2017年08月14日更新
本年7月13日,大阪拘置所及び広島拘置所において死刑確定者各1名に対する死刑が執行された。
金田法務大臣になって2度目の死刑執行であり,第2次安倍内閣になって合計19名の死刑が執行された。
日本弁護士連合会は,2015年12月9日,岩城法務大臣に対し「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出し,死刑制度に関する検討課題について国民的議論を行うための有識者会議を設置し,死刑制度とその運用に関する情報を公開すること,そのような議論が尽くされるまですべての死刑の執行を停止することを求めた。しかしながら,この間,有識者会議が設置されることもなく,死刑制度とその運用に関する情報公開は全く進んでいない。
死刑執行については,いまなお多くの情報が非公開とされており,秘密主義との批判を免れない。今回,大阪拘置所で死刑が執行された死刑確定者は,報道によれば,再審請求中であったと言われている。再審請求中であるにもかかわらず,死刑が執行されたことは極めて異例のことであり,その理由についても法務省は明らかにしていない。
また,広島拘置所で死刑が執行された死刑確定者は,控訴を自ら取り下げたことで第1審判決のみで死刑判決が確定しており上級審の判断を得ていない事案であること,被害者が1名の事案であったことなどがどのように検討され,今回の死刑執行に至ったのか一切明らかにされていない。
我が国においては,四つの死刑確定事件(免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)について再審無罪が確定している。死刑事件ではないが,布川事件,足利事件,東電OL殺人事件等で再審無罪判決が確定している。死刑確定事件である袴田事件については,2014年3月27日静岡地方裁判所が再審開始を決定し,死刑執行と拘置の停止を決定している。これらの事件が示すとおり,刑事裁判には,常にえん罪の可能性があり,ひとたび死刑が執行されてしまえば,取り返しはつかず,その不正義はまさに筆舌に尽くしがたい。
日本弁護士連合会は,2016年10月に開催された人権擁護大会において「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,その中で,日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言した。
当会では,これまでも,死刑執行のたびに,死刑の執行を停止し,死刑廃止について全社会的議論を始めることを求める会長声明・談話を発表してきた。
当会は,改めて,今回の死刑執行に抗議するとともに,死刑制度の廃止について全社会的議論を尽くすまでの間死刑の執行を停止するよう重ねて強く要請するものである。
2017(平成29)年8月10日
神奈川県弁護士会
会長 延 命 政 之
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