案を提案するものである。

    以上

     

 
 
本文ここまで。