横浜弁護士会新聞

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2000年1月号(2)

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法律相談センター事務局長 武井 共夫
 一一月一九日、当会会館五階において、法律相談センター主催の多重債務相談・処理についての研修会(クレサラ研修)が開かれ、会員一一〇名が参加した。
 一二月一日からクレ・サラセンターでの相談が正式に発足するのを控え、法律相談センターでは、新たにクレサラの報酬基準(目安)や処理基準を定め、多重債務の相談・処理のマニュアルを定めたので、会員への普及のため、この研修会が開かれた。  研修は、全会員に配布されたマニュアルをテキストとして、各執筆会員を講師に(1)横浜弁護士会法律相談センターにおける多重債務相談の概要(武井共夫)(2)相談の実施方法と担当員の留意事項(石井誠)(3)多重債務処理(非事業者)報酬基準(目安)について(杉原光昭)(4)委任契約書の雛形と作成方法(小倉孝之)(5)多重債務処理基準(含むノウハウ等)について(小林秀俊)(6)非弁提携弁護士問題(呉東正彦)と行われた。
 報酬基準(目安)は、非事業者の個人の多重債務整理事件の弁護士費用の基準(目安)を、横浜弁護士会報酬規程の範囲で定めたものであり、(1)依頼者が経済的に困難な状況に置かれていることが多いこと(2)多重債務者の更生という社会的意義ある事件に対し、弁護士会・弁護士として積極的に取り組むことが要請されていること等に鑑み、できる限り、この基準によることをお願いするという趣旨のものである。なお、この基準による限り、センターにおける受任事件審査は、簡略化されることとなるが、この基準によらない場合には、個別に報酬規程に照らして審査を受けていただくこととなる。
 処理基準は、(1)取引経過の開示を求め、(2)利息制限法による引き直し計算をして残元本を算出し、(3)分割弁済の場合を含めて、経過利息・将来利息を一切付加しない弁済案を提案するというもので、従来から東京三弁護士会では統一基準(いわゆる三会統一基準)として、行われているものであり、今後当会でも一般化することが求められる。
 なお、これらの基準(目安)は、クレ・サラセンターで受任したものだけでなく、法律相談センターを通じて受任した全てのクレサラ事件に適用されるものである。

久連山剛正会員の巻
 私が弁護士登録をしたのが昭和四六年で、独立したのが昭和四九年である。同期の鈴木明弁護士と一緒に故川島政雄先生の事務所でイソ弁としてお世話になって、今の弁天通り二丁目の事務所は、最初は私の同郷(山形)の先輩でもある佐藤卓也弁護士と二人で持った。その後一年して鈴木明弁護士も合流して現在の三人体制の事務所となった。佐藤弁護士も川島事務所の出であるから三人共川島先生の門下生である。
 以後この三人体制は現在まで二六年間続いているので不思議といえば不思議であるが、当の私達にとっては至って当然のような雰囲気で来てしまった。三〇年近くも一緒に居れば夫婦でも喧嘩位は何回もあるだろうが、正直言って事務所の体制や運営について気まずい思いをしたことは、少くとも私は無い。
 三人体制と言っても経費分担型の個人事務所の集りであるから、事件処理は原則として別個であるが机だけはキチンと三つ並べて仕事をしている。だからお互いの電話などは全部耳に入ってしまうのであるが一切気にならないし、気にしない。そして三人とも殆んど一日中口をきかない。口をきかないでいられるということは気を遣わないということであり、私はこれが一番長持ちする秘訣だと思っている。少くとも私自身は気遣いをせず居させてもらっている。ちなみに私の血液型はB型であり、佐藤弁護士はA型で、鈴木弁護士はO型である。ABOのバランスがとれているのかも知れない。
 また遊びの方も同じ経過を辿っている。マージャン、カラオケ、ゴルフ。私の独立した頃は特にマージャン熱に囲まれていたように思う。五時過ぎると川島ビルの一階のマージャン屋「あたみ」に二卓か多いときは三卓位の賭場が立ち、出入りしていた弁護士の常連は一〇人位いた。
 話は変って、昭和五〇年前後というと、戦後のどん底から出発した日本経済が高成長を続けて頂上付近にさしかかっていた時期で、ただひたすら生産性を追い続けた結果のマイナス面というか病理的な側面である公害問題が深刻化の様相を呈していた。横浜弁護士会でも有志が川崎の大気汚染による被害者の方々の聞き取り調査などを行ない被害実態の調査報告書を出した。公害健康被害補償法の制定について会内で論議があったりして、同法が施行されたのは私が独立した昭和四九年である。また反体制的な学生や若者の情熱も激しかった時代であり、横浜地裁ではアスパック事件の審理が行われていた。
 一九〇〇年代は第一次大戦、第二次大戦があり、その中でロシア革命、中国革命その他多くの革命があって歴史の激流の中に身を置く感じもあったが最近は革命という言葉も色あせてしまって淋しい感じもする。

 (株)テイジン・エスアールエル・ラボDNAフィンガープリント事業部部長の樋口十啓氏を講師として、最近流行のDNA鑑定に関する研修会が一一月八日午後二時から弁護士会館五階で開催された。
 「そもそもDNAとは何か?」から始まり、最新の鑑定法の原理に至るまでをスライドを中心として視覚的に説明された。
 樋口氏は各地の単位弁護士会でも講義されており、その講義は素人かつ文系のわれわれ弁護士にも非常に理解しやすいもので、そのせいか会員からの質問も活発になされ、なかなかの盛況であった。
 また、骨髄移植をすると、血液だけがドナー(提供者)と同じDNAとなるため、一人の人間なのに二つのDNAを持つようになるなど、極めて興味深い話題もあった。DNAという話題の性質上、メンデルの法則などという忘却の彼方にあった生物学上の概念に話が及ぶこともあったが、生物アレルギーのある私ですらすんなりと聞くことができた。
 なお、樋口氏のお話によれば、下手な概説書を読むよりも高校の生物の教科書の方が最新の内容まで盛り込まれており一番お勧めとのことである。
 日本では、DNA鑑定による親子鑑定は年に一五〇〇件から二〇〇〇件程度で(うち裁判所では五〇〇件程度)、アメリカ合衆国における実施数の約一〇〇分の一であるそうである。もっと積極的にDNA鑑定を活用しようという気になるような極めて有意義な研修であった。
 ちなみに、気になる鑑定に係る費用についての質問はなぜか出なかったが、配布資料によれば、母子と疑父の三人が鑑定対象者の場合、検査料・解析料・鑑定書料合計で二五万円だそうである。
(二川 裕之) 

 一一月三〇日午前・午後と二つの組に分かれ第一一回倫理研修会が開催され合計一一一名の会員が参加した(対象者の出席率約七一%)。当日は、森田明副会長が綱紀・懲戒・苦情の現状を巡る講義をおこなった後、課題文についてパネルディスカッションをおこなった。参加各期代表のパネリストよりの検討結果を披露いただき、会場発言ののち、課題文についての研修委員長の所見が発表された。
 設問の中では、相手方の弁護士と駅から相当離れた裁判所までタクシーに同乗するのはどうかという小問を取り上げた。割り勘ならいいのではという意見もあったが、たとえ割り勘でも、依頼者との信頼関係の保持の点からみると倫理上問題が生じるであろうという見解が相対的に多かった。
 その他訴訟詐欺への加担に関する設問、刑事における証拠隠滅への加担に関する設問をとりあげ、活発な意見が出された。
(研修委員  中村 宏) 

主催 横浜弁護士会研修委員会
日時 平成12年2月23日(水)
午後2時から午後4時まで
場所 弁護士会館5階
テーマ 「中小企業の倒産と債権者」
講師 弁護士 河野玄逸先生(東京弁護士会)

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