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会長声明・決議・意見書(2016年度)

南スーダンにおける国連平和維持活動(PKO)のために派遣 する自衛隊への「駆け付け警護」の新任務等の付与の撤回、 自衛隊の部隊撤収及び安全保障関連法の廃止を求める会長声明

2017年01月13日更新

 政府は、2016年11月15日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊の部隊に、2015年9月に制定された安全保障関連法に含まれる改正「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(改正PKO法)に基づく新任務である「駆け付け警護」を付与する新たな南スーダン国際平和協力業務実施計画を閣議決定し、併せて「宿営地共同防護」の任務も付与する判断を行った。その結果、南スーダンに派遣された陸上自衛隊第9師団を主力とする自衛隊の部隊は、2016年12月12日以降これらの任務を遂行することが可能となった。

 「駆け付け警護」は、PKO等の活動関係者の生命又は身体に対する不測の侵害又は危難が生じ、又は生ずるおそれがある場合に、緊急の要請に対応して行う当該活動関係者の生命及び身体の保護の活動であり、「宿営地共同防護」は、宿営地を共にする他国軍隊の部隊の要員に対し攻撃があった場合に、当該部隊の要員とともに武器を使用して対処する活動である。いずれの活動も戦闘行為に発展するおそれがあり、憲法第9条に抵触する可能性が高いものであって、到底容認することができない。

 そもそも、我が国がPKOに参加する際にはPKO参加5原則の要件が堅持されていることが必要である。
 しかし、冷戦終結後、PKOの変質に伴い、多くのPKOは住民保護等のために武力の行使を認められた紛争主体と化してしまっており、自衛隊がPKO参加5原則を堅持した状態で活動することは困難である。

 とりわけ、南スーダンにおいては、大統領派と前副大統領派との間で、激しい内戦が生じている。2016年2月17日・18日の両日には、南スーダン政府軍兵士らが北部マラカルの国連基地内の避難民保護キャンプを襲撃し、略奪・焼き討ちを行い、国境なき医師団のスタッフ2名を含む18名が死亡し90人以上が負傷する事件が起きている。また、同年7月8日からは首都ジュバ市内でも300名以上が死亡する激しい内戦が勃発し、中国のPKO隊員2名も死亡している。反政府勢力の指導者である前副大統領自身が和平合意は崩壊したと述べ、同年11月1日に公表された国連特別報告書でも停戦合意は崩壊した旨断定されていることからすると、いまやPKO参加5原則のうち少なくとも「紛争当事者間で停戦合意が成立していること」という要件を充たしていないことは明らかである。

 かかる状況下で「駆け付け警護」や「宿営地共同防護」の任務を付与することは、自衛隊が、政府軍、反政府軍を始めとする武装勢力と戦闘を行うという、憲法第9条の禁止する武力の行使へと発展する可能性がきわめて高い。そして、自衛隊員が実際に人を殺傷し、又は殺傷される危険が現実のものにもなりかねないのである。

 よって、当会は、政府に対し、ただちに、南スーダンPKOに従事する自衛隊の部隊への新任務等の付与を撤回し、PKO参加5原則に従い自衛隊の部隊の撤収を行うことを求めるとともに、改めて改正PKO法を含む安全保障関連法の廃止を求めるものである。

  2017(平成29)年1月12日
  神 奈 川 県 弁 護 士 会
  会 長 三 浦 修

 
 
 
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