会員 田中 隆三 |
1月20日、筆界特定制度の創設に関する「不動産登記法等の一部を改正する法律」が施行された。 |
施行から、9か月強の期間が経過した。 |
そこで、その運用について、横浜地方法務局で状況を聞いてみた。 |
筆界特定登記官は、筆界特定の申請を受理すると、関係者への通知や公告をする。その後、事実調査を行うため、法務局の長が筆界調査委員を指定する。 |
横浜地方法務局では、現在、10名の弁護士、9名の司法書士及び42名の土地家屋調査士が、筆界調査委員に任命されている。 |
筆界調査委員は、測量、実地調査、事実聴取、及び資料収集等を行い、事実調査終了後、筆界特定登記官に対し筆界特定について意見書を提出する。 |
筆界特定登記官は、各法務局に1名が居り、前記意見書の内容をふまえて、筆界特定書を作成するなどして最終的な結論を出すことになる。 |
横浜地方法務局では、9月21日までに、116手続がなされた。手続とは、申請や現場が1つでも、筆界特定が2か所必要であれば2手続となるので、そのように呼ばれている。 |
そのうち、22手続が取下げられたが、筆界の合意ができたものが殆どだということであった。 |
94手続が継続中ということになる。 |
全国では、8月31日現在で、約1800手続が継続中とのことであった。 |
筆界特定の申請から、手続終了までは、全国的には平均6か月程度であるが、横浜では6か月から1年間が標準となっているとのことであった。 |
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横浜では、9月21日現在手続終了になった案件は未だ無いということだった。 |
法務局からの要請として、申請時に正確な測量図面を提出してもらいたいとのことである。裏付をとる必要から受理後に再度測量はするものの、当初正確な図面を提出してもらうと、その後の手続が円滑に進むということだった。 |
また、申請前に提出書類等の相談をしてくれれば、その後の進行が早くなるので協力して欲しいということだった。 |
会員 田中 隆三 |
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マンション事件を扱う際に役立つ判例を2件紹介する。 |
最高裁 平16・4・23二小判決 |
マンション管理組合Xが組合員Y(前区分所有者から購入した者)に対して、前所有者が6年余にわたって滞納していた管理費・特別修繕費(以下「管理費等」という)の支払いを求めた。 |
Yは民法169条(以下「169条」という)所定の定期給付債権として5年間の短期消滅時効を主張。1・2審は、169条の適用を否定し、Xの請求を全部容認。理由は、管理費等は、原則的に毎月一定額を支払う形になってはいるものの、総会の決議によりその額が決定され、毎年要する経費の変化に応じて年単位で増額・減額等がされることが予定されているものであって、その年額が毎年一定となるものではない。このような債権は、基本権たる定期金債権から発生する支分権としての性質を有するものではないとした。 |
これに対し本判決は、管理費等の債権は、管理規約の規定に基づいて区分所有者に対して発生するものであり、その具体的な額は総会決議によって確立し、月毎に所定の方法で支払われるものである。このような債権は、基本権たる定期金債権から派生する支分権として169条所定の債権に当たる、と判示した。 |
[コメント] |
マンション管理組合の管理費等債権の消滅時効期間に関する最高裁の先例としては、最高裁平5、9、10があり、169条の規定による短期消滅時効の適用を認めた原判決の判断を、是認している。しかしこの判例は刊行物に登載されておらず、下級審判例や学説も5年説・10年説と分かれていた。 |
管理費等の具体的額は毎年の総会決議(実際は予算案の承認となろう)によって確立するが、各区分所有者が管理費等の納入義務を負うこと自体は管理規約で定められており、かつ、それが月毎に支払われるものとして管理規約上に規定されているときは、右総会決議をもって管理費等の徴収権がその都度創設的に成立すると理解するのは難しい。むしろ、管理規約が基本権としての定期金債権を定めるものであり、月々支払うべき具体的な管理費等債権は、この基本権から派生する支分権として発生すると解するのは相当である。 |
管理組合(管理者)はのんびりと滞納者を放置しておけなくなったわけである。 |
東京高裁 平16・5・20決定(確定) |
マンション管理組合理事長Xは、区分所有建物に対する区分所有法(以下[法]という)59条1項に基づく競売請求を認容した確定判決を債務名義として民事執行法(以下[執行法]という)195条に基づき競売を申し立てた。原審は、最低競売価格を上回る優先債権・手続き費用を弁済して剰余見込みがないとして、執行法63条2項により、競売手続きを取り消した。本決定は以下の理由から原決定を取り消した。 |
(1)法59条競売は、売却によって区分所有者の区分所有権を剥奪することを目的とし、配当を全く予定していないのであるから余剰を生ずるかどうかを問題とする余地はない。 |
(2)売却代金によって手続き費用を賄うことすらできない場合には、その不足分は競売申立人において負担すべきである。 |
(3)法59条競売は、競売手続きの円滑な実施及びその後の売却不動産を巡る権利関係の簡明化ないし安定化、買い受け人の地位の安定化の観点から執行法59条1項が適用され、区分所有権の上に存する担保権が売却によって消滅する。 |
(4)法59条競売には、執行法63条は適用されない。 |
[コメント] |
区分所有者が長年管理費等を滞納している場合に、多額の担保権が設定されていても、管理組合はやっと区分所有者を交代させる道が開けた。 |
(会員 石川 惠美子) |