横浜弁護士会新聞

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2003年9月号(2)

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解説Q&A 裁判所にも司法改革の波
 下級裁判所裁判官指名諮問委員会と地域委員会が設置されたことに伴い、そのしくみにつき、池田忠正会員がQ&A方式で解説する。
 下級裁判所裁判官指名諮問委員会と地域委員会が設置された根拠と目的は何ですか。
 平成一五年五月一日施行の最高裁規則によって最高裁と高裁に設置されたものです。平成一三年六月の司法制度改革審議会意見書の「裁判官の指名過程に国民の意思を反映するための諮問機関を設置すべし」との提言を受け、最高裁内の一般規則制定諮問委員会(委員二〇名、うち学識経験者九名、弁護士五名、裁判官二名など)の答申にもとづいて制定されました。
 委員会の委員構成はどのようになっているのですか。
 この制度は、中央の指名諮問委員会(中央委と略称。委員一一名、うち学識経験者が七名、裁判官二名、弁護士二名)と、八つの高裁所在地の各地域委とから構成され、地域委の委員は五人(裁、検、弁各一名、学識経験者二名)ですが、東京だけはその倍の一〇人です。任期は三年です。
 中央委員会の具体的任務は何ですか。
 ひと言でいえば、(1)司法修習生からの新任(2)裁判官の一〇年ごとの再任(3)弁護士任官につきその指名の適否につき、審議し意見を述べることです。
 地域委員会の具体的任務は何ですか。
 指名候補者の情報収集とその取りまとめを中央委に報告し、その報告にあたって、必要な意見を具申することです。
 当会や会員は、この制度にどのようにかかわっていくべきなのですか。
 司法修習生からの新任については(今回は間に合いませんが)、実務修習中の修習生の指導過程で、裁判官希望者を見極めて指導していくこと、再任については、再任期の裁判官はもちろん、そうでない裁判官についても日頃から裁判官としての適性を見る眼を養い、全般的な評価と具体的な事案の進め方について、訴訟の勝敗を超えて見極めること、弁護士任官については、特に、希望者の望みや期待を裏切らないような気配りが必要でしょう。
 関弁連はどのようにかかわっているのですか。
 現在関弁連内にバックアップ委員会を恒久的に設置することが総務委員会に諮問されています。秋に発足すると思われますが、管内一三会の情報交換の場として有効に機能することが望まれます。
 再任該当裁判官に関する情報はどのように収集するのですか。
 中央委で、再任裁判官につき最高裁から提供された報告書によって重点審議者を振り分け、これにつき地域委に情報提供を依頼します。地域委はこれをうけて、重点審議者はもちろん、他の管内該当者について、高検、現任地の地検、弁護士会に周知して、個々の検事、弁護士から高裁総務課に具体的な情報を顕名で送付することが望まれています。ただ、送付の際弁護士会がどのようにかかわるべきかについては、日弁連内で議論をしています。
 会員はどのような基準で裁判官の情報を提供するのですか。
  中央委や地域委は、具体的な情報を求めていますので、例えば、優、良、可とか五段階評価の点数を伝達しても、参考にされないことが考えられます。具体的に日時、場所、状況などを踏まえた、裁判官としての適否に関する情報が有効と思われます。
 当会には、委員会に協力するための受け皿があるのですか。
 八月の常議員会で情報収集のための「裁判官選考検討委員会」が設置されました。
 今年度の新任、再任の該当裁判官に関する委員会に関するスケジュールはどうなっているのですか。
 司法修習生からの新任については、九月下旬の二回試験終了後中央委に資料が出され一〇月中には適否を答申。弁護士任官者と再任については、一〇月中旬までに地域委で情報の収集取りまとめを行い一一月中旬までに中央委に報告し、中央委は一二月中旬までに適否を最高裁に答申。尚、再任者の東京を除く高裁管内の候補者人数は三五〜四〇人の見込みです。
当会から東京地域委員会委員に選任された池田忠正会員の談話
 下級審裁判官に対して、はじめて民主的コントロールが及ぶ制度ができたわけです。裁判所といえども、ユーザーである国民の意向を無視できない時代です。思想信条や訴訟の勝敗を超えて不適切な裁判官をなくし、適切な裁判官を増やすよう日々眼を光らせて、具体的な適否に関する情報を数多く寄せてもらいたいと思います。

事件の流れが初めてわかった 事務員研修会に参加して
田口法律事務所 福元明子
 七月二四日に、横浜弁護士会の諸手続に関して事務員研修会が開かれました。法律相談センター、当番弁護士制度、法律扶助協会、国選弁護、弁護士法二三条の二に基づく照会請求等、身近な弁護士会の仕組みから諸手続について、中村俊規会員と弁護士会事務局の方から丁寧に説明して頂きました。
 「○○の承認がおりました。」弁護士会からこんな電話があると今まで、機械的に動いておりましたが、調査室があること、その仕事の流れなどこの研修で初めてわかりました。一番ありがたかったのは、事務局からの要望を伝えて頂いた点です。失敗から学ぶことは勉強にはなりますが、事前に注意点が解ればお互いに仕事の能率も上がります。弁護士法二三条の二に基づく照会については、まだ経験もありませんが、弁護士が「これは弁護士法照会にかけてみようか。」とつぶやいたら、あらかじめ必要な書類等チェックできるかなと楽しみになりました。気が利く、役に立つとほめて頂ければさらに仕事の励みにもなります。
 今回の研修は初心者のためかと思いましたが、大勢の出席者があり、中身の濃いレジメも用意して頂き大変有意義なものであったと思います。
 身近な弁護士会とさらに上手に関わっていけるように、このような研修の機会はできるだけ前向きに参加して、機械的にではなく内容を理解して仕事に取り組んでいけるようにと思っております。

明るい弁護士会を創るために 総合改革委員会の活動報告
 当委員会は、簡単に言うと、委員会統廃合や委員会通則で評判の悪かった機構改革推進本部のアトガマ委員会である。しかし、現在は明るい当会を創ろうとして夢のある活動をやっていると委員全員自負している。多少難しげに言うと、司法改革の最中にあって中・長期的な展望を持ちつつ当会のあり方やそれにふさわしい機構・制度・設備を検討し準備していく方策を求めることを目的として設立された六年間の時限委員会である。
 井上嘉久委員長以下三一名の委員は、一生懸命に活動しており、設立後まだ二年しか経っていないのに事務局運営室や財務室の設立、総会への代理人出席、支部会規の設立などなど、中身のある答申を会に送り続けてきた。さて、現在、当委員会がどんな課題と取り組んでいるかを、会員の皆さんにご紹介したい。
 現在の課題は二つ。ひとつは、会の執行体制、つまり、会長・副会長からなる理事者制度の改革・強化の方策であり、いまひとつは、現在の本部会館の建替えに向けての準備である。執行体制と言っても、ピンとこられないかもしれないが、現在、当会は、会長一名、副会長五名の体制で運営されている。六名なら十分と思われるかもしれないが、理事者は超多忙である。無報酬にかかわらず自分の事件や事務所の経営後回しで会のために山ほどの人事派遣や苦情への対応などの日常業務に追い捲られている。本来、肝心要の仕事であるはずの市民や社会そして時代の要請する諸課題に十分答えられないと愚痴をこぼしつつ、いつも疲れ気味である。これでは、前向きで豊かな発想も沸きにくく魅力ある弁護士会を創ることはできない。しかも、この体制が一年ごとに交替する。したがって、ある程度の期間が必要な制度やシステムの構築が難しい。「こんなに疲れる理事者なんて一年以上できないよ」、これは、ホンネかどうかは別として、歴代の理事者の方々がよく口にされてきたことである。
 これでは、明るい横浜弁護士会なんて夢のまた夢。そこで、理事者の負担軽減と執行体制の強化を図る方策を検討中である。理事者の任期複数年制、有給制、弁護士事務局長制などいろいろな制度の提案が出ている。任期複数年制や有給制を単位弁護士会で実現した会はない。しかし、弁護士事務局長制度は福岡県弁護士会や第二東京弁護士会がかなりの経験をもっている。とにかく、いろいろな側面から執行体制を元気づける方策を用意、提案していきたいと考えている。
 もうひとつの問題は、建物の老朽化である。築後三〇年を経て、雨漏りも発生し、毎年多額の費用を投じてようやく維持できているのが、現会館である。建替えは、間近と考えなければならない。会員にも相当な負担となる問題である。建替えが必要なのは分かるが、どんな建物なのか、どこに建てるのか、何に使うのか、費用はどうするのか、大変な問題である。これを考えるよう、先日、会長から当委員会に諮問が出された。当委員会では、早速部会を設置し、近時会館の建替えを経験した東京、大阪など他会の経験も参考に素敵なプランをご提案できるように準備に入った。
 以上、当委員会の取り組みの一端をご紹介したが、当委員会の検討の結果は、会員の皆さんにも直接影響が及ぶことも多いことから、逐次委員会ニュースを発行し、その活動を紹介し、皆さんのご理解を頂きつつ、一方、皆さんのお知恵も拝借していきたいと考えている。
(総合改革委員会 事務局長 森和雄)

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