2015年08月14日更新
本年6月30日、政府の法曹養成制度改革推進会議は、「法曹人口の在り方について(検討結果取りまとめ)」を取りまとめた上、「法曹養成制度改革の更なる推進について」との決定を行い、これら(以下まとめて「推進会議決定等」という。)が発表された。この推進会議決定等は、平成25年9月に同推進会議が設置されて以来、同時期に設置された法曹養成制度改革顧問会議での意見等を踏まえ、約2年間にわたる検討の成果を今般取りまとめたものである。
しかしながら、この約2年間の検討期間中においても、法曹養成制度はその根底を揺るがす危機が進行しつつあるにもかかわらず、そのような中で検討されたはずのこの推進会議決定等は強い危機感が感じられないものとなっている。
法曹人口を急速に増やすべく司法試験合格者を激増させた結果、法曹人口とりわけ弁護士人口はここ10年間で約1.7倍に増加したものの、法曹に対する需要はその増加ペースに見合った増加がみられなかった。そのため、司法修習を終了しても法曹としての職務に就けない者が発生したり、新規法曹で不安定な就業状況に置かれている者が徐々に増えてきている。更に、法科大学院を経て司法修習を終了するまでの経済的負担が過重になっている。このようなこと等が原因で法曹志望者が激減し、平成27年度の法科大学院実入学者が2200人程度に減少した。そして、法科大学院全国統一適性試験受験者数の大幅な減少傾向にかんがみれば、法科大学院実入学者数は今後も減り続けることが予想される事態となっている。
法曹志望者の著しい減少が続けば、本来であれば法曹の世界に入ったであろう多くの有為な人材を失うことにつながりかねない。現在、法曹養成制度に求められる改革は、法曹志望者を改めて増やすための政策であり、それも緊急に実施されなければならない。この点、推進会議決定等は、危機感を意識してはいるものの十分とは言えず、緊急的施策に乏しく、全体として時間をかけた検討等が中心の施策である感が否めないものとなっている。このまま従来と同様のペースで検討をし、改革の実行に時間をかけているのでは、その間に現在の法曹養成制度は破綻することになりかねない。
このような状況を踏まえて、当会としては危機を脱していくため、政府に対し、次のような政策を直ちに実施し、それに伴う必要な改革を加速するよう強く求める。
また、当会としても、法曹の活動領域を拡大させるとともに、法曹の仕事の魅力の発信に努めるなど、法曹志望者の増加に向けた取り組みを促進する所存である。
以上
2015(平成27)年8月13日
横浜弁護士会
会長 竹森 裕子
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