2016年05月13日更新
福島県は、2015年6月15日、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う避難指示区域外からの避難者に対する応急仮設住宅及び民間借上住宅の無償提供を、2017年3月限りで終了すると発表し、2015年12月25日、上記無償提供の終了後の対策として家賃の一部補助、公的住宅の提供支援等の「支援策」を発表した。 しかし、2015年10月現在で、避難指示区域外からの避難者が、全国で少なくとも1万2539戸・3万2312人、神奈川県内においては369戸にのぼる。また、2016年1月25日から2月7日までの期間において福島県が実施した「住まいに関する意向調査」の中間発表(2016年3月25日)では、福島県外避難者の約78%が「平成29年4月以降の住居が定まっていない」と回答し、そのうち約70%が「福島県外での生活を続ける」と回答している。これらの調査結果からすると、福島県が発表した上記の「支援策」では対応し切れていない現状が如実に現れており、上記の「支援策」はきわめて不十分だといわざるを得ない。
当会は、去る3月10日に、シンポジウム「フクシマ原発事故から5年 避難者の日々、被害の実相」を主催した。 その中で、避難者から、「来年の3月には避難先の住宅支援が打ち切られます。どうなっちゃうのかなと思いながら毎日過ごしています。」、「来年3月で住宅支援がなくなると、たくさんの親子が路頭に迷ってしまう。それを避けたいと思って署名活動をしたり、復興庁や内閣府の防災担当の方とかとお話ししたりしてるんですが、私たちの言葉を聞いてくれない。」等と切実な訴えがあり、住宅無償提供の終了により多数の避難者の生活が立ち行かなくなる深刻な現状が改めて浮き彫りとなった。 こうした状況にもかかわらず、拙速に住宅無償提供を終了し避難生活の基盤を失わせることは、放射線による健康被害を避けるため長く厳しい避難生活に耐えている避難者の「最後の命綱」を絶つに等しく、避難生活の継続を断念させるものというほかない。 これは、被災者一人一人が、ふるさとに居住し続けるのか、やむを得ずふるさとを離れて避難するのか、その後に帰還するのか、についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切な支援が求められるとする、「子ども被災者支援法」(2012年6月に衆参両院の全会一致で可決・成立)の趣旨に真っ向から反するものである。
以上より、当会は、福島県に対し、避難指示区域外からの避難者に対する応急仮設住宅及び民間借上住宅の無償提供を2017年3月限りで終了するとの方針を撤回し、長期の住宅提供期間延長をすることを求める。 また、政府に対し、上記延長に要する費用を東京電力に求償することで国庫負担を継続し(「子ども被災者支援法」19条)、災害救助法に基づく支援を改め、避難者の意向や生活実態に応じ生活再建に資する新たな立法措置を早急に講じるよう求める。 そして、神奈川県に対しては、神奈川県内の避難者の総合的な実態調査を早急に取りまとめ、上記の福島県及び政府の措置が実現するまでの間、神奈川県独自の住宅支援措置を早急に講じるよう求める次第である。
2016年(平成28年)5月12日 神奈川県弁護士会 会長 三浦 修
このページの先頭へ