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いじめ防止対策推進法の趣旨を踏まえた適切な対応を求める会長声明
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いじめ防止対策推進法の趣旨を踏まえた適切な対応を求める会長声明
2017年01月13日更新
東京電力福島第一原発事故で福島県から横浜市に避難した中学1年の男子生徒が小学生時代に転入先の横浜市立小学校でいじめられていた問題につき,横浜市は,学校及び教育委員会の対応が不適切であったとして,平成28年12月15日から当時の対応の検証と再発防止策の検討を開始した旨の報道がなされている。この事件の報道をきっかけに,全国で相次いでいじめ被害の報道がなされているところ,被害者の子どもに深刻な影響が出ている事案も少なくない。
いじめ防止対策推進法が施行されてから既に3年が経過したにもかかわらず,未だ同法の趣旨が十分に浸透せずに,このような痛ましい事態が起きていることについて,当会は深く憂慮するものである。
いじめ防止対策推進法は,いじめを「児童等に対して,当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって,当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの」と定義しており(同法第2条),ある行為がいじめに当たるかどうかの判断は,対象となった子どもが感じた心身の苦痛を重視して行うものとしている。
これまでのいじめ自殺等の痛ましい事態においては,「遊びの中で起きたこと」「被害者にも問題があった」「喧嘩に過ぎない」「ささいなことである」などとして学校にいじめとの認識が乏しく,子どもの苦痛に目を向けた適切な対応がなされていないことが多くみられた。その反省に立ち,上記のいじめの定義は,被害者目線を重視し,本来支援されるべき子どもを対象からこぼしてはならないという趣旨で定められたものである。
このような趣旨からすれば,学校や教育委員会においては,いじめ被害を訴えている子どもがいる場合には,その子どもの苦しみに寄り添い,その目線で対応を行う必要があり,学校は被害の調査やその子どもの支援を怠ってはならないというべきである。
国の「いじめの防止等のための基本的な方針」や横浜市の「横浜市いじめ防止基本方針」が,児童生徒や保護者からいじめられて重大事態に至ったという申立てがあったときは,その時点で学校が「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とはいえない」と考えたとしても,重大事態ととらえる必要がある,あるいは重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たる,としているのは当然のことである。
それにもかかわらず,報道によれば,冒頭の事件では,子どもやその保護者がいじめによる不登校や金銭の被害などを学校に訴えたのに,学校側は「いじめの認定ができなかった」などとして,一年半もの間,いじめ防止対策推進法第28条第1項に基づく重大事態としての調査をしていなかったとされる。
これは,被害者目線を重視し本来支援されるべき子どもを対象からこぼしてはならないといういじめ防止対策推進法の趣旨及びこれを踏まえた国や横浜市のいじめ防止基本方針に反するものとして,甚だ遺憾である。
当会は,学校,教育委員会に対し,いじめ防止対策推進法の趣旨を踏まえ,苦痛を訴える子どもの目線で,いじめへの適切な対応を行うとともに,そのための十分な体制を整備するよう求める。
以 上
2017(平成29)年1月12日
神奈川県弁護士会
会長 三浦 修
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