会員 飯島 奈津子 |
昨年11月から始まった法制審議会は、約3週間に1回という「超」ハイ・ペースで開かれ、この10月までに16回もの会議が開催された。年内に、債権法全般についてひととおりの議論を終えて中間論点整理がなされ、来年4月にはパブリックコメントの募集が行われる予定が伝えられている。 |
これまでの議論は、法務省のホームページで配布資料を見ることができる。 |
多量で、アップされるペースもなかなか速いが、ぜひ一度チェックしていただきたい。検討されている具体的内容が、あまりにも広範かつ重大なので、初めてご覧になる方はきっと大いに驚かされるに違いない。 |
例えば債権譲渡禁止特約違反の債権譲渡を無効とはしない案だとか、債務不履行責任において「帰責性」を要件とはしない案だとか、瑕疵担保責任は債務不履行責任に一元化し、「瑕疵」という用語を撤廃して「契約不適合」とする案だとか、時効期間を契約当事者間の合意で設定できるとする案だとか、錯誤「無効」でなく「取消」とする案だとか、下請負人が直接注文者に報酬請求権を有するとする案などなど…。旧来慣れ親しんできたことがかなり変わるという印象を与える案が、次から次に議論の対象になっている。正直言って、多くの弁護士があまりよく知らないうちにこんな大事な議論が次々になされていっていいのだろうかと心配になるくらいである。 |
ただ、現在のいわゆる「一読」の段階では、「法務省案」の提案があり、その是非を検討するという形はとられておらず、議論もフリーディスカッション形式で、法制審議会の案をとりまとめるという段階にはまだまだ至っていない。 |
変わるということによるコストはもちろん小さいものではないので、今のままでも別に不都合はないではないか、なぜ改正が必要なのか、という声も、弁護士間に根強いことも率直にいって事実である。しかし、一つ一つの各論の議論を虚心坦懐に検討する機会をもつと、やはり今の民法の条文が決して万全のものではなく、いろいろな“無理”をして、いきあたりばったりでなんとかやっているという点があることは否定できない。ぜひこの機会に改正して、国民のために分かりやすく使いやすい民法にしていこうという試みに一理あると思える事柄も少なくない。 |
弁護士会としては、改正の必要性の有無という総論で立ち止まらずに、議論の当事者として議論の各論にどんどん参加していき、この改正議論に我々実務家の視点を大いに反映させていくべきだと考えるし、今こそ正にその時期である。どんな弁護士でも、債権法には無縁ではいられない。ぜひ多くの会員に債権法改正の議論にご参加いただきたい。 |