2015年05月15日更新
日米安全保障協議委員会は、4月27日、新たな日米防衛協力のための指針(以下「新ガイドライン」という。)に合意した。
この新ガイドラインは、昨年7月1日の閣議決定を受けたものであり、米国など密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生し、それにより、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があると判断される場合に、集団的自衛権等を行使し、自衛隊が海上交通の安全を確保するために機雷を掃海することや、艦船防護のための護衛や弾道ミサイルの迎撃を行うことなどを具体的に定めている。これらの具体的事例は、これまで集団的自衛権の行使の事例として、憲法上許されないとされてきたものである。
また、新ガイドラインは、これまでの「周辺事態」の概念を取り払い、自衛隊が「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」への対処として、また、アジア太平洋地域やこれを超えた「グローバルな平和と安全のための協力」への対応としても、地理的な制約なしに、世界中どこであっても戦闘中の米軍などを「後方支援」することなどを定めている。
そもそも、国の安全保障や防衛政策は、憲法の前文及び第9条の掲げる恒久平和主義に違反してはならないことはいうまでもないが、集団的自衛権の行使はもちろん、世界中に自衛隊を派遣し、戦闘中の米軍等を「後方支援」したりすることは、憲法の禁じる海外での武力行使に該当し、あるいは、海外での武力行使に道を開くものであって、憲法上許されないものである。また、憲法改正手続を経ることもなしに政府間でこのような合意をすることは、政府の行為は憲法の縛りの下にあるという立憲主義にも違反する。
しかも、新ガイドラインは、国民にもほとんどその内容が知らされず、国会においても、まったく議論する機会もないまま政府間で合意されており、さらに、内容的にもこれから国会で審議される予定の安全保障関係立法を先取りしている。今後、新ガイドラインが既成事実化され、日米同盟の重要性や国際協調主義の名の下に関連法案の立法を迫られることが懸念される。これは、国のありかたは主権者である私たちが決める権利を有するという国民主権・民主主義の理念すらもないがしろにするものである。
以上のとおり、新ガイドラインは、恒久平和主義及び立憲主義に違反し、さらには、国民主権・民主主義の理念からも容認できないものであるので、当会は、その改定合意に強く抗議するとともに、今後も集団的自衛権等を容認する安全保障関係立法に反対していくことを表明するものである。
2015(平成27)年5月14日
横浜弁護士会
会長 竹森 裕子
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