横浜弁護士会新聞

2008年1月号  −3− 目次

理事者室だより (9)
副会長 中村 俊規
 8月号のこの欄で、「副会長は面白い」と書きました。それから4か月が経過した今でも、やはり面白いと言わずにはいられません。    
 もっとも、面白さの内容は少し変わってきたように思います。最初のうちは、見るもの聞くもの初めてのことばかりで、まさに毎日、体験型テーマパークで過ごしているかのようでした。    
 ふと我に返ると、弁護士歴15年にも満たない私が、会長の代理として大勢の前で挨拶をしているという不思議さ。当会の重要事項が次々と集中的に議論され決定されていく理事者会の醍醐味。事務局担当の伊藤副会長の代わりで職員の採用面接に立ち会ったときは、どちらが応募者か分からないくらいドキドキしました。
その後、夏を過ぎたあたりから、急激に忙しさが増してきました。理事者になって以降に検討を開始した課題の中には、そろそろ議論も出尽くし、実施段階に移すべきものも現れてきました。日弁連や関弁連が主催する大きな大会が目白押しで、週末は旅先で過ごすことが多くなりました。12月の臨時総会に向けて、今期の執行部の2大プロジェクトともいえる「10の決意」と「公益活動・委員会活動等分担金制度」についての準備作業も本格化しました。    
 今は、これからの横浜弁護士会にとって何が一番重要か、そのために自分に何ができるか、ということばかり考えていますが、意外にも、これがまた非常に面白いのです。    
 そして、そんな私を支えてくれる例の魅力的な執行部のメンバー。紙幅が尽きたので、その後の詳細な報告ができないのが残念です。いずれまた別の機会に。    
 任期もあと3か月です。そろそろ「終わったも同然」という前筆頭副会長の口癖が聞えてきそうですが、同然だけどまだ終わってはいないので、最後まで頑張ります。

水原(スウォン)地方弁護士会来訪 盛況の中、再会を約束!
 11月30日、大韓民国水原地方弁護士会の訪問団が当会を訪れ、交流記念セミナーなどの行事が催された。水原地方弁護士会と当会との交流は平成15年より始まったもので、1年毎に相互に訪問し、本年で5回目を数えるに至っている。     
 水原地方弁護士会の一行15名は、午後1時半に当会会館に到着し、当会の山本一行会長、水原地方弁護士会の水原地方弁護士会来訪
盛況の中、再会を約束!永進会長が、両会の交流の意義と今後の交流促進について、それぞれ挨拶を行った。挨拶の後、参加者は横浜地方裁判所に場所を移して横浜地方裁判所長を表敬訪問し、裁判員裁判用に整備された101号法廷にて、裁判官から日本の裁判員制度の概要について説明を受けた。  
 その後、当会会館にて、「日本と韓国の裁判員制度」というテーマで、交換訪問記念セミナーが開催された。当会からは、木村保夫会員が、弁護士の立場から見た裁判員制度の内容や問題点について、井上泰会員が、裁判員裁判において求められる弁護活動及び裁判員制度に向けた当会の準備状況について、それぞれ報告を行った。    
 水原地方弁護士会からは李菊煕弁護士より、韓国にて2008年より導入が予定されている国民参加裁判についての報告が行われた。両国の制度は、評議の判決への拘束力など異なる部分もあるが、国民の司法参加のための制度として共通する部分が多く、両会の弁護士より活発な意見交換が行われた。    
 その後、ロイヤルパークホテルにて懇親会が行われ、酒を酌み交わしつつ、国境や言葉を超えた交流がなされ、両会弁護士の親睦が深められた。

私の事件ファイル(9) 全力投球することの大切さ −ある無罪事件を通して−
会員 大谷 喜與士
 思い出に残る事件として、破産管財人としてエジプトへの鍛造用機械の輸出・据付工事契約の履行を選択して実行した事件や、更生管財人として百数十億円の手形を乱発して倒産した会社を再建した事件等もあるが、一般的ではないので、国選で無罪判決を得た次の事件を紹介させて頂く。    
 起訴事実は、被告人が共犯者Aと共謀して、Aが深夜通行人に話しかけているすきに、被告人が背後から通行人に抱きついて財布を窃取して逃亡したというものであった。Aは犯行を認めており、「被告人が共犯者であった」とのAの供述に基づいて被告人が逮捕、起訴された。被告人は「その日は入院中であり、犯行現場にいったこともない」とアリバイを主張して犯行を否認していた。    
 これに対し検察側の反論は、入院中の同室者の「被告人は入院中のある一日外出して、深夜に帰ってきた」との供述調書を提出し、右外出日に犯行に及んだものであるというものであったが、外出日の特定はされていなかった。  
 被害者は、証人尋問において、「深夜で暗く、一人の男は背後から抱きついて逃走したから、その顔を見ていない」として、在廷の被告人について「その男かどうかはわからない」と証言した。したがって、被告人の犯行を立証するものは共犯者Aの供述だけであり、その信用性が問題となった。    
 私は、共犯者Aの供述の信用性を弾劾するため、Aに当日2人が会ってから犯行に至るまでの行動を詳細に供述させて、そのほころびを突くこととし、証人尋問において詳細な供述を求めた。    
 Aは当日被告人とある喫茶店で落ち合った旨供述した。証人調べの後被告人に接見したところ、「あの喫茶店は当時改装のため休業中であり、2人がそこで落合う訳がない」とのことだったので、調査することを約束した。半信半疑ながらその喫茶店に赴いたところ、店主から被告人の供述どおりの証言を得ることができた。  
 証言を文書化して店主に署名押印をしてもらい、次回期日に法廷に提出した結果、犯行当日の2人の行動は出発点である出会の場所に対するAの供述が虚偽であることが明白となった以上Aの供述には信用性がなく、他に被告人の犯行を立証する証拠がないとの弁論が採用されて無罪判決を得ることができたのである。    
 右事件は、幸いにも喫茶店が休業中であったという偶然が共犯者Aの供述に信用性がないことの立証を可能にしたものであり、休業中でなければ果して同様の結果を得られたかどうか疑問であるが、半信半疑ながらも被告人の供述に基づく調査を実施した結果得ることができた成果であるといえよう。何事にも手を抜かず全力投球をすることの大切さを実感した事件であった。  

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  当会出身の徳田暁弁護士が所長として赴任している米沢ひまわり基金法律事務所では、後任を募集しています。 
 (連絡先) 米沢ひまわり基金法律事務所  0238(37)8076    

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