横浜弁護士会新聞

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2000年5月号(2)

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 この春、研修が熱かった。相次ぐ重要新制度の創設やホットな社会問題に対応すべく、会員研修会が目白押しの日程で執り行われ、いずれも高い関心を集めた。三月上旬に、一気に開催された三つの研修会の模様をここに紹介する。
三月一日から定期借家制度導入
 三月三日、横浜弁護士会館において、三月一日より施行された定期借家制度に関する研修が行なわれた。「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」の制定による借地借家制度に関する大きな改正ということも有り、会場からあふれんばかりの会員が出席して、講師第一東京弁護士会の吉田修平弁護士の解説に熱心に耳を傾けていた。
 研修に参加できなかった会員のため、研修の内容を要約すると、定期借家制度のポイントは次のとおりである。借家契約に関する問題は相談や事件の多くを占めている。法律相談等に際して弁護過誤なきように十分注意されたい。
1定期借家契約の創設
 更新のない定期借家契約を認めると共に二○年を超える賃貸借契約を認める。
2書面契約と説明義務
 定期借家は公正証書などの書面による契約でないと無効となる。建物の賃貸人はあらかじめ借家人に対し「契約の更新がなく、契約期間満了に伴い賃貸借が終了する」旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
3通知期間
 契約期間が一年以上の場合、賃貸人は借家人に対して、期間満了の一年前から遅くとも六カ月前までに建物賃貸借が終了する旨の通知をしなければその終了を借家人に対抗できない。通知期間経過後に通知した場合は通知の日から六カ月を経過すれば賃貸借の終了を対抗できる。
4借家人の中途解約
 床面積が二○○未満の居住用の建物に限り、借家人に転勤、療養、親族の介護などやむをえない事情が出来た場合には、特約がなくとも契約期間中に賃貸人に解約の申し入れをすることができる。この場合には解約の申し入れより一カ月で終了する。
5従前の借家について
 本法施行前の建物賃貸借については更新の際に正当事由を求める従前の例による。
6定期借家契約への切替え
 旧法時代の居住用建物賃貸借を合意により終了し引き続き同じ建物を借りるために定期借家制度へ切り替えることは認められない。
(会員 左部 明宏) 
 三月九日、メルパルクYOKOHAMAにて、二人の外部講師を迎え新成年後見法についての会員研修会が開かれた。まだまだ薄ら寒い日で、会場も少々遠い所であったが、四月一日からの施行目前で会員の関心も高く、参加者数一七五名と大盛況であった。
 初めに第二東京弁護士会の更田義彦弁護士により、「新しい成年後見法と弁護士実務」と題した講演が行なわれた。冒頭、新成年後見法はノーマライゼーションの理念の下、自己決定を尊重し、残存能力を活用しながら本人の保護を図ることを目的としたものであると述べ、基本理念を根底にして、より良い実務を実現していくことが何よりも大切であると訴えた。そして同弁護士は、新制度の要点として、(1)補助の制度の新設、(2)任意後見制度の新設、(3)戸籍制度の改正の三点を挙げた。
 補助制度は従来より保護の対象を広げるものであるが、該当性判断は事案の性質ごとに異なり、まさに今後の実務にかかっている。任意後見制度は本人が予め自己の後見体制を決定できる制度で、実際に後見が必要となった時点で公的機関の監督を伴わせる点が特色である。戸籍については、従来の戸籍記載を廃止し、後見登記制度を採用することでより利用しやすい制度とされたものである。
 以上のような説明をした後、同弁護士は、新制度はまさに司法改革の一環であり、今後は弁護士ならではの役割の確立に向けた取り組みが必要であると結んだ。
 続いて、横浜・尾上町公証役場の稲守孝夫公証人から、改正の要点の一つである「任意後見契約について」の講演が行なわれた。公正証書によるべきとされた任意後見契約について、その方式等につき実務に即して説明をし、また委任者の能力に疑義がある場合の意外と知られていない公証実務に言及するなど、有意義な話があった。
 会員からの質疑も活発で、外の寒さは嘘のように熱気を帯びたまま、研修会の幕は閉じられた。
(会員 鈴木 野枝) 
業者と弁護士の知恵比べ
 商工ローン事件研修会開かれる。
 さる三月一日、午後四時より横浜弁護士会五階大会議室で、法律相談運営委員会主催の研修会『商工ローン案件の事件処理』が開かれた。当日は九七名の会員が参加し、この間の不況と貸し渋りのなかでの商工ローン被害の増加、社会問題化に伴い、各会員も少なからず商工ローン案件に苦心している状況下、関心の高さが伺われた。
 講師は日英・商工ファンド対策全国弁護団員である私が務めさせて頂き、商工ローン案件と言えども、受任通知、利息制限法による元本の確定、交渉手続の阻止、手形等の扱い、保証人のガード等の商工ローン特有の問題についてきちんと対処すればよいこと、そのノウハウ等も全国レベルで交流が進み日進月歩であり、根保証や保証料等の問題も裁判所がその実態を知るに連れ、借り手側の勝訴判決が続々とでていること等を報告させて頂いた。その後に参加した会員から色々な具体的問題点や、扱っている事件についての熱心な質問がだされた。
 商工ローン案件は、業者と弁護士の知恵比べという側面が強く、情報の交流が大きな解決の力となる。今回の研修会等も契機となって今後も会内、会員間での情報交換が活発になり、増える商工ローン案件に、全ての会員が少なからず取組み、全体として解決レベルが向上していくことを願う次第である。
 (会員 呉東 正彦) 
今後の研修会情報
1.5/17(水)14:00〜 弁護士会館5階
「新入会員実務研修会」
2.5/25(木)18:00〜 弁護士会館5階
「犯罪被害者支援活動の学習会」
いずれも詳細は弁護士会事務局まで


 三月二二日、弁護士会館大会議室で、臨時総会が開催された。
 冒頭岡本会長の開会宣言、挨拶の後、議長に村瀬統一会員、副議長に内田邦彦会員が指名された。
 平成一一年度会務報告の後、以下の議案が審議され、いずれも賛成多数で、提案どおり可決された。
 第1号議案 横浜弁護士会神奈川住宅紛争審査会設置会規制定の件
   平成一一年六月二三日公布、本年四月一日施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づき、当会が同法六二条による「指定住宅紛争処理機関」の指名を受けるための会規案である。
   当会は、本年九月に建設大臣の指定を受けて、右審査会の業務を開始する予定である。
 第2号議案 横浜弁護士会館規則一部改正の件
   総合法律相談センターからの会館維持運営資金の貸付を解消するための改正である。
 第3号議案 業務上の預り金の取扱いに関する会規制定の件
   弁護士による不祥事の防止及び信用保持のために日弁連の要請を受けて制定されるものである。
   今後会員は、一事件または一依頼者に付き預り金の合計額が五○万円以上で、かつ、金融機関に一四営業日以上保管するときは、預り金の保管のみを目的とする口座を開設し、そこに保管しなければならなくなる。また、一定の事由があり、当会が必要と認めるときは、当会は会員に預り金の保管及び明細につき照会でき、会員は書面で回答する義務を負う。
 第4号議案 横浜弁護士会弁護士業務妨害対策支援会規制定の件
   弁護士業務につき妨害対策支援制度の確立のために、委員会の職務、支援弁護士制度、費用の決定・支給等について定める。
 第5号議案 横浜弁護士会調査室会規制定の件
   執行体制の強化・充実及び会員サービスの向上を目的として、当会の法規の管理、二三条の二照会その他専門的事項の調査・処理を職務として、嘱託三名の弁護士による調査室を設置するものである。
   最後に、綱紀委員二名が選任された。

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