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会長声明・決議・意見書(2016年度)

地方消費者行政の充実・強化のための継続的な財源確保を求める会長声明

2016年10月21日更新

先頃,神奈川県が発表した「平成27年度神奈川県内における消費生活相談概要」によれば,同年度の神奈川県内の苦情相談(各自治体の消費生活相談窓口で受け付けたもの)は67,272件と高水準であり,うち65歳以上の高齢者からの苦情件数は17,81 3件であって,高齢者の人口構成比を上回る割合となっており,県内における消費者被害が後を絶たず,依然として深刻な状況であることが明らかとなっている。これら消費者被害を救済し,被害を未然に防止するため,相談・あっせん体制の強化や地域での連携等地方消費者行政の充実・強化が今後とも図られなければならないことは,言うまでもない。

この地方消費者行政の充実・強化のため,平成26年度を最終年度とする地方消費者行政活性化基金の後継措置として,地方消費者行政推進交付金制度が創設され,平成28年度では当初予算ベースで約30億円の財政規模をもって各都道府県及び各市町村に交付金が交付され,各自治体においては,消費生活センターの環境整備,相談時間の延長,相談員の処遇改善や養成・研修体制の強化,高齢者の見守りにつながる地域での連携強化に向けた事業や研修活動等に利用しているところである。

ところが,この地方消費者行政推進交付金は,あくまでも時限的な措置とされ,事業メニューごとに財政支援活用期間が定められているところ,最も活用期間が短い事業メニューにあっては,平成28年度が活用期間の最終年度となっており,以後,順次,活用期間が終了し,活用期間終了後は各自治体の自主財源をもって充てるべきものとされている。
 もとより,各自治体において,独自の努力・工夫によって消費者行政を充実させ,そのため自ら財源を確保することが求められるところではあるが,各自治体の置かれた財政事情が厳しいことは否定できない。さらに,平成28年4月に施行された改正消費者安全法においては,高齢者等の消費者被害防止のために必要な取組みを行うことが各自治体に求められており,相談体制や地域連携の充実・強化がより一層図られなければならないところ,各自治体の置かれた財政事情によって,これらの取組みを含めた相談体制の充実・強化が図られず,ましてや地方消費者行政推進交付金の活用期間の終了によって縮小するようなことは決してあってはならない。地方消費者行政を充実・強化することは,各自治体の責務であるとともに,国の責務でもある。平成28年5月,特定商取引に関する法律の一部を改正する法律,消費者契約法の一部を改正する法律がそれぞれ可決成立したが,その際,消費生活センター等の相談体制の質的向上などが重要であることに鑑み,地方消費者行政推進交付金の継続を含む財政支援等を国の責任において措置することとの趣旨の附帯決議がなされているところでもある。

このような中で,東京都及び政令指定都市20市からなる大都市消費者行政担当部課長連絡会議は,平成28年8月30日,消費者庁に対し「地方消費者行政の充実・強化を図る継続的な財源確保の要望書」を提出し,地方自治体の財政事情等によらずに,消費者行政を安定的に推進するための恒久的財源の早期措置を強く要望した。
 そこで,当会としても,国に対し,地方自治体の財政事情等によることなく,消費者行政を安定的に推進するための恒久的財源を早期に措置するよう,要請する。

2016年(平成28年)10月20日
神奈川県弁護士会
会長 三浦 修

 
 
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