横浜弁護士会新聞

back

2000年2月号(1)

next
「司法改革」に五三四名が参加
 平成一一年一二月二日、第二六回県民集会が開催された。会場となった関内ホールには、昨年の県民集会を上回る五三四名が集まり、熱気あふれる集会となった。集会は二部構成で、第一部は横浜弁護士会人権賞贈呈式、第二部は「あなたが変える日本の裁判〜司法改革はあなたが主役〜」をテーマにショートストーリーとパネルディスカッションが行われた。
第四回横浜弁護士会人権賞贈呈式 
 今回の人権賞は「神奈川県インドシナ難民定住援助協会」が受賞した。同協会は、昭和六一年以降、インドシナ難民定住者を対象に日本語教室や法律相談・生活相談などを行っている。そして、地域における定住者の人間関係を円滑にし、自立した生活を送れるよう県内各所でサポート活動をしており、外国人に対する幅広い援助活動が受賞の理由となった。
 受賞の挨拶に立った同協会会長の櫻井ひろ子さんは、鮮やかなベトナムの民族衣装「アオザイ」に身を包んで登壇した。そして、人材難・資金難や定住者の高齢化、民族性の違いに基づく地域住民との摩擦といった問題点にも触れながら、日本人の方から積極的に文化・習慣の違いを知り、認め合うことが必要だと集会参加者に呼びかけた。
 また、櫻井さんは、贈呈式後のインタビューでも、定住者の自立を促進するには国及び地方自治体レベルの援助が必要だが、地域社会への橋渡し役として「言いたいけど言えない彼らのために活動したい」と述べていた。そして、日本の法律や社会制度を理解していない定住者には法律相談が極めて重要であるとして、弁護士にも協力を呼び掛けていた。
問題提起はショートストーリーで
 第二部は当会会員の出演による寸劇で幕を開け、民事事件の法廷や裁判官室を舞台にプロ顔負けの熱演で会場を大いに沸かせた。
 その中では、準備書面のやりとりと期日の決定で終わる弁論手続や、事件に追われ、処理件数を気にする裁判官、若手裁判官のマニュアル偏重、一般社会と隔絶された裁判官の生活など、裁判制度や裁判官の実情について問題提起が行われた。
 いささか誇張はあったようだが、幕間にはバスガイド?に扮した芳野直子会員の解説があり、一般の参加者にも分かりやすく、会場を和ませた。
パネルディスカッション
 続いてはパネリストによる対談である。パネリストは、弁護士・元裁判官の梶田英雄さん、弁護士・元裁判官の田川和幸さん、神戸大学教授の宮澤節生さん、ジャーナリストの江川紹子さん。
 まず、「裁判ウォッチング市民の会」代表から法廷傍聴の感想などが述べられた後、各パネリストから司法改革について発言があった。
 発言は多岐に渡るので要約すると、梶田さんと田川さんは現行のキャリアシステムを変革する必要を指摘し、宮澤教授は裁判官の養成・採用・人事の面で変革する必要があるほか、弁護士も自己改革が必要であると述べていた。
 江川さんは、良いと思った裁判官の例として、訴訟指揮が分かりやすい裁判官、被告人に丁寧に説明する裁判官、人を裁くことへの苦悩を感じさせる裁判官を挙げるとともに、開かれた裁判所にするには、裁判所に対する意見を聞く機会と機関を設けるべきだし、裁判官を批判しないマスコミの意識も変えるべきだと述べた。
 また、パネリストの発言の合間には、「裁判官ネットワーク」の仲戸川隆人裁判官から忙しすぎる裁判官の現状について報告があった。仲戸川さんは、司法の機能を充実させ、開かれた裁判所にするために、裁判官から情報を発信することと、市民が裁判にどう参加し、市民の英知をどう生かすか考えるべきだと述べ、会場から盛大な拍手を受けていた。
 そして、質疑応答の後、杉井厳一会員(日弁連司法改革推進センター事務局長)から現在の日弁連の取り組みについて報告があり、最後に山下光県民集会実行委員長が挨拶して閉会となった。
みんなで変えよう日本の裁判
 予定より進行が遅れ、会場からの質問を十分に受けられなかったのは残念だったが、特筆すべきなのは、司法改革というテーマに一般の参加者だけで約四〇〇名が参加したという事実である。これは司法改革に対する市民の関心の高さを示すものであり、このような市民の司法改革への熱意は決しておろそかにしてはならない。これは我々司法に携わる者すべての責務である。

 日弁連臨時総会が平成一一年一二月一六日「クレオ」において開催された。 
 主たる議案は(1)司法制度改革審議会及び(2)弁護士過疎・偏在の各対策のために、いずれも月額一、〇〇〇円合計二、〇〇〇円の特別会費を徴収するというものであった。
 (1)は既に実質的審議がスタートしている内閣の司法制度改革審議会に対応し、日弁連として様々な運動を実施し(執行部と会員とが意見交換を行う全国キャラバン隊の派遣、日弁連速報・審議会版の発行など)、また人的体制を構築するために(審議会事務局に二名の会員を派遣、九名の非常勤嘱託を採用など)、平成一二年一月から同一三年七月まで、特別会費を徴収するというものである。
 (2)は弁護士過疎・偏在地域に公設事務所・法律相談センターを設置・維持するなどして、弁護士の過疎・偏在地域を解消するための活動費用にあてるため、平成一二年一月から同一六年一二月まで、同じく月額一、〇〇〇円を徴収するというものである。
 四時間以上にわたる白熱した質疑討論の末、いずれの議案も圧倒的多数で承認可決された(これにより、一月から当会会費を含め月額三六、七〇〇円となりましたのでご注意下さい)。
(副会長 佐藤 修身) 

山ゆり
 ある土曜日、当番で「今すぐ保釈して。」という事件を受任した
月曜日に被告人の夫と面会し身柄引受書を準備、火曜日に保釈申請、水曜日裁判官と面会。権利保釈は無理とのこと。すぐさま裁量保釈を求める理由を補完すると述べ、木曜日再度夫と面会し上申書を作成、被告人に接見して、保釈は翌週にずれ込むかもと説明した
被告人は一応納得したものの、ニヤッと笑って「どうしてすぐ保釈されないの、先生の腕が悪いんじゃない。」と一言。込み上げる怒りを抑え「僕もがんばってんだよ。」とダイアナスマイルで接見を終えた
翌週月曜日夫に話すと「本音じゃないよー、許してやって。」とこれまたニヤニヤ。しょうがないなと思って同日裁判官に面会、三〇分説得して保釈許可を得、勾留先へ被告人を迎えに行った
彼女はすでに釈放手続中。私に気付いて、嬉しそうな笑顔を見せる。手続が終わると私の元に走ってきて、「先生ありがとう、先生よく頑張ってくれたよ。」その後彼女は、私の言うことも素直に聞いて公判に向け身辺整理を進めている
弁護士も何年かやると、色々な被告人との接触を経て、新人時代の刑事事件への情熱を失いそうになることもある。元被告人の家族から「先生、またやった。」と電話が入ってきて、空しさや絶望感を感じる時もある。しかし、今回、久しぶりに、新人時代によく感じた、人から喜ばれる喜びや、何とも言えない爽快感を感じた
何をしたくて弁護士になったか、何を感じたくてこの仕事を選んだか、初心忘れるべからずの弁護士三年目である。
(阿部 雅彦) 

▲ページTOPへ
戻る
内容一覧へ