横浜弁護士会新聞

2011年8月号  −1− 目次 

正しい認識を持ってセクハラの防止を
会員 太田 啓子
 当会のセクシュアルハラスメントの防止に関する規則(以下「規則」)が7月1日に施行された。これにより、セクハラを受けたと感じた者が、相談員に相談できる制度が開始した。
 相談員は、相談者に必要な助言をし、事案によっては相手方への調査を行い、相手方に指導、助言することもできる。相談できるのは当会会員、当会職員、法律事務所職員、修習生、ロースクール生であり、事件の依頼者は除かれる。対象となる行為は当会会員(法人含む)の行為のみである。相談員名簿や申込方法は当会ホームページなどで周知される。
 セクハラの背景には、暗黙の強制力を伴う上下関係がある。例えば二人きりでの酒の席への誘いを受けたとき、本当は断りたくても、雇用主である等「上」の立場である相手に遠慮して不本意ながらも断れなかっただけなのに、誘った方はそれを「自発的に同意した」「笑顔で誘いを受けてくれた」等と思いこみ、更に親密な関係に持ち込もうとする…というのは典型的なパターンである。
 このように、相手との距離についての感覚のギャップが悲劇を生むということを、「上」の立場の者は重々認識し、自分の立場に自ずと伴ってしまう強制力の存在を自覚し、相手の気持ちを丁寧に思いやろうとすることが、ある日突然セクハラの加害者として訴えられることを予防するために最も必要なことだろう。
 「自分のところにある日突然呼出状が来たりしないか」と内心ビクビクするような方は案外大丈夫かもしれない。「自分や自分の事務所には全く関係ないことだ、自分がセクハラなどするはずがない」と確信している方のほうがむしろ、自分の言動に伴ってしまう強制力に無自覚で、意図せずに「下」の立場の相手に不快な思いを与えたことがある……のかもしれない。
 というわけで急に心配になってきた方は、規則と同時に施行された「セクシュアルハラスメントを防止するために会員等が認識すべき事項に関する指針」も合わせて参照されたい。
 なお、規則では、「会長は、会員に対し、会員によるセクシュアルハラスメントを未然に防止するため、個別の事務所ごとに、会員が認識すべき事項に関する指針を作成すること及び事務所内での当該指針の周知徹底を奨励する」ともされているので、各事務所でも「指針」の作成及び所内での周知徹底をぜひ励行されたい。
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故前野義広会員追悼集会 二度と悲劇を繰り返さないように
 6月30日、「故前野義広会員追悼集会」が、当会会館にて行われた。
 本集会は、昨年6月2日に前野会員が受任していた離婚事件の相手方に事務所内にて刺殺されるという事件から1年を経て、改めて前野会員に追悼の意を表すと共に、事件を風化させず、二度とこのような事件を起こしてはならないという強い決意から開催されたものである。
 本集会には、当会会員100名が出席した他、マスコミ各社が取材に訪れるなど、事件の原因・背景についての高い関心がうかがわれた。
 冒頭、1分間の黙祷が行われ、小島周一会長の開会挨拶の後、前野会員と同期の田井勝会員より、追悼の言葉が送られた。田井会員は修習時から前野会員と交流があり、前野会員の控え目で真面目な性格や修習当時の思い出などが語られた。
 続いて、小島会長より、前野会員が受任していた事件についての報告があり、事件直後から前野会員の勤務先事務所の影山秀人会員と小島会長を中心として、当会の有志により引き継ぎが行われたことが報告された。なお、これらの事件については、現在8割方終了しているとのことである。
 さらに、当会弁護士業務妨害対策委員会の竹森裕子委員長と伴広樹副委員長より、事件の概要についての報告が行われた。伴副委員長からは、これまでにわかった事件当時の状況について、事件の現場となった事務所の見取図を示しながらの詳細な説明がなされた。
 また、刑事裁判は既に一審が終了しており(求刑通りの無期懲役、現在被告人が控訴中)、裁判を傍聴した竹森委員長から、被告人の主張や裁判上の争点、判決理由についての説明がなされた。判決においては、被告人の事務所訪問の目的は、別居中の妻の住所を聞き出そうとしたことにあり、意に反して激しく抵抗されたことなどに逆上し、とっさに殺意を抱いたとの認定がなされたが、前野会員が被告人の脅しに屈することなく弁護士としての職務を全うし非は全くないこと、裁判外で暴力によって自分の意見を押し通そうとする被告人の態度が法治国家の根幹を揺るがす極めて悪質な事件であることなどが量刑理由として挙げられたことが報告された。
 休憩を挟み、会の後半には、藤川元日弁連弁護士業務妨害対策委員会委員長より弁護士業務妨害に対する東京三会の取組についての報告があり、また、秋田弁護士会木元愼一弁護士より、昨年11月4日に秋田で起きた津谷裕貴弁護士殺害事件の報告が行われた。いずれの報告も、悪質化する弁護士業務妨害に対して今後どのようにして対応していくべきかについて示唆に富むものであった。
 最後に、竹森委員長より閉会の挨拶があり、我々弁護士は業務妨害の渦中にあり、身を守るのは会員一人一人であること、何かあれば当委員会への支援要請を躊躇せずにして欲しいとの言葉で締めくくられた。
(会員 片平 幸太郎)

山ゆり
 学生時代から通算して10度ほどの海外渡航にして初めて経験したロストバゲージ。6月下旬に妻と欧州旅行に赴いた折の出来事である
旅の間、丸々8日間、私のスーツケースが手元に届かず、当初4日間は文字通り着の身着のままの状態であった。とはいえ、妻の荷物は無事であったし、最終的に紛失にまでは至らなかったので最悪の事態は免れたといえるのだろう
知人の話を聞いても、インターネットなどを見ても、似たような話は事欠かない。備えの甘さを自省しつつも、「ロストバゲージに遭遇するかしないかは単に確率の問題」といった言説に触れると、天災に遭ったような気分にすらなる。しかし、人が行う作業によって生ずる災難である以上、改善の余地はあるはずである。そう信じて、航空会社に対してクレームレターを提出し、賠償請求も行ったひまわり
帰国後、原発問題への対応を巡って混迷の度を深める政治状況を目の当たりにした。この人災に対しても、あきらめずに立ち向かってゆく必要性を感じる。旅先でも福島の状況について尋ねられることが多かった。世界も注視している日本の原発問題、次世代に胸を張ってバトンが渡せる日が来ることを切に願う。
(吉田 正穂)

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