本部支部の財政の一本化、予算決算制度の統一化など |
1、支部問題に関する問題提起 |
従前より、支部の位置づけを横浜弁護士会の会規会則上明確にすべきであるとの意見があり、平成一二年度の執行部の強い要請のもとに機構改革推進本部において、支部部会を設置し、支部の位置付けを含め、支部会規等の制定に向けて具体的検討がなされてきた。 |
基本的視点は、弁護士会の業務の中で重要業務とされる県民サービスと会員サービスの業務について、可能な限り全県民・全弁護士が平等に利益を受け負担を分け合うものでなければならず、これは本部・支部とも同等であるべきであり、そのためには本部・支部の関係、支部相互の関係をいかに整合的に位置づけるべきかというものであった。 |
特に、支部職員の人件費を本部が負担している現状や、地裁小田原支部の庁舎建替問題で表面化した将来の支部事務所の確保と費用負担の問題、さらに起こりうる支部関連経費の増大を考えるとき、会全体の融和性、一体性を促進するためにも本部支部の財政の一体化、予算決算制度の統一化などの必要性が論議強調された。 |
こうした議論の末、機構改革推進本部支部部会の案がまとまり、平成一二年度末の機構改革推進本部全体委員会において、支部の位置づけに関する会則改正案、会規案(以下、本部案と称する)が採択され、支部側の意見回答が求められた。 |
ところで、この本部案においては、支部会費等の撤廃が明記されている。この点に関して、支部側の強い反発がある。即ち、支部には、市民がアクセスしやすい弁護士会の体制、市民サービスの質と量の確保と言う観点から、地元の弁護士を中心とした支部運営を支部の基本形態とする考え方が底流にあり、その財政的裏付けとして支部独自の収入を確保すべきとの基本的な認識がある。その支部に対して支部会費等の撤廃を求め了解を得ることは容易なことではなく、会内合意の形成にはかなりの時間と困難が予想されている。 |
2、支部側の対応 |
機構改革推進本部の動きを見ながら、平成一二年一二月より、四支部統一の検討委員会が設置され、ほぼ毎月一度の会合を経て、約一年の時間をかけ、平成一三年一一月八日、支部の位置づけに関する四支部統一の会則改正案、会規案(以下、四支部統一案と称する)が採択され、各支部の承認を経て弁護士会に提出された。 |
本部案の検討の過程で、四支部がまず問題としたのは、支部の実情が十分に認識されていないと言うことである。つまり、支部問題の基本が本部支部間、支部相互間の公平化、平等化と言う点にあるとすれば、本部サイドのみならず支部サイドから見た公平化、平等化と言う点も併せて考慮されるべきであり、本部案では、この点の分析が十分に行われていないと言うのである。 |
ただし、本部のみならず各支部においても他支部の実情はよく見えていない。従って四支部としても、まず各支部の実態の把握に努めるべきであり、各支部でどのような活動が行われ、それに対応する収入としてどのようなものがあり、どのような形で支出がなされているのか、まずは情報を交換し合い、お互いに共通した認識を持つべきであるということで意識統一がなされた。 |
そして各支部が情報交換を行う中で、支部の財政の特徴と思われるものがほのかに見えてきた。即ち、支部においては事務経費その他の一般管理費の割合が相対的に低く(一二〜二八%)、ほとんどが支部内外の各会合に関する懇親会関係の費用であり(七二〜八八%)、基本的には参加者が費用を各自負担する形で収支が賄われていると言うことである。これに対し、支部会費等の収入は、比較的少額の一般管理費関係の支払いに充てられるとともに、懇親会費用の補助的な財源として機能するに止まっている。 |
これらの費用のうち、懇親会関係の参加費用を予算化し本部からの交付金を得て本部会計に組み込むことは論外であろう。他方、一般管理費的な費用を予算化し本部会計に組み込むことも可能であろうが些少であり、支部独自の財源である支部会費等からの支弁を排除するほどには重要性が乏しい。 |
このような状況下において、支部会費等の収入を一律に禁じ本部からの交付金によって代替させることは唐突であり、運用上にも無理が生じ得る。他面、強引な制度作りにより支部活動自体が危殆に瀕する恐れがある。 |
これに加えて、会員サービスの点においても支部には根強い不満がある。即ち、支部は、本部会館から遠く、本部事務局からの受益も本部会員に比べて極めて少なく、委員会への出席も困難で、本部で行われる研修にも容易に参加できないというハンデがある。 |
これらの支部側から見た問題意識や願望をもとに、ようやく四支部の意見が調整され、各支部の総会等によって承認された後、四支部の統一案が会に提出されるに至った。今後、総合改革委員会において、本部案、四支部統一案の総合的な検討がなされ、当会における支部制度の法制化に向けて、落着点を目指した大詰めの議論が展開される見通しである。 |
3、その他の問題 |
上記に関連し、本部支部間で懸案になっている事項として国選弁護人推薦手数料の問題がある。 |
国選弁護人推薦手数料は、従前より簡裁二〇〇〇円、地裁三〇〇〇円が徴収されていたところ、平成一三年度から簡裁六〇〇〇円、地裁八〇〇〇円に改定された。ところが、地裁支部の管轄地域では適用が除外されているために(国選弁護運営委員会規定附則第一条)、地裁支部の管轄事件を担当する支部会員について、各支部の対応がまちまちとなり(小田原、横須賀ではゼロ、川崎では一〇〇〇円、相模原では簡裁二〇〇〇円、地裁三〇〇〇円の手数料の納付が行われている)、同じ国選事件を担当しながら、場所が違うと言うだけで、不公平ではないかという不満が会員間に伏在し問題を投げかけている。しかも支部において収受された手数料は専ら支部の収入を構成し本部には納付されない。 |
この点に関し、支部の側から次のような指摘がある。即ち、約四割の国選事件を支部の会員が担当しているが、支部は少人数につき、本部に比して負担が重く、国選事件の受任割合は本部に倍する状況にあり(平成一二年の受任会員一人当たりの国選事件数は、本部では年間一人あたり六・八件のところ、小田原で一四・七人、川崎で一五・八件、横須賀で九・八件、相模原で一〇・六件)配点事務も、裁判所の一本吊りか、支部事務局の電話による受任要請の程度であり、弁護士会から受けるサービスも本部に比して圧倒的に少ないという事実である。 |
この問題は、本部支部を通じ国選弁護人推薦手数料の是非と言う問題とともに、支部問題の本質に深くかかわることがらであり、支部の法制化という基本的命題の解決なくしては解決のつかないことがらである。その意味からも当会における支部制度の法制化が急がれている。 |