横浜弁護士会新聞

2011年8月号  −2− 目次

相談件数倍増! 女性の権利110番
 6月23日、当会と日弁連との共催(神奈川県後援)で、無料電話相談「女性の権利110番」が実施された。「女性の権利110番」は、日弁連女性の権利に関する委員会(現両性の平等に関する委員会)設置15周年を機に、平成3年から毎年日弁連と各地の弁護士会との共催で実施されている。当会では、午前10時から午後3時まで、臨時電話6回線を設置し、会員21名が対応した。
 開始直後から電話が鳴り始め、昨年の2倍近い68件もの相談が寄せられた。正午前後に一時相談件数が減少したものの、NHKとTVKで本相談が紹介された後、再び増加した。実際、NHKの報道を見て本相談を知ったという相談者は19人もおり、本相談への需要の高さとテレビを通じての周知の必要性を感じた。
 相談内容のうち最も多かったのが離婚に関する相談であり、その中では離婚の可否(21件)、財産分与(17件)、慰謝料(12件)が上位を占めた。また、DVに関する相談も13件あった。世代別では40代(18件)、60代(16件)、30代(11件)が多かった。
 職業別では、無職(専業主婦を含む)が46人と圧倒的に多く、「あまりお金がないため、直接相談に行くのは躊躇していた。無料で相談できて良かった。」という声も聞かれたため、女性の権利に特化した無料電話相談の必要性を実感した。
(会員 野口 杏子)

震災・節電の影響による雇用と生活問題ホットライン実施される
 6月24日、日弁連及び各単位会が主催し、厚生労働省及び総務省の後援により、「震災・節電の影響による雇用と生活問題ホットライン」が全国一斉に実施され、当会においても22名の会員が参加し、午前10時から午後4時まで無料で電話相談を受けた。
 直接の被災者のみを対象とした訳ではなかったが、「震災・節電の影響による」というサブタイトルを付したため、被災者への遠慮があったのか、相談件数は少なめの11件にとどまった。
 しかし、全国共通のフリーダイヤルに架電すると最寄りのホットライン実施単位会に繋がるというシステムでの実施であったため、回線が埋まっていた近県からの相談もあった。
 また、震災後宿泊客が激減した温泉宿から突然解雇された挙げ句、借り上げ社宅からの退去まで迫られ生活に窮しているといった深刻な相談も寄せられる等、実施した意義が実感できる取組であった。
(貧困問題対策本部事務局長 佐藤 正知)

高橋会員 田上会員 お疲れ様でした
日弁連副会長・研修所教官 退任慰労パーティー
 6月6日、横浜ロイヤルパークホテルにおいて、高橋理一郎会員の日弁連副会長退任、田上尚志会員の司法研修所教官退任の慰労会が開催された。
 高橋会員は、弁護士の業務範囲の拡大、アクセス問題、中小企業対策などの活動をまとめた冊子を参加者に配布した上で1年間を振り返り、多くのことを学んだが震災があったこともあり、まだ終わった気がしないと挨拶された。
 田上会員は、「金を残すは下、仕事を残すは中、人を残すは上」という後藤新平の言葉をあげ、のめり込んで楽しんだ3年間だったので、お金も仕事もなくなったが苦労はなかった、この楽しさは経験しないとわからないと挨拶された。
 木村良二会員からは、日弁連会長が再選挙となり会長未定の中で前年度からの引き継ぎを行うというスタートを切り、震災がゴール間際に発生するという異例のご苦労の中で、事務局にも気配りを忘れない高橋会員は非常に評価が高かったとの話があった。
 大木孝会員からは、「教官時代の中ほどは、胸に刺さるトゲばかり」との替え唄があるように、田上会員にも大変なご苦労があったはずだとねぎらいの言葉があった。
 田上会員から研修所時代に指導を受けた若手会員からは、教官最終年なので気合いを入れると聞いたので「起案頑張ります」と答えたところ、「違う。気合いを入れるのは飲み会だ。」と言われたなど当時のエピソードも紹介され、会は大いに盛り上がった。
 会場は高橋会員、田上会員をねぎらおうと集まった会員で満席。皆から慕われる2人の人柄を垣間見ることができた。

震災に遭った子どもたちに心のケアを 子どもの日 記念行事
 7月2日、毎年恒例の「子どもの日記念行事」が開催された。今年は、「震災を受けた子どもの心のケア〜いま大人は子どもたちのために何ができるか〜」と題して、臨床心理士の堀口節子氏に講演いただいた。
 堀口氏は、阪神大震災、JR福知山線脱線事故などで被災者の心のケアに携わった経験をもとに、被災者、特に子どもの心理状態、災害後のストレス反応、対応のポイントなどについてわかりやすい解説をされた。
 被災者の心理状態は、いつまでも茫然自失状態にあるのではなく、ハネムーン期、幻滅期を経て3か月から1年ほどで再建期に入っていくとのことである。
 もっとも、生活再建がなければ心の回復はないとのことなので、二重ローンや雇用の問題等々、まさにこれから私たち弁護士の出番なのではないかと感じた。
 また、災害後のストレス反応には様々なものがあり、特に子どもは、自分の経験や感情をうまく言葉で伝えることができないため、幼児返り、食欲低下、パニック行動、過呼吸、暴力的遊びといった行動が現れることがあり、周りの大人が行動や体調の変化などを注意して見てやることが必要である。堀口氏が経験されたケースでは、小学校低学年の子が暴力的になり、あちこちぶつかる、乱暴する、破壊するといった行動が見られたが、その後、プレイセラピーなどを通じて次第に落ち着きを取り戻し、学校に戻ることができたとのことであった。
 さらに、被災者に対応する際のポイントとして、まずは被災者の現状を踏まえて話を聞くことが大切であり、子どもにはスキンシップを多くとり、「大丈夫」と安心する言葉を耳から伝えてやったり、一緒に遊んだりするとよいとのことであった。たとえば、「津波ごっこ」などは不謹慎だと叱るのではなく、子どもがストレスを発散するための行動なので見守ること、「身近な人の死」は儀式への参加など逃げずに対応することなど、難しい場面への対応も勉強になった。
 講演後、司会の藤田香織会員から、今回の震災でも多くの子が被災ストレスを抱えているようだという新聞報道が紹介された。堀口氏の話によれば、目標がある人の方が早く回復するということであり、一人でも多くの子に目標をもって回復への道を歩んで行ってほしいと思った。
 最後の質疑応答では、当会会員だけでなくボランティアの方や小学校の先生、福島県いわき市の弁護士など、一般参加の方々からも活発な質問が飛び交い、最後まで熱気は冷めないまま、閉会となった。
(会員 川本 美保)

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