2004年8月号(1) |
7月2日、日本司法支援センターの担当者である黒川弘務氏(法務省総合法律支援準備室室長)をお招きして、法務省の意見を直接に聞き、また当会の実情を伝える為の意見交換会が開催された。 |
まず、黒川氏から次のとおり、支援センターの概要の説明があった。 | |
・ | 平成18年5月に支援センターの設立をし、9〜10月に業務開始することを目指して準備している。 |
・ | 全国に最低50箇所の支部事務所を作る予定である。 |
・ | 地方の実情に即して支部事務所の規模や場所などを決めるべく、現在は全国を回って検討作業中である。 |
次に会員から黒川氏に対して質問・意見などが出された。各分野毎に出された質疑応答の概要は次のとおりである。 | |
【刑事弁護関連】 | |
Q | 支援センターが受付けるのは国選事件に限定されるか。 |
A | 国選事件に限定されない。私選事件については、支援センターとしての弁護士紹介業務の運用の問題である。 |
Q | 弁護士会から支援センターに出す名簿は、単位会のみのものか、例えば東京3会の弁護士の名簿も含めるのか。 |
A | 各弁護士会と相談して決めたい。 |
Q | 具体的事件について推薦する弁護士は誰が決めるのか。 |
A | 弁護士会、裁判所及び支援センターの三者で相談して決めたい。但し、事前の打診がないと困ると言うのであれば、運用の問題として相談することになると思う。 |
【法律扶助協会関連】 | |
Q | 支援センターの支部組織は、これまでの法律扶助協会の各支部とは、人的・物的設備などの点でどのように違うのか。 |
A | 支援センター支部は、地方裁判所の本庁所在地には1つは作る。スタッフ弁護士・事務局は、法律扶助協会の業務よりも幅広いものに見合う程度を考えているが、まだ具体的には決まっていない。 |
【犯罪被害者支援関連】 | |
Q | 支援センターでは、無料電話法律相談などの活動をする予定があるか。 |
A | 民事扶助事業としての相談は別であるが、無料法律相談は考えていない。 |
【法律相談センター関連】 | |
Q | 支援センターではどのような相談窓口を設けるのか。 |
A | 支援センターでは、法律相談業務は予定していない。法律相談センターは従来どおりやっていってほしい。 支援センターのメインの機能は、情報提供と事件の振り分けである。 民事扶助事件と、司法過疎地においては相談業務を行うが、それ以外では法律相談は行わない。 |
Q | 支援センターと、現在ある弁護士会の法律相談センター、都市型公設事務所の相談窓口、地方自治体の法律相談窓口とはどのような関係になるのか。 |
A | いずれの窓口も従来どおり継続していただきたい。支援センターから各窓口を紹介することも多いと思う。手に余るものは支援センターを紹介してもらいたい。相互補完作用によりうまい連携システムを作って行きたい。 |
【設備・スタッフ等】 | |
Q | 支援センター神奈川県支部組織について教えて下さい。 |
A | 支部長は弁護士を予定している。兼任は可能。スタッフ弁護士の人数も未定であるが、賃金は同期の判事・検事と同じ位を予定。各単位会の実情を伺って、オールジャパンで人員配置したい。転勤可能な人が望ましい。 支援センターの設置場所についても未定である。弁護士会館や公設事務所の一部を格安でお借りできるのであれば、ありがたいが、横浜弁護士会館にはそのスペースはないと本日来てみて直感した(笑)。 |
支援センターに対して警戒心は持ってもらいたくない。主要業務については弁護士にお願いすることになると思うが、協力して国民にとって使い勝手のよい制度を作りたい。憶測が飛び交っているのは説明不足に起因しているので、全国を回って対話し理解を相互に深めたいと思っている。 |
1 概 要 | |
平成16年5月26日に成立した「総合法津支援法」に基いて設立される新たな法人。同法の定める支援体制の中核となる運営主体として、独立行政法人の枠組みに従いつつ、最高裁判所が設立・運営に関与する。平成18年5月に設立、同年10月から業務を開始することが予定されている。 | |
2 組 織 | |
主たる事務所を東京に置くほか、地域の実情、業務の効率性その他の事情を勘案して必要な地に事務所が設置されるが、少なくとも各都道府県毎に設置されることが予定されている。人的組織としては、法務大臣により理事長が任命される他、役員として理事、監事が置かれる。また、支援センターに勤務する弁護士として、任期制のスタッフ弁護士が事務所の規模に応じて採用される予定で、実際の業務は、このスタッフ弁護士と、支援センターと個別で契約した契約弁護士がこれに当たることになる。 | |
3 業 務 | |
弁護士やADR機関(裁判以外の紛争解決機関)の紹介といった、情報提供や関連機関への振り分け、そのための窓口業務、民事法律扶助や公的刑事弁護の運営を担うほか、司法過疎対策、犯罪被害者支援、関係機関等との連携の確保強化などの業務を行う。また、国、地方公共団体、公益法人その他の営利を目的としない法人等の委託を受けて、法律サービスの提供等の業務を行うことも予定されている。 |
昭和初期の弁護士は、六法全書と紙とペンさえあれば、とりあえず仕事ができたのだろう。しかし、現在、コピー機、FAX、パソコン、判例ソフトを持たない弁護士は少ないし、これらがないと業務に支障が生じる。 | |
コピー機がなければ、事務所運営はできない。パソコンがなければ、利息の計算や管財事件の配当額の計算に多大な時間がかかる。また、判例検索ソフトがなければ、判例の調査にどれだけ時間がかかるか想像がつかない。 | |
それでは、昔の弁護士は、平均労働時間が長かったのだろうか。数々の道具が発達し、劇的に作業効率は上昇しているはず。だとすれば、昔の弁護士が一日に一〇時間労働していたとしたら、現在の弁護士は一日に五時間しか働かなくても良さそうである。しかし、周りの弁護士を見ると皆忙しそうだ。 | |
現在の弁護士は、以前より多くの仕事をこなしているのだろうか。確かに、国民の司法への関心が高まり、事件数は増加している。それでも、昔の弁護士が、現在の弁護士の半分しか事件数を持っていなかったとしたら、経営が成り立つのだろうか。現在の弁護士の方が、昔の弁護士より裕福だという話もあまり聞かない。 | |
便利な機械がどんどん増えているのに、なぜ、労働時間が短縮したり、収入が大きく増大しないのか、不思議に思う。 | |
(伴 広樹) |
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