横浜弁護士会新聞

2007年6月号  −1− 目次


「法テラス、頑張ってます」会員のさらなるご支援を
法テラス、大丈夫です!
 最近はすっかり法テラスの人である。周囲からの挨拶が、当初の開業準備で「大変ですね」から、人の集まらない法テラスに行って「大変ですね」のニュアンスに変わりつつある。誤解も含めてマスコミの力は絶大である。会員に状況を直接お伝えする場がなく、今回のような機会に感謝している。
  昨年10月開業した法テラスは、法律扶助協会から引き継いだ民事法律扶助と裁判所から引き継いだ国選業務の他に、情報提供業務を新規に立ち上げた。法的トラブルの解決に役立つ法制度や専門機関を紹介し、解決の道筋をつける仕事である。「法テラス迷うあなたの道しるべ」というロゴはこの業務に由来する。
  中野坂上にコールセンターを設け全国から年間120万件の利用を見込んだところ、3分の1の利用に低迷し、「法テラス先細り」等と報道されたのである。現在は改革のための様々な取組が行われている。
  神奈川地方事務所では、消費生活相談員、書記官OB、調停委員からなる20名の専門職員がシフトを組み、電話と面談で情報提供を行っている。半年で月平均530件の実績があり、今も漸増傾向にある。
  また、神奈川被害者支援センター(NPO)と当会犯罪被害者支援委員会の協力を得て、犯罪被害者支援の専門相談窓口を週3日設け、必要に応じて弁護士を紹介する等、利用者から高い評価を受けている。半年で71件の相談実績があり、50地方事務所中最多である。
 
民事法律扶助は変身中
 民事法律扶助も、開業半年で大きく変貌している。契約弁護士は410名、契約司法書士は149名で、月平均430件の無料法律相談所(予約制)を実施し、月平均270件の代理援助を決定している。前者は開業前の月平均206件から2倍以上の伸びを示し、後者も月平均198件から大幅な伸びを示している。
 特筆すべきは法律扶助協会時代は、申し込みから相談まで約1か月、相談から審査まで2か月以上かかることもあったが、今は、申込みから1週間以内に必ず相談が入り、必要書類が揃えば相談から2週間で決定(審査)が出されている。常設相談場所の確保と人的設備、職員の努力の相乗効果が見事に現れた結果と思う。
 
国選弁護士は只今整備中
 法テラスが行う国選業務は、国選弁護人の指名通知業務と報酬算定業務に大別される。前者については、当会との協定で、予め当会が用意した日程割振りに従い担当者を国選弁護人に指名する扱いになっているが、予定担当者数より依頼件数が多く、特に支部では週に1人しか被疑者国選担当者が割振られていないため週に2件以上の依頼があると対応出来ずに、職員が弁護士探しに追われている。1件のために53人の弁護士に打診したこともあり、10人前後の弁護士探しは日常茶飯事である。
  ちなみに4月27日現在の国選契約弁護士は被疑者国選301名、被告人国選507名である。使える応援名簿の整備を心待ちにしている。
  他方、報酬算定業務については、報酬基準、算定方法ともに相当多くの問題を含んでいる。会員からの不服申立は半年間に12件あり、後で知ったが、全国のトップである。不服審査は法テラス本部が行うが、改善策に言及した所長の上申書を必ず添付した。不服が通ったのは僅か2件に過ぎないが、4月に算定基準の大幅な改訂が行われ、不服理由の幾つかが改訂に盛り込まれた。
  しかし、算定弁護報酬が国選弁護に熱心に取組んでいる会員の活動に相応しない、全般に従来に比して低廉すぎる、身柄拘束を解くための弁護活動が評価されない、実費である謄写費用が全額支払われない等々、今後改善すべき事項は山積している。
  また平成21年からは被疑者国選対象事件が必要的弁護事件に拡大する。裁判員裁判も始まる。平成18年度の勾留請求件数を基に現在の契約弁護士が年間1人10件を担当しても、1768件の担当困難事件が生ずるとの試算がある。ジュディケアの充実は当然として、スタッフ又はそれに代わる形態の弁護士の検討、整備が急がれる。
 
おわりに
 新しい制度に混乱はつきものである。当初「裁量経費」が支給されず、模範六法も買えない等ご心配をおかけした。一方、諸制度が急ごしらえなため、最近まで回答を要する課題が毎日必ず発生し、会に意見を求める機会も多かったが、弁護士が皆超多忙で意見がすぐに戻らず、特に国選業務には依頼から24時間以内の指名通知や、結果報告書提出から5日以内の報酬算定など時間の制約を伴うものが多いため、やきもきする場面も少なからずあった。しかし、何とか無事半年を過ごすことができた。
  幸い、今の法テラスは所長以下、執行部7名のほぼ全員が当会会員であり、常勤職員15名中10名が当会出身者である。どちらに籍を置くかではなく、互いに力を合わせて現場から使い勝手の良い制度を創り上げて行けたらと思う。10月からは法律援助事業も開始する。引き続き会員の皆様のご協力をお願いしたい。
(日本司法支援センター神奈川地方事務所事務局長 中村 れい子)
 
山ゆり
 周知のとおり、弁護士の数が急増している。これにより、弁護士の世界はあっという間に一変するはずである。その時、弁護士の世界はどうなるか。勝手流「弁護士未来予想図」を描いてみよう あじさい
 低価格競争による薄利多売(「貧乏暇なし」ともいう)。濫訴。懲戒の増加。隣接業種との職域の競合拡大ひいては弁護士法72条の空文化。ピンキリの二極化による「弁護士格差社会」の出現。思いつくまま挙げてみたが、暗いことばかり。何か明るい未来は描けないものか
 他方、弁護士会はどうなっていくのか。現在よりも多角的に手を広げた「大きな政府」になるのか、それとも必要最小限の業務のみする「小さな政府」になるのか。そもそも弁護士会自体、存在しているのか。10年前にはその構想すら存在しなかった法テラスに飲み込まれることはないのか
 どの世界でもそうだが、競争は不可避である。弁護士の世界もその例外ではない。弁護士だけがギルド的に守られているのでは国民の納得は到底得られないだろう
 今後の展開しだいでは、弁護士業だけでは生活できない時代がくるかもしれない。既に現在でも新人弁護士の就職難の話も聞こえている。先見の明があるのか、同期の1人は昨年末に弁護士業を早々に引退した。私の描いた「未来予想図」がどうぞ外れますように。
(二川 裕之)

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