2015年05月26日更新
憲法9条1項は戦争の放棄を、2項は戦力の不保持と交戦権の否認を定めることで、我が国は徹底した恒久平和主義を基本原理としている。 そのため、憲法9条の下では、武力の行使は原則として禁じられ、集団的自衛権の行使や、海外での武力行使は認められない。
このことは、政府も長年の政府の憲法解釈において認めてきたところである。 ところが、昨年7月1日、政府は、これまでの政府の憲法解釈を覆し、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」場合には集団的自衛権の行使等を容認するという内容の閣議決定を行った。 政府は、この閣議決定に基づき、関係する安全保障法案を国会に提出し、現在国会ではこれらの法案が審議されようとしている。
集団的自衛権の行使を認めることは、憲法9条に違反し、また、立憲主義にも違反するということは、これまで、当会でも、総会決議、会長声明、会長談話などにおいて再三訴えてきたところであり、現在これを容認する法改正がなされようとしているのは、法律家として断じて受け容れられないところである。 さらに、我が国では、これまで、戦争中の他国軍隊の後方支援は、特別措置法を設け、あるいは、日本の周辺地域において、それぞれ非戦闘地域・後方地域に限ってのみ支援を行えるとしてきており、また支援の内容も弾薬の提供などは許されないとして、外国軍の武力行使との「一体化」を回避し、憲法9条の禁じる武力の行使に当たらないように努めてきた。
ところが、今回、政府は、これについて、恒久法を制定し、また、周辺事態法を改正し、いつでも、そして世界中どこであっても、「現に戦闘行為を行っている現場」以外であれば、戦争中の外国軍に対し、弾薬の提供や燃料の補給などまで行えるようにしようとしている。 弾薬の提供や燃料の補給は兵站と呼ばれ、武力行使に不可欠であり、これは単なる支援を越えて、外国軍の武力行使に一体として参加するに等しいものである。相手国軍隊からみれば、自衛隊の活動は他国軍の武力行使と一体だとみなされ、攻撃の対象となり、戦争へと発展していく可能性が大である。
また、今回の法改正では、自衛隊が、国連平和維持活動等において、駆け付け警護を行い、また、任務遂行のための武器使用もできるようにしようとしている。任務遂行のために武器使用を認めれば、武装勢力との間で武力衝突が生じる危険性は大きく、自衛隊員が人を殺傷しまたは殺傷される可能性も高まり、これもまた、憲法9条の禁じる武力の行使につながりかねないものである。 これらの点においても、今回の法改正は憲法違反であると言わざるをえない。
憲法は国家権力を縛るものであり、憲法9条もまた国家権力を縛る規範である。 今回の法改正は、憲法9条に違反し、憲法9条を空文化するものであって、憲法に縛られるはずの国会がこのような法改正を行うことは、立憲主義に違反し、許されないものである。 よって、当会は、現在国会に提出されている上記安全保障法案の制定に強く反対し、その憲法上の問題点を広く市民に訴えるとともに、法案の制定の阻止に向けて最善の努力を尽くす決意を表明するものである。
以上のとおり決議する。
2015(平成27)年5月25日
平成27年度横浜弁護士会通常総会
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