2013年12月12日更新
12月6日,特定秘密の保護に関する法律修正案の採決が参議院本会議で強行され,成立した(以下,この法律を「本法」という)。
当会は,11月14日付け「特定秘密保護法案に反対する会長声明」において,同法案の問題点として,特定秘密の範囲が広範で不明確であること,永久に秘密として国民の目に触れさせない可能性があること,刑罰を定めているにもかかわらず構成要件が不明確であり罪刑法定主義の観点から問題があることなど指摘して,同法案に強く反対することを表明し,4回の街頭宣伝や国会議員に対する法案反対の要請書送付など,様々な取り組みを行ってきた。にもかかわらず,短期間の拙速な審議により十分な審議が行われないまま強行採決されたことに,当会は強く抗議する。
本法については,その概要が9月3日に公表され,2週間という異例の短期間のパブリックコメント募集が行われた。約9万件の意見が寄せられ,その約8割が反対意見であったにもかかわらず,その反対意見は取り入れられることもなく,10月25日には法案が国会に提出された。11月8日から衆議院特別委員会での審議が始まった。
特別委員会での審議においては,法案担当大臣の答弁が二転三転するなどして審議は混乱した。また,与党とみんなの党及び日本維新の会との修正協議により,秘密指定の期間が実質上60年にまで延び,また,あたかも内閣総理大臣が第三者機関であるかのような修正がなされた。しかしこれらの修正によって,法案の危険性や問題性が多少とも改善されたというものではない。
11月25日,福島県で行われた公聴会において与党推薦の公述人を含めて7名全員が法案に反対又は慎重な審議を求める意見を述べたにもかかわらず,公述人の意見は考慮されることなく,その翌日である11月26日には衆議院で採決が強行された。衆議院での審議時間はわずか46時間であり,参議院での審議は22時間であった。国民の知る権利を侵害する危険性の高い重要な法案が,わずか衆参両議院で68時間の審議時間で可決されたことは極めて異常なことであり,拙速な法案審議であったと指摘しなければならない。
また,安倍首相は,12月4日の参議院特別委員会答弁及び党首討論において,唐突に「情報保全諮問会議」「保全監視委員会」「独立公文書監理官」を設置すると表明したが,これらの機関は,本法には明記されていない。また,いずれも内容があいまいであるほか,「情報保全諮問会議」は秘密の中身のチェック機能はなく,他の2つは内閣の中に設けられる機関であると説明されており,公正性を担保する第三者機関とは到底評価できるものではない。
国会での審議を受けて,法案の廃案を求める世論が大きく広がり,報道,研究者,映画界,ノーベル賞受賞者など多方面から反対の意見表明がなされた。国会周辺では連日のように本法反対の国民の声があった。このように国民の中に反対意見が大きく広がっていたにもかかわらず,衆参両議院において繰り返し強行採決されたことは,代表民主制の根本的危機として,誠に憂慮すべき事態だと言わなければならない。
当会は,本法が成立した後も本法の危険な問題点を指摘し続けるとともに,その運用を厳しく監視して,本法の見直しを求め,本来あるべき情報の公開と管理の在り方を追及していく決意である。
2013(平成25)年12月11日 横浜弁護士会 会長 仁平 信哉
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