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会長声明・決議・意見書(2015年度)

接見室内における写真撮影に関する東京高裁判決についての会長声明

2015年10月09日更新

東京高等裁判所は,本年7月9日,東京拘置所の接見室内で接見中の弁護人が被告人の様子を記録するために写真撮影をしたところ,拘置所職員から写真撮影を制止され,更には接見も終了させられた事件について,弁護人の接見交通権や弁護活動の自由を侵害するとして提起された国家賠償請求訴訟(いわゆる「竹内国賠」)で,その請求を全て棄却する判決を言い渡した。

東京高裁判決は,その理由として,「接見」という言葉の形式的な意味や,昭和23年の現行刑訴法制定当時,カメラやビデオ等の撮影機器は普及しておらず,弁護人が被告人を写真撮影したり,動画撮影したりすることは想定されていなかったことなどを挙げ,被疑者・被告人と弁護人の接見交通権を保障する刑訴法39条1項の「接見」に写真撮影は含まれないと解すべきであると結論付けている。なお,同判決は,接見交通権を含むより広い概念である弁護活動の自由が侵害されているとの主張については,これを斥けた理由を明確に示していない。

さらに,同判決は,「拘置所側が定めた規律に違反した」という極めて形式的な理由で,「本件写真撮影は被告人の逃亡や罪証隠滅のおそれを生じさせるものではなく,接見を途中で終了させたことは違法である」とした原審・東京地裁判決の判断をも覆している。 この東京高裁判決は,憲法34条前段が,被疑者・被告人に対し,弁護人から十分な援助を受ける機会を持つことを保障していることを極めて軽視しており,本来自由であるべき被疑者・被告人の防御活動や弁護人の弁護活動を実質的な理由なく制約することに何らの疑問も感じないその感覚には,深く失望せざるを得ない。

当会は,昨年6月27日,「面会室における写真撮影及び録音の禁止等に関する申入書」を横浜拘置支所長に提出して,弁護人が接見室内において写真撮影をすることを禁止しないことなどを求めた。同申入書でも述べたとおり,被疑者・被告人の身体に残された痕跡や接見時の被疑者・被告人の言動等を正確に記録することには秘密接見交通権の保障が及ぶというべきであり,また,弁護活動の一環として接見中に証拠を保全する行為を制約する法的根拠は全くないのであって,当会のこのような立場からも,上記東京高裁判決は到底容認することができない。

本判決により,刑事弁護を担う弁護士が弁護活動の一環として接見の様子を記録化し,あるいは被疑者・被告人の心身の状態を証拠化するために接見室内で写真撮影等を行うことを躊躇し,十分な弁護活動に支障を来すことがあってはならない。

当会は,今回の東京高裁判決に深い憂慮の意を示すとともに,憲法で保障された弁護活動の一環である弁護人による接見室内の写真撮影等の行為について,拘置所等の刑事施設が禁止したり,これを理由に接見を妨害したりすることがないよう,改めて強く求めるものである。

 

2015(平成27)年10月8日

横浜弁護士会     

 会長 竹森 裕子 

 

 
 
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