8月号のこの欄で、「副会長は面白い」と書きました。それから4か月が経過した今でも、やはり面白いと言わずにはいられません。
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もっとも、面白さの内容は少し変わってきたように思います。最初のうちは、見るもの聞くもの初めてのことばかりで、まさに毎日、体験型テーマパークで過ごしているかのようでした。
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ふと我に返ると、弁護士歴15年にも満たない私が、会長の代理として大勢の前で挨拶をしているという不思議さ。当会の重要事項が次々と集中的に議論され決定されていく理事者会の醍醐味。事務局担当の伊藤副会長の代わりで職員の採用面接に立ち会ったときは、どちらが応募者か分からないくらいドキドキしました。 |
その後、夏を過ぎたあたりから、急激に忙しさが増してきました。理事者になって以降に検討を開始した課題の中には、そろそろ議論も出尽くし、実施段階に移すべきものも現れてきました。日弁連や関弁連が主催する大きな大会が目白押しで、週末は旅先で過ごすことが多くなりました。12月の臨時総会に向けて、今期の執行部の2大プロジェクトともいえる「10の決意」と「公益活動・委員会活動等分担金制度」についての準備作業も本格化しました。
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今は、これからの横浜弁護士会にとって何が一番重要か、そのために自分に何ができるか、ということばかり考えていますが、意外にも、これがまた非常に面白いのです。
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そして、そんな私を支えてくれる例の魅力的な執行部のメンバー。紙幅が尽きたので、その後の詳細な報告ができないのが残念です。いずれまた別の機会に。
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任期もあと3か月です。そろそろ「終わったも同然」という前筆頭副会長の口癖が聞えてきそうですが、同然だけどまだ終わってはいないので、最後まで頑張ります。
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会員 大谷 喜與士 |
思い出に残る事件として、破産管財人としてエジプトへの鍛造用機械の輸出・据付工事契約の履行を選択して実行した事件や、更生管財人として百数十億円の手形を乱発して倒産した会社を再建した事件等もあるが、一般的ではないので、国選で無罪判決を得た次の事件を紹介させて頂く。
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起訴事実は、被告人が共犯者Aと共謀して、Aが深夜通行人に話しかけているすきに、被告人が背後から通行人に抱きついて財布を窃取して逃亡したというものであった。Aは犯行を認めており、「被告人が共犯者であった」とのAの供述に基づいて被告人が逮捕、起訴された。被告人は「その日は入院中であり、犯行現場にいったこともない」とアリバイを主張して犯行を否認していた。
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これに対し検察側の反論は、入院中の同室者の「被告人は入院中のある一日外出して、深夜に帰ってきた」との供述調書を提出し、右外出日に犯行に及んだものであるというものであったが、外出日の特定はされていなかった。
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被害者は、証人尋問において、「深夜で暗く、一人の男は背後から抱きついて逃走したから、その顔を見ていない」として、在廷の被告人について「その男かどうかはわからない」と証言した。したがって、被告人の犯行を立証するものは共犯者Aの供述だけであり、その信用性が問題となった。
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私は、共犯者Aの供述の信用性を弾劾するため、Aに当日2人が会ってから犯行に至るまでの行動を詳細に供述させて、そのほころびを突くこととし、証人尋問において詳細な供述を求めた。
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Aは当日被告人とある喫茶店で落ち合った旨供述した。証人調べの後被告人に接見したところ、「あの喫茶店は当時改装のため休業中であり、2人がそこで落合う訳がない」とのことだったので、調査することを約束した。半信半疑ながらその喫茶店に赴いたところ、店主から被告人の供述どおりの証言を得ることができた。
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証言を文書化して店主に署名押印をしてもらい、次回期日に法廷に提出した結果、犯行当日の2人の行動は出発点である出会の場所に対するAの供述が虚偽であることが明白となった以上Aの供述には信用性がなく、他に被告人の犯行を立証する証拠がないとの弁論が採用されて無罪判決を得ることができたのである。
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右事件は、幸いにも喫茶店が休業中であったという偶然が共犯者Aの供述に信用性がないことの立証を可能にしたものであり、休業中でなければ果して同様の結果を得られたかどうか疑問であるが、半信半疑ながらも被告人の供述に基づく調査を実施した結果得ることができた成果であるといえよう。何事にも手を抜かず全力投球をすることの大切さを実感した事件であった。
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