医療事故が発生したとき、患者側が一番に求めることは、原因の解明である。また近時医師の刑事責任が注目され、医療機関側からも適切な原因究明制度が求められるようになっている。 |
このような動きを受けて、厚労省から、医療事故の原因究明と再発防止を目的として、新たに医療安全調査委員会(以下「委員会」)を設置する法案が発表されている。一方、患者やその家族の納得に重点を置いた野党案も発表されており、立法化作業は山場を迎えている。 |
委員会の設置は、患者側、医療機関側を問わず、医療事件に関わる実務家に大きな影響を与えることが予想されることから、神奈川医療問題弁護団では、5月8日、東京の医療問題弁護団から講師を招き勉強会を開催した。 |
勉強会では、制度の概要と法案に関するこれまでの動向について講演が行われ、患者側が求める公正中立性、透明性、専門性、独立性、実効性を備えた調査の実現のため、法律家がどのように係わっていくべきなのかについて質疑応答が行われた。 |
新しい制度下では、第三者である委員会が、届出のあった医療事故について調査や原因究明を行い報告をすることになるので、この調査報告をもとに、これまでの訴訟による責任追及のほかにADRが活用されることも見込まれている。また委員会と、各病院の事故調査委員会との連携も予定されており、その各々において法律家が事実認定と責任判断に関与することが予定されている。このように、これまでの医療過誤訴訟とは事件処理の過程が異なってくるため、当事者の代理人として携わる場合には事件処理の手法が従来と大きく異なってくる可能性があることも指摘された。 |
委員会制度はまだ準備段階であり、検討課題も多く残されているが、医療事故の調査を公的に保障する同制度の発足は不可欠なものと思われる。今後法律家は、事故調査の過程で、当事者の代理人としてだけでなく委員会の一員として関与することにもなり、ますます専門性が求められていくことにもなる。今後もこのテーマに注目し続けるべきであることは間違いない。 |
(会員 鈴木 順) |