隣接業種を日弁連特別会員に |
会員 高橋理一郎 |
社会が複雑化、高度化、国際化するに伴い、社会の各分野において、法的ルールに従った公正で透明な方法による問題解決がますます求められるようになる。こうした法の支配の実現にむけて、弁護士が果たすべき役割には、大きく分けて裁判と裁判外の二つの領域がある。近時の司法改革論議では、裁判機能の強化拡大のみならずその周辺領域の改革も課題とされ、その中で、一部法律事務が重なり合っている司法書士、税理士等隣接業種と弁護士職との関係のあり方が問題とされている。(自民党司法制度特別調査会報告「二一世紀の司法の確かな指針」等) |
この隣接業種との関係については、隣接業種の権限拡大(特に裁判業務)と弁護士職との収支共同あるいは法人化が唱えられている。ここでは、紙幅の都合上、もっぱら後者の問題点について述べるが、前者についても一部共通する問題である。 |
1.弁護士には、独立性が制度的に保障されているが、隣接業種にはこのような制度が認められていない。従って、隣接業種に対する監督権が共同関係を介して弁護士にも及ぶおそれがあり、弁護士の独立性が害されるおそれがある。 |
2.弁護士は、すべての第三者から不当に影響を受けることなく独立していなければならない(弁護士倫理三条)。また、依頼者からもある程度独立して法と弁護士としての良心にしたがって事件を解決しなければならない職責がある(同一八条)し、事務所の他の構成員との関係においても独立性が保障されている(同二条)。しかし、隣接業種にはこのような保障が全く認められていないか、あるいは独立性の基準が低い。従って、事務所構成員が各自の独立性の基準で行動する結果、弁護士の依頼者からの独立性,事務所構成員からの独立性が損なわれる可能性がある。 |
3.弁護士の職務を遂行するうえで重要な守秘義務(弁護士法二三条、弁護士倫理二〇条)、利益相反の回避義務(弁護士倫理二五条ないし二七条)等の職業倫理が各隣接業種で異なるため、事務所構成員の行動基準が錯綜し、ひいては弁護士の職業倫理が守られなくなるおそれがある。 |
4.共同経営という関係から、非弁護士が弁護士業務に関与し、あるいは非弁護士の影響力の結果、依頼者が非弁護士のサービスを弁護士のサービスと誤認・混同してしまう弊害がおこる可能性がある。といったことが指摘できる。 |
他面、複雑多様化する経済社会において、法的問題や紛争処理を的確かつ迅速に処理するためには他の隣接業種との密接な協働関係が望まれるし、権限が部分的に重複する複数の法律関係職が別個に存在するという事態も紛らわしく、不便である。私は、法律事務はできるだけ弁護士職が一元的に取り扱うことが国民の利益に適うと考えている。 |
しかし、その為には弁護士による法律事務の独占が実質的に機能し、質的にも量的にも社会のあらゆる法的ニーズに十分対応できることを実証しなければならないという問題がある。また、質・量ともに専門性が求められている現状では、こうした隣接専門職の人的資源をいかに有効に活用するかを含めた議論も必要である。従って、日弁連としては、こうした問題を克服するためには、隣接業種との職域論争ではなく、例えば、弁護士との共同関係にある隣接業種に対しては、その専門領域に限定してではあるが、日弁連の特別会員とし、弁護士と同等の扱いをするといった大胆な対策案を提示する必要があるのではなかろうか。そうでなければ、法律職の多元制を許し、ひいては国民の利益を損なう結果になるのではないかと危惧するものである。 |
「横浜弁護士会速報」が必要 |
第一三回常議員会は、周辺事態法案に関する会長声明について、文案修正についての理事者一任を取り付け、事務局コンピューターシステム導入とホームページ開設の承認を得て、大団円で終了しました。 |
人事案件がスムーズに |
今年の常議員会は次のような特徴があったと思います。まず、出席率は、七割と好調でした。次に、人事案件が人事委員会の原案作成で初年度とは思えない程スムーズに審議されたことです。人事委員会の設置は、ここ数年、常議員会の改革のテーマでした。これが無難に実施されたことは評価されます。しかも、神奈川県建築紛争審査会の長期委員の交代などみるべき改革もありました。さらに、委員会通則による会員の委員会の適正配置を図るため、人事委員会の今後の一層の活動が期待されるところです。常議員会も、今後人事委員会の原案をしっかりチェックすることが求められてくるのもと思います。 |
機構改革の断行に寛容 |
次に、弁護士会内部の機構・組織等改革に伴う規則等の改訂が断行されたことです。その最たるものは公益活動の義務化と委員会通則の制定ですが、その他にも市民窓口の設置、刑弁センターの委員会派遣制度の導入、事務局コンピューターシステム導入、ホームページ開設等続きました。それに加え、交代する事務局長の人選、新規職員の増加による事務局体制の整備と、パート職員の頻繁な交代、就業規則の一部改訂など弁護士会の内部改革は息をつく暇もない状態でした。常議員会は、これら難問に委員会通則を除いて比較的寛容だったように思えます。執行部がやりたいと言っているのだから暖かく見守ろうとの理由と思えますが、私は、もっと議論を尽くしてほしいと思った場面もありました。 |
会長声明等には厳格 |
さらに、会長声明、人権救済申立、意見書の数は、例年を遙かに超えるものでした。そして、この分野において、常議員の意見が活発に闘わされたと思います。非常に常識的な対応を求める意見、批判する意見など活発で、執行部提案がしばしば修正されることもありました。ただ、あらゆる問題が提起されるので、消化不十分な場面が懸念されることもあり、今後の課題になるものと思います。 |
横浜弁護士会速報が必要 |
最後に、常議員会の議論を会員にいかに早く伝えるかです。これについて、今年は、副議長名で「常議員会だより」を発行し、常議員にまず結論と議論の雰囲気を伝えるようしました。日弁連では、「日弁連速報」を出していますので、横浜弁護士会でも速報を出すべきかと思います。その媒体として、ホームページの会員専用ページやメーリングリストを活用すれば、わずかな費用で共通の理解が得られると思います。しかし、問題は、これら資料に興味を持ってもらい、全員が参加できる状態を作り出せるかにかかっていると思います。公益活動の義務化と委員会通則の制定は、全会員による活動を目指しているのであり、今年の常議員会・総会で制定したことを誇りにできるよう今後その整備を期待したいと思います。(副議長 山本 安志) |