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会長声明・決議・意見書(2013年度)

特定秘密保護法案に反対する会長声明

2013年11月14日更新

政府は、本年10月25日、特定秘密の保護に関する法律案(以下「本法案」と言う)を国会に提出した。政府は、本法案について、11月22日までには衆議院を通過させ、12月6日までの今臨時国会の会期中に参議院でも議決して短期間のうちに成立させようとしていると言われている。


当会では、昨年4月に当時の民主党政権が国会提出を検討した秘密保全法案について、国民主権を支える国民の知る権利を甚だしく侵害し、我が国の民主主義の過程を深く傷つける恐れがあるとして反対する意見を表明した。そして、今、同じ流れをくむ本法案が国会提出されたが、憲法上の疑義に変わりはなく、具体的な個々の条項をみても以下に述べるとおり明らかな問題があり、当会は改めて本法案に強く反対する。


第1に、「特定秘密」の範囲が「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」「テロリズムの防止」に関する別表に掲げる事項と極めて抽象的であり広範かつ不明確である。本来秘密として保護すべき必要性の無い情報までもが「特定秘密」として対象とされる危険がある。特に「特定有害活動」「テロリズム」の定義は曖昧であり、国民からは何が秘密であるかも秘密とされる。


第2に、秘密指定する行政機関が非常に広範囲であり、宮内庁、会計検査院まで含んでいる。これに伴い秘密の対象も広範なものとなる。このようにして指定された「特定秘密」をチェックする機関が存在しない。本法案は、特定秘密の指定及びその解除並びに適正評価の実施に関し、統一的な運用を図るため基準を定めることとし、有識者の意見を聴くこととしたが、それは単なる基準作りであって、実際の指定をチェックする体制は存在しない。


第3に、秘密指定の期間について5年を超えない範囲としているが、更新が出来ることになっており、その更新に制限が設けられていないために永久に秘密指定できることになっている。30年を超えるときは内閣の承認が必要ではあるが、承認があれば永久に秘密として国民の目に触れることはないのである。


第4に、「特定秘密」の範囲が広範かつ不明確でありながら、その「特定秘密」について故意の漏えい行為のみならず、過失による漏えい、漏えいの未遂までも処罰の対象としている。更に、漏えい行為の遂行を教唆し、共謀し、又は扇動した行為も処罰することとしている。また、「特定秘密」の取得行為について「その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得する行為」も処罰することとしている。これでは何を処罰するのかが不明確であり、何が犯罪となるかを明確に法律で定めなければならないという罪刑法定主義の観点からも問題があるといわなければならない。


第5に、国権の最高機関である国会に対しても秘密を提供できるかは行政機関の判断に委ねられており、厳格な要件の下に秘密会において提供されるが、秘密会に出席した国会議員は持ち帰って秘書や同僚議員と相談し検討することもできない。国会の国政調査権に対する重大な制限であり、国会の役割に対する著しい軽視である。


第6に、重い刑罰を定めているが、その刑罰を決める裁判手続きには「特定秘密」は法廷に提出することは予定されていない。証拠開示について裁定の必要があったときに裁判官にのみ厳格な要件の下に提供されるが、「特定秘密」は証拠として開示されることはなく、いわゆる「外形立証」のみで判断されることになる。どの程度の外形立証がされた場合、「特定秘密」に該当することになるのか、曖昧であると言わざるを得ない。


第7に、出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法と認められない限り、これを正当な業務による行為とするものとされたが、「正当な業務行為」であると判断するのは最終的には裁判所であるので、取材者が逮捕勾留され、長い裁判を経て「正当な業務行為」であるとして無罪判決を受けても、その失った時間は取り戻せないのであり、また、他の取材者に対する萎縮効果は非常に大きいと言わなければならない。この規定は、何らの歯止めにもならないと言うべきである。


以上の理由から、当会は、本法案の成立に強く反対するものであり、今後、本法案に反対する様々な取り組みを行う決意である。


2013(平成25)年11月13日

横浜弁護士会

会長  仁平 信哉

 
 
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