2016年06月15日更新
本年5月24日、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(以下「本法」という)が成立し、6月3日に施行された。本法については、不当な差別的言動の対象となる被害者を、もっぱら本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって「適法に居住するもの」(第2条)に限定するなど、問題点もあるが、本法成立・施行は、差別解消に向けた重要な第一歩である。
そのような中、本法施行2日後である6月5日、神奈川県川崎市中原区において、過去に本法で定める不当な差別的言動を行ってきたデモ申請者によるヘイトスピーチデモが行われた(以下「本件デモ」という。)。 本件デモに関しては、5月30日、川崎市は、本件デモ申請者による川崎市川崎区内の公園の公園内行為許可申請に対して、不許可とし、また、6月2日、横浜地方裁判所川崎支部は、市内の社会福祉法人がヘイトスピーチデモ等の禁止を求めた仮処分命令申立事件で、同法人の事務所から半径500メートル以内でのヘイトスピーチデモ等を禁止する仮処分命令を出した。これらは、各関係機関が本法の理念にしたがって英断を下したものとして高く評価したい。
ところが、川崎市における本件デモ主催者は、6月5日、会場を川崎市中原区に変更して、本件デモを実施した。結果的に本件デモは約1時間半に及ぶ多数の市民の強い抗議によって中止となったものの、そのように本件デモの実施が強行されたことにより、本法だけでは依然として不当な差別的言動を抑止することが困難であることもまた明らかとなった。 多くの外国人市民が暮らす川崎市においては、外国人市民代表者会議が設置されるなど、長年にわたり、外国人市民とともに生きる地域社会づくりをめざし地道な取り組みが積み重ねられてきているが、いまだに今回のような不当な差別的言動が行われやすいという実情がある。
川崎市に対しては、今回の公園内行為許可申請に対する不許可処分に引き続き、本法の理念の条例化等さらに踏み込んだ不当な差別的言動の解消に向けた施策を講ずるよう求めるとともに、県内の各地方自治体も、川崎市に続いて、各地域の実情に応じた不当な差別的言動の解消に向けた施策を講ずるよう求める。
以上
2016(平成28)年6月14日
神奈川県弁護士会
会長 三浦 修
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