横浜弁護士会新聞

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2004年8月号(2)

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個人情報保護法と弁護士
会員  森 田  明
 昨年5月に、個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)が成立した。この法律は個人情報保護についての公的部門・民間部門に共通する基本理念を規定すると共に、民間事業者に対し個人情報保護の義務付けをしている。来年4月から実施される具体的義務規定の適用を受ける「個人情報取扱事業者」は、「5000件以上の検索可能な個人情報を取扱う者」をいう。弁護士会はともかく、個々の法律事務所はすぐに「個人情報取扱事業者」にはあたらないかもしれない。しかし、個人情報保護の原則は、現代社会の基本ルールであり、将来的には多くの法律事務所が「個人情報取扱事業者」になる。この法律の内容はよくよく知っておく必要がある。
 この法律の要請する個人情報保護のルールには、個人情報の取り扱いにあたって利用目的をできるだけ特定し目的達成に必要な範囲でのみ取扱うこと、不正な手段で収集してはならないこと、正確かつ最新の内容に保つこと、安全管理のために必要な措置を講ずること、取得時に利用目的を本人が知りうるようにしなければならないこと、本人からの開示、訂正、利用停止の請求に原則として応じることが含まれ、さらに苦情の適切な処理の義務もある。
 もちろん、弁護士業務では、相手方の情報をひそかに収集利用することがしばしばあり、上記の原則を忠実に守っていたら仕事にならない。総務省の説明では、弁護士にしろ興信所にしろ、当該業務の適正な遂行上必要なことは当然容認されるというのであるが、どこまで容認されるのかは全く不明確である。(このあたりが、この法律が最後まで批判を受けたゆえんである。)
 弁護士職務基本規程(第二次案)では、「秘密を保持するための必要な措置を講じなければならない」という表現を導入している。これまでの「プライバシーに配慮して」とか、「取り扱いに注意」といった「お題目」では済まず、個人情報保護の段取りが尽くされているかが問われる時代になってきたことは、間違いない。

スタートした法科大学院
 今次の司法改革では、法曹養成に特化した教育を行う法科大学院が設けられ、神奈川県下では、当会がその開校に向け積極的に関与してきた横浜国立大学、神奈川大学、関東学院大学の3校がこの4月に法科大学院をスタートさせた。
 このうち、関東学院大学では、5月15日金沢八景キャンパスで法科大学院開設記念式典を開催し、当会からは、高橋会長、飯田副会長、そして山下光法科大学院支援委員会委員長らが出席し、高橋会長と山下委員長が記念式典において祝辞を述べた。なお、同法科大学院では、当会会員の加藤良三(研究科長)、岡本秀雄、鈴木質、本田正士、安田英二郎が専任講師、大川隆司、河住志保、岸哲、栗山博史、小圷淳子、小林俊行、鈴木義仁、本田正男が非常勤講師を務めている。
 また、横浜国立大学では、6月24日横浜ベイシェラトンホテル&タワーズで記念講演・記念式典を行い、当会から高橋会長、本間、三木両副会長、山下委員長らが出席した。なお、当会会員では、川島清嘉、杉原光昭、、大木孝が専任教員となり、折本和司、輿石英雄、関守麻紀子、武井共夫、三木恵美子、若田順が非常勤講師を務めている。
 さらに、神奈川大学では、7月10日法科大学院記念講演会を開催し、高橋会長が「21世紀の弁護士」という演題で、院生や受験生を前に記念講演を行った。なお、同大学院では、鈴木繁次、間部俊明、森田明会員が専任教員として教壇に立ち、藤村耕造会員が非常勤講師を務めている。

いよいよ始まった法科大学院 その6 実務の「今」を語る
神奈川大学法科大学院教授 間部 俊明
 この4月から、神奈川大学法科大学院の専任教員になった。50名の第1期生のうち未修者は35名、既習者は15名。神奈川大学出身者は数名で、慶応、中央、早稲田の卒業生が多く、国立大出身者も2割を超える。数学や生物、薬学など理科系を中心とする他学部出身者が約5割もいる。社会人経験者も多い。女性が4割近くを占めている。将来への不安を抱えつつも、夢を持つ彼らは活気に満ちたスタートを切った。
 全く新しい試みにわくわくしながら取り組んでいる。前期の私は、既習者クラスで刑事実務を教えている。刑事の場合、有罪率99%以上、保釈もなかなか認められないというのが実状であり、平野教授によって「絶望的」と評されたほど。
 冤罪事件の原因の多くが起訴前の取調べ段階での自白にあったとの反省から日弁連が当番弁護士制度を始め、起訴前の公的弁護制度の実現を求めて運動してきて、司法改革のなかでようやく認められたものの、より良い制度とするためには一層の議論が必要である。「君たちには刑事事件に意欲を持った実務家になってほしい」と第1回で述べた。第2回以降、これまで手がけた事件をもとに事例問題を作問して出している。
 学生の意欲はきわめて高く、毎回レポートを書かせているが、よくついてきている。新司法試験は、民事系、刑事系、公法系に分かれて、事例問題から実体法と手続法の問題点を取り出して論じることが求められるためその趣旨に沿うような授業を心がけているが、どれだけの成果が上がっているだろうか。
 私たち実務教官に期待されるのは、学生と接触することで彼らに法律実務を体感してもらい、モチベーションを強く持ってもらうことにあると思う。
 実は、未修者のクラス担任を命じられている。講義以外でも学生と接触の時間を持って彼らの話を聞き、こちらからは、司法改革の現状や、彼らを待っている実務の「今」を語ろうと思う。

がんばれ横弁任官者
横浜弁護士会 弁護士任官者を励ます集い
当会の平成16年度弁護士任官者である間部(山田)泰会員、横浜簡裁民事調停官である恵崎和則会員、同高橋瑞穂会員を励ます会は、平成16年6月22日、多数の参加を得て、ロイヤルホール横浜で盛大に行われた。

「あ・仲」から「紛争解決センター」に
市民に一層の利用をしていただくために
 横浜弁護士会あっせん・仲裁センターの名称が、この8月から「横浜弁護士会紛争解決センター」に変更される。その理由は、従来から「あっせん」や「仲裁」といっても、特に市民にとってその内容が理解されにくいのではないかという声もあり、一方で新仲裁法が施行されたこともあって、この機に名称を変更することが最も適当だとする意見が多かったことにある。
 その名称も、端的に(民事)紛争を解決する機関として理解し易いようにした。「紛争解決センター」では、様々な種類の紛争を、短期間(原則3期日)、低い費用(1期日1万円、成立手数料は別)で合理的に解決することができる。紛争解決センターでの判断に強制執行力を与える方法も用意されている。是非、各会員には、もう一歩で合意できそうな事件、話し合いでの解決になじむ事件、裁判までは必要ないがいつでも債務名義がとれるようにしておきたい事件、時効中断効を得ておきたい事件等々について、積極的に紛争解決センターを利用していただくようお願いしたい。

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