横浜弁護士会新聞

2011年3月号  −2− 目次

弁護士フェスタ in KANAGAWA 期待される家庭裁判所 〜もっと身近で利用しやすく頼もしく〜
 1月30日、横浜市開港記念会館と当会会館において恒例の弁護士フェスタが開催され、前回を上回る約550名の参加者でにぎわった。
 今回のフェスタでは、家庭内の紛争などに巻き込まれた市民に利用しやすい機関である家庭裁判所に焦点を当てた。
劇「あなたの家庭は平和ですか? 〜行ってみよう家庭裁判所〜」
 メイン会場の開港記念会館講堂では、テーマに沿う形で、家庭裁判所における紛争解決の流れを紹介した劇が2幕構成で上演された。
 第1幕は、遺産全ての取得を主張する長男に不満を持つ他の相続人が遺産分割調停を申立てたという事案で、第2幕は、浪費癖の夫に耐えかねた妻が離婚調停を申立てたという事案であった。いずれの事案も、最初は感情的になっていた当事者が調停期日を経る中で、調停委員から説得を受け、次第に紛争が解決していく様子がリアルに演じられた。
 今回もまた当事者、調停委員、審判官の役に扮した会員や司法修習生の好演ぶりが目立ったが、とりわけ代襲相続人が待合室にいる母(非相続人)に尻を叩かれて権利を主張する場面や慌ただしく部屋を入退出する審判官の様子は会場の笑いを誘った。劇の合間には法律用語等の解説が入り、一般の方にも内容が十分に理解しやすいものとなった。今回の劇も大成功に終わった。

パネルディスカッション
 劇の後には、「期待される家庭裁判所」をテーマに、本田正男会員の司会のもと、棚村政行早稲田大学大学院法務研究科教授をはじめとする5名のパネリストによるパネルディスカッションが行われた。
 近年、成年後見申立てやDV、児童虐待等の相談・通報の件数が増加傾向にあり、家事事件の変容が見られるとの指摘がなされた。
 複雑化・多様化・困難化する家事事件に対して、欧米における家事事件処理を参考に、裁判官、調停官等の職責、役割分担と連携の在り方の見直し、担い手の専門性、組織上の位置付づけの明確化、成年後見事件等の専門裁判所化、弁護士会・民間非営利団体へのアウトソーシングと多機関連携の必要性が唱えられるなど、今後家庭裁判所が果たすべき役割について、充実した討論がなされた。

取調過程の可視化を
 刑事弁護センター運営委員会は、弁護士フェスタにおいて、「取調過程の全面可視化を目指して〜足利事件に学ぶ」と題するミニシンポジウムを開催した。ゲストは足利事件の元被告人・菅家利和氏と、弁護人の泉澤章弁護士(東京弁護士会)であった。
 インタビューの冒頭から、菅家氏は、過酷な取調べの状況を実にリアルに話された。
 朝、いきなり刑事3人が自宅に踏み込んで来て「子どもを殺したな」と詰問する。否定すると胸を思い切り突かれ、殺害された子の写真を突きつけられた。冥福を祈って合掌すると、「やっぱりお前が殺したんだな」と言われた。最初から犯人扱いされ、何度違うと言っても聞いてくれない。「お前以外にいない」と十数時間怒鳴られ続け、髪を引っ張られ足げにされる。諦めて『自分がやった』と言ってしまった後は迎合して一生懸命うその物語を作った…。
 私は2つの質問をした。刑事は「任意同行」であることを説明したか、刑事の取調べでアリバイや証拠に対する弁明を求められたか?答えはいずれもノーであった。
 シンポでは、大阪で問題になった、取調べ状況を録音したテープも流された。
 「警察なめたらあかんぞ!」「おまえの人生めちゃくちゃにしてやるぞ」「おまえの家族のとこにも全部ガサ行くぞ!」
 これは、「捜査」でも「取調べ」でもなんでもない。
 取調べの可視化!
 これは、今、直ちに、最低限しなければならないことである。全ての弁護士が、直ちに立ち上がることを強く訴える。
(刑事弁護センター運営委員会 委員 神原 元)

第15回横浜弁護士会人権賞 「特定非営利活動法人 ジェントルハートプロジェクト」 「特定非営利活動法人 ウィメンズハウス・花みずき」が受賞
 「特定非営利活動法人 ジェントルハートプロジェクト」は、子どもたちに「やさしい心」と「いのち」の大切さを伝え、いじめのない社会を実現することを目的に、平成15年3月に設立された法人である。全国各地で活発な講演活動を行い、コンサートや展示会を開催するなど、熱意ある活動を継続している。
 「特定非営利活動法人 ウィメンズハウス・花みずき」は、平成11年12月に発足して川崎市初のDV被害女性シェルターを開設し、平成15年にはDV法に基づき、神奈川県の緊急一時保護事業を受託し、女性保護所となった。被害女性が同伴児と一緒に家族で生活できることを特徴として、保護・自立支援事業,相談事業等を積み重ねてきている。
 贈呈式で受賞の挨拶に立った「ジェントルハートプロジェクト」の代表理事の小森新一郎氏は、「今後も子どもの心と命を守る活動に尽力していきたい」と語った。
 「ウィメンズハウス・花みずき」の理事長の遠藤久江氏は、「DV被害の女性たちとともに歩む活動を続けていかなければならないという思いを強くした」と語った。

横浜弁護士会人権賞
 米軍ファントム機墜落事故の訴訟弁護団からの寄付金を基に設立された人権救済基金を利用して、人権擁護の分野で優れた活動をした神奈川県内の個人、団体を表彰し、人権擁護の輪を広げ定着させる目的で、平成8年3月に創設された。

劇団四部公演 「ワーキングプア強盗致傷事件」
 ご存じ、4支部の劇団は「劇団四部」、次第にパワーアップし、フェスタ出演3回目の今年は、出演者22名、裏方を含めると優に35名は超えるというかってない規模で、寸劇を行った。
 題名は「ワーキングプア強盗致傷事件」。
 一つの事件をめぐり、裁判員裁判の公判前整理手続、公判そして評議をすべてお見せし、その中に、会名変更問題や支部問題はもちろん、裁判員裁判の問題点から新司法試験の問題点まで盛り込むという意欲作であった。
 当日は前日深夜のサッカーアジアカップ決勝戦の後遺症でイマイチの入りであったが、出演者の熱の入った演技により大成功の内に終えることができた。見ていただいた方は、劇団四季に劣るとも勝らない(?)出来映えに感激していただいたと思う。
 弁護士フェスタは本年10回目でそろそろ新機軸を打ち出す必要があるとの声も聞かれるが、劇団四部のフェスタでの公演はまだ3回(支部サミットも含めると4回)、ますます磨きをかけて次回の公演に備えていきたい。
(川崎支部会員 高柳 馨)

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