やりがいを感じる瞬間 |
第57期 上田 幹夫会員 |
一昨年10月に弁護士登録を許され、現在2年目の弁護士生活に入った。 |
今回、縁あって「新人弁護士奮闘記」を書かせて頂く事になり、この1年余りの仕事を振り返ってみたが、「いろいろなことがありすぎて何から書いていいかわからない」というのが正直なところだ。それほど、質・量ともに豊富な事件に恵まれ、忙しいなりにも実り多い毎日を送っている。 |
その中でも、一番印象に残っているのは、初めて担当した少年事件である。 |
最初は、淡々として感情を表に出さない少年が、面会を重ねていくうちにどんどん変わっていく。「家庭環境に問題がある」などとどこかで指摘されていたはずなのに、審判の後、両親と仲良く自宅に帰って行く。そんな姿を見て、「ああ、この仕事やって良かったな」と心から思った。 |
少年事件に限らず、この1年間は「初めて経験する仕事」ばかりだった。当然のことながら、諸先輩方のように手際が良いとは言えない。それでも、何とかここまでやってこられたのは、周りの方々のお力添えがあってこそだと思う。この場を借りてお礼申し上げたい。 |
いつの頃かは忘れたが、最初に私が弁護士という職業を志した理由は、「自分の仕事で誰かが幸せになって、その人から感謝をしてもらいたい」という単純な憧れのようなものだったように思う。 |
しかし、1年あまりの経験を経て思うことは、現実は、誰かに感謝してもらえて嬉しいというのは、残念ながらそれほど多くない。むしろ逆に、恨まれたり辛い思いをしたりすることのほうが、ずっとずっと多い(私だけか?)。 |
それでも時々、「ああ、この仕事やって良かったな」と心から思える瞬間がある。そして、その時に味わえる奥深い達成感のようなものは、私にとって何物にも代え難い。 |
これからも、数多くの事件に触れて、そんな瞬間を重ねることができればと思う。 |