国際人権(自由権)規約人権委員会の最終見解について |
会員 梅澤 幸二郎 (日弁連国際人権問題委員会委員) |
一九九八年一〇月二八日及び二九日(現地時間)にジュネーブにおいて国際人権(自由権)規約人権委員会の第四回日本政府報告書の審査が行われ、一一月五日に最終見解が採択されました。日本の人権について厳しい指摘がなされました。審査の中で、バーゲンタール委員(アメリカ)は日本は民主主義的な原則を持たない国に見え、とりわけ刑事裁判制度についてそのような印象が強いと発言しています。以下に、見解の概要を述べます。 |
見解は人権擁護施策推進法等の制定、男女共同参画審議会の設置等三項に渡って積極的な側面を掲げましたが、二九項にわたる勧告・懸念を表明しています。そのうちの、総論的な部分を紹介します。 |
まず、委員会は、第三回報告書の審査後に出された勧告の多くの部分が実行されていないことを懸念し、死刑の存続や婚外子差別を念頭に置いて人権の擁護や基準を世論調査で決定すべきものではないことを強調しました。 |
また、「公共の福祉」という曖昧な概念は自由権規約のもとで許される制限ではないこと、「合理的な差別」は客観的な基準がなく規約二六条(法の前の平等)に違反すると懸念が表明されました。 |
さらに、人権侵害を調査し、申立てに対して救済を与えることができる独立の機関の設置が勧告されました。 |
人権擁護委員会は法務省の監督を受けており独立の機関ではなく、また有効な救済方法を持たないと判断されました。特に、警察や入管職員による虐待の申立てを調査や救済のために持ち込むことのできる独立かつ権限を持った機関の設置を勧告しました。 |
刑事手続については、代用監獄、被疑者国選弁護制度・保釈の不存在、勾留中の被疑者に対する無制限な取調べ、弁護人が取調べに立ち会えないこと、刑訴法三九条三項の存在などを指摘され、未決拘禁制度を直ちに改革するよう強く勧告されました。 |
最も重大な指摘は規約で保障された人権について、裁判官、検察官及び行政官に対する研修を行い、規約人権委員会の一般的意見及び第一選択議定書による個人通報に対する「見解」を裁判官に配布するよう求められたことです。 |
この点について、ララー委員(モーリシャス)は、日本の裁判官の中には考えを変えていただかなくてはならぬ人もいるようで、外部に目を向けることを躊躇しているように見えるから国際人権法に関する裁判官のセミナーを組織すべきだと述べています。 |
最後に法律と規約とが一致すること及び第一選択議定書を批准するよう勧告されました。 |
今後の課題として、二〇〇二年一〇月提出の第五回政府報告書の審査の時に、勧告が実施されていないと委員会から再び言われないように我々弁護士が日本の人権状況をどう変えていくかが責務となると思います。 |
なお、最終見解の詳細は自由と正義二月号に掲載されています。 |
役員室の扉 副会長 福田 護 |
役員室の扉は、すべからくガラス張りにすべきだと思う。 |
今年度副会長になるまで、私は役員室にほとんど足を踏み入れたことがなかった。以前初めてそこを訪ねたときは、全面板張りの扉に閉ざされた中がどうなっているのか、訪ねる相手がいるのかどうかもわからず、恐る恐るノックしたものだ。ノックしても返事がないから、意を決してノブを回した。 |
窓もない扉は、中にどんな魑魅魍魎が棲んでいるのかわからない。ちょうど、バーやクラブのドアを開けたら、中からは厚化粧したおばあ様がヌッと顔を出すかもしれないし、はいったらどんなに金をふんだくられるかわからない、そういった気持ちに襲われる。だからなじみの客しかはいれない。 |
同じように、役員室への来訪者は、どうしても役員経験者が多くなるようだ。 |
なじみの客は、まずは前期役員諸氏であろう。夏のころまでは、まだまだ主のように役員室を闊歩している。し残した引き継ぎもあるし、こちらも何かと頼りたい。顔を見ると、ホッとしたり、ギョッとしたりもする。
威儀を正してお見えになるのは、M先生である。今期も五、六回お見えになった。まずは新役員就任に対するご挨拶、定期総会前、会員集会前など。そのたびに、資料や原稿をお持ちになって、丁寧なアドバイスをいただいた。横浜弁護士会に対する愛情の深さは、私などのよく窺いしれないほどのものである。先ごろの賀詞交換会の際米寿の表彰を受けられ、そのお礼にも足を運ばれた。これからもまだまだ、会のためにお力添えをいただきたいと思う。 |
遠慮なく、元気に出入りしている代表は、野球部のS監督と、I民暴委員長であろう。S監督は、風のようにサッと入ってきてはサッと立ち去る。I委員長は、会長の入れるウコン茶にもひるむことなく、じっくりと話し込む。 |
会長のところへは、不思議と若い女性も訪れる。T記者やY弁護士等々だが、どうもウコン茶を口実に会長が呼び寄せているようにもみえる。ただし、それ以上の進展はない。 |
役員室が、その機能を発揮したと思われるのは、中国人密航者の逮捕のときだった。折から、被疑者弁護の委員会派遣制度の創設が検討されていたところに発生したこの事件について、先行的に派遣を実施すべきかどうか、日当の支給や扶助の適用をどうするかなど、刑弁センターと少年委員会から六,七人が夜の役員室に参集し、われわれ役員を含めて、喧々囂々の議論となった。最後はかっこよく、会長が「オレの責任で実行する」と宣言して終わった。役員室は、本来こう使われてしかるべきだと実感した。 |
オーク材か何かの重厚な扉ならまだしも、ベニヤ板にペンキを塗ったような目隠しドアはやめて、役員室は透明な大きな窓のある品格あふれるドアにしてほしい、と願う。来年度は、そのガラス越しにO会長が居眠りしているのを見定めて、今度は、私が客人として、役員室に入っていきたいと思う。 |
委員会通則と公益活動に関する会規について議論 |
第一〇回常議員会は、横浜弁護士会委員会通則と公益活動に関する会規、通称使用についての人権救済申立事件と騒音に係る環境基準の改定に対する会長声明等につき審議した。 |
委員会通則につき活発な議論 委員会通則については、特に第一〇条第四項の「同一の委員会の委員への再任は、連続して三期までを標準とし、委員の長期固定的な配置が生じないようにするものとする」との条項に議論が集中した。 |
理事者から「委員の長期固定的な配置が生じないようにすることにより、会員が委員会活動に参入しやすい条件を整備し、委員の適切な新陳代謝による委員会の活性化を図っていく必要がある」との提案理由の説明がなされた。これに対し、「好きなものができないのはおかしい、好きなものをやらせることが委員会の活性化につながる」との意見が出されるなど活発な審議となった。 |
継続案件として、次回二月の常議員会で、各委員会の意見等もふまえて審議されることになったが、十分な討論と納得いくまでの議論を期待したい。 |
通称使用についての人権救済申立事件 次に、通称使用についての人権救済申立事件についても議論が伯仲した。「旧姓を職場で通称として使用していたところ、これを制限されたので人権侵害に当たる」との申し立てを受けて、当会が神奈川県に対し「通称使用のガイドラインをもうけることを要望する」との要望内容である。 |
旧姓を含む通称使用についての各人の認識には、それぞれ温度差があり、次のような消極意見が出された。「やたら通称を使われると混乱するのではないか」「申立人は旧姓使用を制限されたことをもって人権救済の申し立てをしてきたのだから、旧姓に限った勧告をすれば足りる」など通称使用についての勧告は避けるべきであるとの意見である。 |
しかし、人権擁護委員会の説明委員が、通称使用についてはその実態があれば使用を認めるのが時代の趨勢であるとの懇切丁寧な説明により、採択された。通称使用などの最先端の問題につき、常議員の理解を得るのはなかなか大変なことと感じた。 |
騒音に係る環境基準の改定に対する会長声明 公害委員会からだされた「騒音に係る環境基準の改定に対する声明(会長声明)」については、公害委員会の説明員の説明に常議員皆が納得し、採択された。 |
会長声明の内容は、環境庁が平成一〇年九月三〇日告示した「環境に係る環境基準について」に対して、同告示の内容は、 |
1.道路騒音に関する、国道四三号線・阪神高速道路について出された最高裁判決の示した基準(屋外の等価騒音レベル六五デシベル以上の騒音は受忍限度を超えるとの判断)を緩和し、「幹線交通を担う道路に近接する空間の特例」を設け、その基準値を昼間七〇デシベル、夜間六五デシベルとするもので、確定した司法判断をないがしろにする問題があること |
2.今までになかった「屋内の環境基準」を設け、窓などを閉めた状態で屋内の騒音レベルが昼間四五デシベル以下であれば環境基準が達成されたとする点で「環境基準」の本来的性格に反する問題があること
から反対であり、広く国民の意見を聴取しあるべき環境基準を定めるように求めている。 |
日弁連の意見書は、当会会員がまとめたものであり、当会としても積極的に応援していきたい。 (副議長 山本 安志) |