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神奈川県消費生活条例の改正にかかる県知事答弁に対する会長声明
2017年12月15日更新
2017(平成29)年12月14日
神奈川県弁護士会 会長 延命 政之
神奈川県消費生活条例(以下「条例」という)の改正に関し、2017年12月5日の神奈川県議会本会議において、黒岩県知事は、ステッカー等により訪問販売を拒絶する意思を表示している世帯への訪問を禁止する規定を新設することについて、悪質な業者からの被害を防ぐのに規制は最善の解決策とはいえない、業界の自主規制やガイドラインの策定があらゆる業界に広がるよう働きかけたい、そのために悪質な勧誘の撲滅を目指す宣言を知事自ら行いたいなどとして、かかる規定を改正案に盛り込まない方針である旨答弁した(以下「本答弁」という)。 当会は本答弁に対し、強く抗議の意を表明するものである。以下、理由を述べる。
まず、今回の条例改正は、加速する高齢化による高齢者の消費者被害の増加やインターネットの普及等により、消費者被害が一層多様化、複雑化している背景を踏まえ、神奈川県消費生活審議会(以下「審議会」という)への諮問・同答申、並びに県が掲げた改正骨子案に対するパブリックコメントを経たうえで、2018年の2月議会に改正議案が提出されることになっていた。 審議会の答申は、ステッカー等により拒絶の意思を表示した世帯への訪問販売を禁止する規制を設ける必要性を述べるものであり、また、パブリックコメントも、県に寄せられた1200件を超える意見のうち、約半数が訪問販売規制に関するものであって、うち7割が規制をもうけることに賛成するものであった。 なお、本答弁は、訪問販売規制を排除する理由として、健全な営業活動の阻害、地域の見守り活動や地域コミュニティへの影響、ステッカーを貼った高齢者への狙い撃ちといった懸念を述べているが、実際にステッカーによる訪問販売規制を規則や解釈において取り入れている自治体において、かかる懸念が現実化したとの報告はなされていない。 本答弁は、県自ら設定したプロセスである審議会の答申及びパブリックコメントにより多数を占めた県民意見と異なる方針を示すことについて、何ら具体的検証に基づく理由を示しておらず、県政に県民意見を反映するプロセスを無視した答弁と評価せざるを得ない。
また、当会としても2016年10月21日付「神奈川県消費生活条例の見直しに関する意見書」、2017年6月8日付「神奈川県消費生活条例の見直しに関する意見書~勧誘拒絶の意思表示と『訪問販売お断り』ステッカーについて~」及び同年10月19日付「『神奈川県消費生活条例の改正骨子案』に関する意見書」で繰り返し述べてきたとおり、訪問販売による被害、とりわけ判断力が低下し、一旦訪問販売が始まってしまうと断ることができない高齢者が被害に遭うのを防ぐためには、訪問販売を入口の段階で一律に規制することが何としても必要である。現行条例でも拒絶後の再勧誘は規制されているが、被害相談は高齢者を中心に増加・高止まりしている。業界の自浄作用に期待していたのでは被害の発生・拡大を防ぐことができないのは明らかであり、審議会及びパブリックコメントにおいて、規制を求める意見が多数を占めたのも、至極当然といえる。 本答弁は、かかる消費者被害、訪問販売被害の現実から乖離しており、県民の安心安全な生活の確保という行政の責務に背を向けるものに他ならない。
まとめ
以上のとおり、本答弁は、プロセスにおいても、実態においても、重大な問題を孕むものであり、当会として到底容認することはできない。直ちに撤回のうえ、訪問販売規制を含めた条例改正案について、県議会における審理がなされるよう強く求めるものである。
以上
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