あらすじ |
被告人は、5歳の娘をもつ専業主婦。夫を刺殺し、殺人罪で起訴されている。弁護人は動機として夫からの暴力を主張。ところが3人の証人により被告人の主張の信用性が揺らぐ。まずは被告人を診断した外科医が、被告人の体には傷一つなかったと証言。次に、生命保険の販売員が、被告人が夫に多額の保険金を掛けていたと証言。更に、近所の女性は、事件の2週間ほど前、被告人が若い男性と一緒にいるところを目撃したと証言。検察官の見立ては、『愛人男性を共犯とする保険金目的殺人事件』。「一緒にいた男は誰か?」被告人に詰め寄る検察官。そのとき、会場から1人の男性が立ち上がる。…「私です!」急遽、証人に採用されたその男性は、被告人が「娘が夫から性的虐待を受けている」と悩んでいたことを証言。男性は、心理学を専門的に学んでいることから、被告人の相談を受けていた。被告人は娘を性的虐待から守るため夫を殺害したが、娘の将来を思うあまり真の動機が話せなかったのだと…。 |
今年の裁判員劇は、題して「私が夫を殺しました」。有罪であることは争いがなく、もっぱら情状だけが問題となる事案であった。作家の中島博行氏(第40回江戸川乱歩賞受賞)書き下ろしの物語は、情状事件でありながら、どんでん返しが用意されており、終始目が離せない舞台となった。公開評議・量刑アンケートの結果は、人によってまちまちで、量刑について統一的な判断を下すことの難しさが浮き彫りとなった。 |
公開評議 |
求刑は懲役12年。弁護側は執行猶予を主張している。裁判官役の仁平正夫会員らと、司法記者クラブ所属記者からなる裁判員6名が公開評議を行った。公開評議では、「娘に手を出すような人は死んでもしかたがない」「実家に娘を連れて帰るなど、娘を守る他の方法があったのではないか」など、さまざまな意見が出た。 |
裁判員制度についてのパネルディスカッション |
続いて、古川武志会員の司会のもと、横浜地裁・横浜地検・当会による裁判員制度についてのパネルディスカッションがあった。パネリストは、鈴木秀行氏(横浜地裁第一刑事部裁判長)・上田邦彦氏(横浜地検総務部長)・清水規廣会員であり、市民向けに、裁判員制度の概要・目的・実際に裁判員になった場合の具体的イメージについて説明した。 |
評決結果 |
公開評議体による評議結果は有罪で懲役11年の実刑。会場参加者からのアンケート結果は、有罪197人中108人が執行猶予であり、公開評議体の量刑とひらきがあった。 |