横浜弁護士会新聞

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2003年9月号(1)

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リーガルサービスセンター構想と弁護士会
 政府は、独立行政法人が運営するという「リーガルサービスセンター(LSC)構想」の具体化を進めるとしている。LSCは、各都道府県に、弁護士やADR機関(裁判以外の紛争解決機関)を紹介する窓口としての役割や公的刑事弁護・民事法律扶助を担うほか、消費者問題やいじめ相談などの業務を扱うものである。このLSC構想について、箕山洋二会長、須須木永一前日弁連副会長、山本安志法律扶助協会神奈川県支部副支部長の意見を掲載する。
LSCに対して想うこと
会長  箕山 洋二
 LSCとは何だろう。政府はまた司法ネットと言っているし、始まる前から二つ名を持っているし、何だか恐いと思っている会員がまだ相当数いるようである。
 特に中小規模の会においては、多くの会員がそう思っているようだ。日弁連は担当副会長を全国に派遣して、説明会を行っている。日弁連の理事会においても、多くの時間を割いてLSCについての説明を行っている。日弁連ニュースbR3は、そういった多くの会員の疑問に答えるため、大川日弁連事務総長が法務省と協議し、日弁連の疑問に法務省が回答したものを掲載している。
 法務省の回答に疑問を持ち、グループとして反対の意思表明を出されている会員もいるが、前掲日弁連ニュースをぜひ読んで頂きたいと思っている。
 LSCの制度は全く新しい制度であるだけでなく、構想が発表されてから、何分にも余り日が経過していない事が、会員の理解を得られていない大きな原因となっている。
 しかし、LSCは司法アクセス障害解消のためのシステムであり、地裁本庁所在地に拠点が設置されるだけでなく、ゼロワン地域にも、地域の要望を配慮して設置されることになる。
 神奈川県内で法律相談センターがなく、仮に設置しても大幅な赤字が見込まれる地区には、拠点の設置が検討されることになる。このことが、県民及び当会にとって有益なことは言うまでもない。
 しかし、LSCの運営により弁護士の自主性・独立性に僅かでも悪影響を与えるようなものであってはならない。日弁連が予てから主張しているように、LSCは、弁護士・弁護士会の協力がなければ運営することは出来ない。弁護士・弁護士会がLSCを利用するぐらいの気概を持って、運営に取り組み、LSCにおいて主要な地位を占めるようになる必要がある。
 そうすることにより、弁護士会とLSCは両立し、弁護士・弁護士会の自主性・独立性は保たれることになる。日弁連は、支部長や事務局長も当然弁護士が担うべき地位であり、信頼と実績により、その地位を占める必要がある旨述べている。当会としても信頼と実績を積み、より良い司法を目指し、国民のための制度としてのLSCを作り上げる決意と覚悟を持って臨みたいと考えている。
リーガルサービスセンターの課題
会員  須須木 永一
 司法制度改革の動きが激しいことは皆様方は既にご承知と思います。そのための記事が出る頃には、内容が現状とは遠く隔たっているかもしれませんが、その点はご容赦願います。
 さて、日弁連が描いているLSCとはどのようなものでしょうか。まず一般的な事業内容としては、(1)司法アクセス窓口(2)民事法律扶助(3)公的弁護制度運営(4)弁護士過疎地対策等が考えられます。しかしもう一つ重要な事業を視野に入れる必要があるのではないでしょうか。それは、地方の実情に応じた新たな独自事業です。例えば、中小・零細企業の多い地域、外国人が多く居住している地域、農・漁村地域など地域によって司法への需要とその内容が大きく異なっているため、これに対応する必要があるからです。司法制度改革が全国隅々において誰もが司法のサービスを受けられる制度を目指している以上当然のことといえましょう。そしてこの事業の担い手こそ単位会であり、個々の弁護士であると日弁連は期待しています。ですからLSCの実現に向けて単位会と個々の弁護士は力を合わせ大いに努力すべきものと思います。
 つぎにLSCが充実した事業を行うためには、十分な財源確保が必要です。現在民事扶助事件については、慢性的な資金不足のため、毎年期半ばで事業が打ち切られていますし、国選弁護についても低額報酬の固定化により刑事弁護離れが生じています。このほか被疑者段階からの公的弁護などの事業が加われば、相当額の公的資金の手当がますます必要となるわけです。この資金を確保する為には、今後は弁護士・弁護士会ばかりでなくさらには市民から国への働きかけ、国民運動が重要となってくることでしょう。
 最後に運営主体とそれにかかわる問題です。運営主体としては、独立行政法人が最有力視されていますが、それによる弊害については最も注意を要します。すなわち、国が資金提供をし、法務省が運営主体を設置・管理するのですから、個々の弁護活動が国から何らかの制約を受けてしまうのではないかということです。運営主体により提供される弁護活動には当然、処分取消請求・国家賠償訴訟・刑事手続など国を相手にした裁判その他の手続が含まれます。これらの活動は特に国からの独立性が完全に確保されなければ十分な弁護活動が出来ないことは明らかです。これからの司法のあり方にかかわる重要問題として、私たちは注目していかなければならないと思います。
 以上LSCに関するいくつかの課題についてお話ししましたが、LSCは司法制度改革の根幹とも言われています。私どもはより良いLSCが構築されるよう注目し積極的に関与していくべきものと考えます。どうか横浜弁護士会の皆様方にはご協力をお願い申し上げる次第です。
 なお、八月一日のNICHIBENREN Newsにリーガルサービスセンターの具体的構想「法務省、日弁連の疑問に応える」との記事が掲載されました。どうぞご覧ください。
私は積極論を支持したい
会員  山本 安志
 「リーガルサービスセンター」構想について、法律扶助協会の全国の支部では慎重論が根強い。しかし、扶助協会本部と東京都支部は、積極的に参加していこうという姿勢を示している。
 慎重論は、(1)ただでさえ予算措置の難しい時期に、このような窓口に配置する新たな費用をどうやって捻出するのか、(2)運営主体の自主性、主務大臣や国からの独立性の制度保障は難しいのではないかとの疑問が出され、これに対する明確な回答がない限り慎重に考えるべきであるとする。
 積極論は、現在の指定法人では、補助金交付に頼らざるを得ないが、補助金交付は今後現状維持か減少は必至である。現在、補助金予算が十分確保されていないため、扶助の申し込み件数を制限している異常な状態にある。これを脱却するには、独立行政法人として、国が直接運営する方式もやむを得ない。国が直接運営するとしても、その中心は弁護士会であり、これまでと同様の運営の独自性を維持出来る。
 私は、積極論を支持したい。現在、救済を求めてきている人を少しでも救済できるなら、その方式に賭けてみたいと考えるからである。

恒例の法曹懇談会 若手会員の姿も多く
 恒例の法曹懇談会(当番庁横浜地検)が7月11日開催された。横浜地裁から15名、横浜家裁から2名、横浜地検から19名、当会から48名が出席した。

山ゆり
 ずいぶんと前に姉が「バウリンガル」という玩具を買ってきた。御存知の方も多いかもしれないが、一時期話題になった犬の気持ち翻訳機である。この玩具は、犬の音声やしぐさを解析し、翻訳機に犬の気持ちが表示される仕組みである
早速、我が家の愛犬、柴犬リュウタの首輪に送信マイクを取り付け、人間の方は本体の翻訳機を持って身構えた
しかし、どうも時に予想に反する結果がでる。私から見ると、リュウタは嬉しそうな顔をして近づいてきているように思えるのだが、解析結果には「怒ってるぞ」との表示。そんな時、不思議なもので、リュウタの気持ちを知らなければ、そのままギュッと抱きしめるところが、翻訳機で気持ちを知ってしまうと、嫌がっているのかと思い躊躇してしまう
ペットの場合、実は言葉が通じないところがいいのかもしれない。ペットと人間は、気持ちが通じ合っているときも多いにあるだろうが、人間が自分の都合のいいようにペットの気持ちを解釈をしている時もあるだろう。しかし、それだからこそ、ペットからは拒絶のない安らぎを得られるのではないだろうか
言葉で理解し合えるはずの人間同士に争いが生じ、言葉の通じないペットに癒されるとはおかしなものだ。いや、人間同士は言葉が通じるからこそ争いが生じるのか イラスト
ちなみに「バウリンガル」は我が家の片隅に置かれ、私はリュウタの気持ちを勝手に想像しながら抱きしめている。さて、迷惑でないとよいのであるが。
(大河内万紀子)

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