横浜弁護士会新聞

2010年3月号  −1− 目次 

中小企業支援のための全国的な取り組み始まる「ひまわり中小企業コールセンター」運用開始
 4月1日から「ひまわり中小企業コールセンター」による中小企業を対象とした全国規模の相談業務が開始される。相談者が全国共通の電話番号(0570−001−240)に電話すると、局番によって自動的に各地域の単位弁護士会に振り分けられ、その窓口が相談受付業務を行うという仕組みである。単位弁護士会では、予め中小企業問題に対応可能な弁護士をリスト化したり、当番日を決めたりしておき、順次相談者を割り振っていく。割り振られた弁護士は、原則として当日中に相談者に連絡を取り、必要であれば後日アポを取って相談に応じることで、迅速に中小企業のニーズに対応することを目指す。相談料については、開始後6か月間は初回30分までは無料とする予定である。
 
 中小企業は、我が国の企業の9割以上を占め、その経済基盤を支えると共に、地方においては経済活動の主体としての役割を担っている。
 ところが、これまでは多くの法的な問題を抱えながら、弁護士が法的サービスを十分に提供できて来なかったのが実情だった。日弁連が行ったアンケートでも、中小企業の8割が法的問題を抱えていると回答しながら、弁護士を利用した経験のない企業が約半数に及んでいる。経営者側は、「弁護士は裁判等の法的手続きを行う専門家」「事が起きなければ相談する相手ではない」という意識が根強い。
 弁護士の業務は、社会の複雑化、経済活動のグローバル化等によって、訴訟に限らず、紛争の予防やリスクマネージメントへの対応にまで及んでいる。日弁連は、昨年11月、弁護士による法的サービスの利用を促進し、その為の組織的かつ全国的なサービスの提供体制を構築することを目的として「日弁連中小企業法律支援センター」を設置し、弁護士へのアクセス障害の解消や、中小企業問題に対応できる弁護士の育成に取り組んでいる。コールセンターは、いわばその目玉とも言える取り組みである。
 各単位会では、受付窓口の設置、適切かつ迅速に対応するためのシステムの構築、弁護士のリスト化、中小企業問題に対応可能な弁護士の育成、といった組織作りが急務となる。
 当会では、トライアル期間として、2月1日から12日まで、先行してコールセンターの相談を実施した。合計で24件の相談があったが、債権回収や労働問題、更には、事業承継や融資関連の相談など具体的に紛争となる前の段階での相談も多く寄せられ、相談者にも好評だった。今後は、当会でも、コールセンターの広報や担当弁護士を確保する方法・研修といった点が課題となろう。
 コールセンターは、中小企業からのハードルを下げ、弁護士を積極的に利用して貰うための初めての全国的な試みである。中小企業の経営者には是非この制度を活用していただくと共に、会員の理解と協力をお願いしたい。
(業務改革委員会 商工部会長 飯田直久)


関弁連第5回支部交流会 支部の問題点が浮き彫りに
 1月23日午後1時から関弁連第5回支部交流会が法曹会館で行われた。最初に、澤田仁史・同司法制度改革検討委員会委員長(千葉県)によるアンケート結果報告、杉井静子・同委員(二弁)による基調講演がなされた。
 基調講演では、裁判員実施支部では裁判所・検察庁の人手不足が深刻化していること、他方、裁判員裁判を実施していない支部では支部の弱体化・空洞化が進んでいることなどの問題提起がされた。
 その後、出席者による活発な討論がなされた。具体的には、被疑者国選に関しては、低い報酬、接見渋滞の問題、支部から本庁に起訴された場合のリレー選任の問題などが、裁判員裁判に関しては、被疑者段階からの複数選任、記者会見への弁護士会の参加などが話題となった。
 さらに、新潟・三条支部管内では刑事事件の全てが本庁で起訴されるということが歴史的に繰り返されていること、千葉・佐倉支部では、成田空港がある関係で事件数が多いにもかかわらず、刑事事件を扱っていないこと、長野・伊那支部では、弁護士会への事前告知もないまま不便な場所に裁判所庁舎を建替えるという問題が起こったことなど、地域特有の問題についてそれぞれ報告がなされた。
 特に最後の報告については、当会においても横須賀支部の庁舎移転問題があるため、非常に参考となるものであり、各地域の実情による差異はあるものの、共通の問題点が浮き彫りとなって極めて有意義な会議であった。
 (副会長 二川 裕之)

山ゆり
 久しぶりに映画館で映画を見た。今話題の「アバター」ではない。「カールじいさんの空飛ぶ家」である
切符を買い、スクリーンの座席に腰を下ろすと、周りは子供の顔、顔、顔。アニメでしかも日本語吹き替え版を選んでしまったことにいささか後悔しつつ、映画を見始めた
泣いてしまった。不覚にも。始めは耐えていた。しかし、一度緩んだ涙線はそのまま暴走し、哀れ中年間際のおじさんは、咽び泣く姿を周りの客に図らずも公開することとなった。冷汗三斗とはまさにこのことである。ただ、最初の10分間は、誰もがその切なさに胸を詰まらせるのではないだろうか
思えば、仕事においても関係者が「泣く」場面はしばしば見られる。この場合、弁護士が釣られて泣くことはあまり感心できる話ではない。感情を抑え冷静な振りをしながら話を聞いていくことになる。このように、弁護士は、仕事柄感情を発露できる場が制限される。その意味では映画館のような害のないところで声を出して泣くことは、精神衛生上好ましいのかもしれないひなまつり
帰り道、「泣いていたよね」と、からかう妻を横目に見ながら、そんな自己弁護を心の中で必死に繰り返していた。
(千歳 博信)

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