横浜弁護士会新聞

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2004年8月号(3)

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平成16年度執行部の活動方針について
 今期の執行部が就任してから早いもので4ヶ月が経過した。通常総会で日弁連副会長への支援に関する議案なども採決され、前執行部からの引き継ぎ事項の処理もほぼ終えることができ、ようやく新執行部として取り組んでいきたいと考えている課題に着手できる環境が整ってきた。そこで、この機会に、当執行部の今期の目標と、その実現に向けての具体的な施策についてご報告することとした。
第1 今期の目標について
 当執行部は、3つの観点からの9つの重点活動を今期の目標として掲げている。
 狭義の司法制度改革に関する具体的な実践活動の観点からの目標(第1の観点)
  (1) 支部を中心とした地域司法の形成に寄与する活動に取り組む。
  (2) 地域司法の充実のために、地域に根ざした法教育と司法に対する理解を得るための活動に取り組む。
 法曹人口と業務基盤の拡充の観点からの目標(第2の観点)
  (3) 増加する新人弁護士を受け入れ、養成し、送り出すための制度あるいは事件過疎解消のための制度として、都市型公設事務所の設置やその他の支援制度等を創設し、その制度基盤の整備を図る。
  (4) これまでの研修制度に加えて、専門性の高い弁護士を養成してゆくための専門研究制度を立ち上げる。
  (5) 弁護士の進出が看過されてきた企業等民間団体や立法行政の内部領域へのかかわりも近時重要視されている。司法へのアクセス拡充に対する取り組みとして、こうした団体等との協議を重ね、その関係のあり方等を探ってゆきたい。また、創設が予定されている日本司法支援センターについても、司法へのアクセスという観点から十分に検討してゆくべきであると考えている。
 会内活動の観点からの目標(第3の観点)
  (6) 総合改革委員会から、会内の意思決定プロセスの簡素化と迅速化が答申されているので、この答申の内容を実行し、迅速な意思決定と会務の効率化に努め、重要課題に果敢に取り組める執行部体制の構築に努める。
  (7) 裁判所・検察庁そして日弁連のIT化の進展にあわせ、当会でのIT化活用のための整備と、会員のIT化の促進を図る。
  (8) 会務の活性化や活動分野等について、若手弁護士との間で期別の懇談会を開催する。
  (9) より健全な会財政のあり方について、財務室等の協力を得ながら、中・長期的視点に立って検討を加える。
第2 目標を実現する為の具体的なアクションプログラム
 各自治体との間の懇談会の実現((1)(2)(5))
   地域司法の関係でいえば、自治体との協力関係は不可欠である。執行部としては、神奈川県内の主だった自治体を回り、今後の懇談会の持ち方やそのテーマについて協議を進めて行く。
 若手その他の弁護士との期別懇談会((8))
   大幅な法曹人口の増加や、司法制度の変革に伴い、今後の司法を担うであろう若手会員との懇談会を持ち、将来のあるべき司法の形、その実現に向けての具体的な方策等について協議を進める。
 地域司法の充実・法教育活動と支部の役割((1)(2))
   県内に広く司法を浸透させるには、各支部の協力が不可欠である。そのための活動母体として、支部に委員会を設けることの可能性について協議を進める。
 裁判員制度に関する知識普及活動と実験的模擬裁判の実施((2))
   裁判員制度を実現するためには、実際に裁判を担う法曹三者が協力することが不可欠である。その実現に向けて、裁判所及び検察庁との協議を進めるとともに、模擬裁判を実施して、市民への参加を呼びかける。
 都市型公設事務所と新人弁護士受け入れ・養成制度の創設((3))
   都市型公設事務所については、同設置検討委員会において、その実現に向けた具体的な方策について現在協議が進められている。また、任官者や過疎地型公設事務所その他への派遣弁護士といった人材の育成については、直接間接の協力事務所による育成という方法も考えられる。更には、遅くとも平成17年10月から業務を開始する日本司法支援センターとの関係も十分に検討する必要性がある。そこで、こうした各制度のための財源の捻出方法等も含めて、会員集会を開催するなどして、会員のコンセンサスを得るための工夫に努めると共に、今後の進め方について、ワーキンググループの設置の必要性等についても検討する。
 専門研究部の立ち上げ((4))
   社会環境の複雑化、法曹人口の増加に伴い、弁護士の専門化の必要性が唱えられている。この様な社会的ニーズに応えるべく、当会においても専門研究部を設けるべきか検討の必要がある。そこで、会員へのアンケートにより、専門研究部のニーズの調査を実施し、参加希望者をリストアップする。また、専門研究部への参加者等を対象とする専門登録制度の創設について、その具体的な方法等を含めて検討する。
 会内の意思決定プロセスの簡素化と決定の迅速化((6))
   総合改革委員会から、会長声明等の建議や答申、一部重要なものを除いた人事、職員の雇用や雇用条件について、常議員会の議を経ず執行部の判断で決定できるように会則や規則を改正すべきであるとの答申を受けている。そこで、その具体的な内容について慎重に検討したうえ、総会に提案し、その決議を得て実現する。
 IT化の推進((7))
   現在の情報化社会において、委員会等の会務や、法律相談センター・刑弁センターの業務管理、弁護士会内部の事務管理等を、効率的、円滑に進めて行くためには、IT化が不可欠である。そこで、これらを統一的に検討するワーキンググループを立ち上げ、弁護士会のIT化を推進し、事務効率の観点から既存使用ソフトを見直し、メーリング・リストやメールマガジンの普及活動を通じて、情報の早期伝達、ペーパーレスによるコスト削減を実現する。また、併せて、会員個人の業務のIT化の推進も促進する。更に、個人情報の保護に関する法律の施行に伴い、会内の情報管理システムの洗い出しをし、情報の漏洩防止策を検討する。
 財政健全化のための当会財務の中・長期展望((9))
   諸施策を実現するには、予算措置を伴うことになる。当会の財源も決して潤沢とはいえないことから、都市型公設事務所や新人弁護士受け入れ制度、老朽化しつつある会館の修繕や建て替え、IT化推進のための設備投資、更には、職員給与の改善・見直し等について、将来の負担増も考慮に入れながら、財源をどの様に確保しかつ配分していくかを十分に検討する必要がある。そこで、事務の効率化等によるコスト削減を検討すると共に、収入源の将来予測等を含め、財政健全化のための中・長期展望を立案する。
第3 その他の活動方針
 執行部としての今期の目標は以上の通りであるが、当会は、昨年大韓民国の水原(スウォン)弁護士会と姉妹提携を結んでおり、今年の10月には、当会から水原弁護士会に訪問する予定になっている。現在の国際社会において、国際交流を深めることは、会活動の国際的認識を深める意味で、また弁護士業務の国際化という観点からも重要となりつつある。特に国際都市である横浜を玄関口として持つ当会としては、水原弁護士会に限らず、他の国の都市とも交流を深めていくことが十分可能であると共に必要である。そこで、委員会の中に部会を設け、あるいは将来的には委員会の設置も視野に入れながら、国際交流の実現に向けてその基盤作りをしたい。

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