横浜弁護士会新聞

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2003年11月号(2)

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弁護士会に犯罪被害者 救済活動を期待
 九月二九日、横浜地方検察庁に着任された鈴木芳夫検事正にお話しを伺いました。
−経歴等をお聞かせください
 出身は東京で、中央大学を卒業しました。修習期は二二期です。家族は妻と子供二人です。趣味はスポーツ観戦で、なかでもサッカーが好きです。
−法曹の中でも検察官になられたのはどのような理由からですか
 悪しきをくじき、弱い者や犯罪にあった人々の助けになりたいと思ったからです。
−検察官として心掛けていらっしゃることやモットーといったものはありますか
 被害者や証人などの事件関係者に対する思いやりを忘れてはいけない、その一人一人の人生にかかわるものであることを忘れずに事件処理をしていくということです。
−事件の捜査・刑事裁判以外に、経験された仕事はありますか
 法務省訴務局付として、原発訴訟や道路や空港などの建設の差止訴訟、租税に関する訴訟などを担当しました。
 また、三六期から三九期の司法研修所の教官をやりました。
−現在司法制度改革が活発に議論され、刑事裁判も裁判員制度の導入がほぼ確実になるなど大きな変化に直面していますが、新しい刑事裁判のあり方についてどのようにお考えですか
 国民が参加をしますので、国民にわかりやすく、迅速かつ充実した刑事裁判が求められます。また従来の書面中心の裁判ではなく、口頭弁論能力が問われるようになるでしょう。
−司法制度改革という視点から、今後検察庁にはどのような変化、改革が必要だとお考えですか
 今年、法務省総合研究所では、模擬法廷を作り、若手の検事を対象に、模擬裁判を実施して、先輩の検事がそれを講評するという研修を始めました。
 また、プロのアナウンサーを講師としてお招きし、文章を口頭でわかりやすく説明するという訓練なども行っています。
−弁護士に対しては、どのようなことを要望、あるいは期待されていますか
 当番弁護士や付添人制度はかなり定着したものと思います。今後は犯罪被害者の救済に向けた活動を広げて充実させていただきたいと思います。
−最後に今後の抱負をお聞かせください
 一つ一つの事件を大切に捜査・処理することにより、国民の信頼に応えていきたいと思います。
 (インタビュアー 副会長 篠崎百合子 広報委員 岩田 恭子)

あっせん・仲裁センター 和解に執行力
日弁連情報問題対策委員長
森田 明 会員
−情報問題対策委員会はどんな活動をしているのですか
 情報公開と個人情報保護に関することがらです。情報公開法制定に当たっては議員への働きかけなど積極的な立法運動をしましたが、ここ数年は個人情報保護関係が主です。特に住基ネットの問題と個人情報保護法への取り組みに追われました。民訴法の文書提出命令のことも当委員会の所管です。去年の人権大会では当委員会のメンバーが中心となって、住基ネット問題のシンポジウムを行いました。その内容やその後の意見書なども入れて、「プライバシーがなくなる日」(明石書店)をこの八月に出版しました。五五〇頁で二五〇〇円とお得ですので…
−はい、買わせていただきます。ところで、いつから委員長をされているのですか
 二〇〇一年度からです。私の前は東弁の土生照子先生がずっと委員長をされていました。土生先生はカリスマ的な方でしたが体調を崩され急遽私にお鉢が回ってきました。貫禄不足ながらマイペースでやってきました。今期で引退の予定です。
−今後の弁護士会及び当会のありかたなどについて感じていることがありましたら
 住基ネット問題にかかわってきて感じたのは、地方自治体に対する弁護士のサポートがまだまだ不十分だということです。自治体の主体的な法解釈や政策判断に弁護士がもっと関与すべきです。情報公開条例の審査会などにも今後より専門性の高い弁護士が必要です。それには弁護士会とともに法科大学院の役割も大きいと思います。
 内部的には、職員の役割の大きさに驚きました。日弁連の職員は、会議の議題案、資料、議事録の作成から官庁との折衝、国会議員との日程調整まで多彩かつ質の高い仕事をしています。単位会でも職員の活躍なしでは会活動が世間のペースに追いつけなくなるでしょう。異論もありましょうが、一定の負担は甘受しても優秀な職員を育てる必要があります。
−お忙しいところありがとうございました
(インタビュアー 須山 園子会員)

「ヤミ金」「商工ローン」はこわくない 多重債務問題研修会開かれる
 九月一〇日午後二時より、開港記念会館にて多重債務問題の研修会が開催された。ヤミ金問題につき当会の小野仁司会員、小林秀俊会員と事務職員の奥村武彦氏が講師を担当し、続いて商工ローン問題につき茆原洋子会員が講演を行った。「ヤミ金」問題に関心を持った会員が熱心に聞き入っていた。

人権侵害は許さない 商工ローンの現状と課題
会員  茆原 洋子
 日栄(現口プロ)の取引は、出資法の上限に近い高金利を手形決済によって取立てる仕組です。顧客は倒産を避け、保証人に迷惑をかけないためには、金策しながらでも手形を決済し続けなければなりません。そのため、サラ金やヤミ金からで借りてでも保証人には迷惑をかけまいとする人も多いのが実情です。それでもついに追いつかなくなると、生命保険で払えといわれ、そうするしか家族と保証人を救う道はない、と思って自殺する方が多発しました。年間七九四〇人もの人が経済的理由によって自殺する国になってしまっているのです。人権侵害の極みというしかありません。全国の倒産の実に三分の一が、口プロの顧客でした。
 本来、このような被害を出しながら、普通のサラ金以上の利息を正当化しようとすることは、非常識なことでした。むしろ、顧客と共存しない事業のあり方に対する厳しい規制及び制裁こそが必要だったはずです。ところが、全国の多数の裁判所は、口プロの詭弁によって煙に巻かれ、利息制限法が強行法規であることを忘れていました。
 これに対して、最高裁は、七月と九月に各小法廷の、裁判官の全員一致で、口プロの利息制限法の潜脱を許さず、制限超過支払の即時充当を認め、保証料等をみなし利息と判断しました。
 口プロに対する最高裁訴訟弁護団には、当会会員が一三〇名も参加して下さり、感謝いたします。
 今後の課題は、(1)手形による利息制限法超過利息の取立ての禁止(2)利息制限法上限利率の引き下げ(3)出資法の上限利率の引き下げ(4)貸金業規制法四三条の廃止(5)公正証書の作成手続き及び執行手続改善等です。また、商工ファンド(現SFCG)は利息制限法をこえた差押等をしているので保証人等の救済と再度行政処分申立が急務です。神奈川県内の貸金業者による制限超過利息の強制回収に対する対策も大切です。最高裁と監督庁に提出する被害アンケートにご協力下さい。高金利の規制は、生存権と経済活性化のため必要です。

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