2018年01月26日更新
昨年12月19日、東京拘置所において、2名の死刑が執行された。
死刑は国家が人間のかけがえのない命を奪う制度であり、人間の尊厳を軽視する非人道的なものであるとして、多くの国ですでに廃止ないしその執行が停止されている。2016年12月末日現在、法律上または事実上の死刑廃止国は141か国に及び世界の3分の2以上を占めている。しかも、実際に死刑を執行した国はさらに少なく、2016年の死刑執行国は日本を含め23か国のみである。
2016年12月の国連総会は、加盟国193か国中117か国の賛成により、死刑存置国に対する死刑執行停止を求める決議を採択した。当会でも、これまで、死刑執行の度に抗議する会長声明等を発出してきたところである。日弁連も、2016年10月7日に開催された第59回人権大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、その中で2020年までに死刑制度を廃止すること等を国に求めた。
また、今回死刑が執行された2名はいずれも弁護人がついて再審請求中であり、そのうち1名は、犯行時19歳の少年であったが、これらはいずれも看過できないことがらである。まず、再審請求中にもかかわらず死刑を執行することは、再審という裁判を受ける権利を政府が奪うことであり、極めて問題である。この点、2014年7月24日に国際人権(自由権)規約委員会も、同規約の実施状況に関する第6回日本政府報告書に対する総括所見において、再審請求には死刑の執行停止効を持たせるべきであると勧告している。次に、少年は、成育環境の影響を受けやすく、本人にのみ全責任を負わせることは酷である。この点、国連総会で採択されている少年司法運営に関する国連最低基準規則(いわゆる北京ルールズ)は、「少年とは各国の法制度の下において、犯罪について成人とは違った仕方で取り扱われている児童又は若者をいう」と規定し、「死刑は少年が行ったいかなる犯罪についてもこれを科してはならない」としているところである。
さらに、今日、死刑をめぐる多くの情報が公開されておらず、その中で死刑が執行され続けていることは、民主主義の社会において大きな問題であるといわなければならない。 当会は、改めて、今回の死刑執行に強く抗議するとともに、政府が死刑の廃止に向けて、広く情報を開示し、全社会的な議論と検討を開始すること、そしてその間すべての死刑執行を停止することを強く求めるものである。
神奈川県弁護士会 会長 延命 政之
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