横浜弁護士会新聞

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2004年1月号(2)

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雨ニモマケズ熱気むんむん 弁護士フェスタ in KANAGAWA
 本年度弁護士フェスタが11月29日(土)賑々しく開催された。あいにくの雨模様となったが、人の出足は予想以上で、関係者を喜ばせた。
 弁護士会館で行われた大規模無料法律相談会には約130名の人が訪れ、また司法教育模擬授業や法科大学院実験授業、住基ネット問題のシンポにもそれぞれ関心のある人たちの熱心な参加が見られた。
 開港記念会館の大講堂では、映画「裁判員」上映会、人権賞贈呈式、裁判劇、パネルディスカッションと、インパクトのある催しがこれでもかと続き、いずれも満員盛況だった。
 大講堂以外の部屋で行われたミニシンポ(教育基本法改正問題、労働審判制度、消費者団体訴権)もそれぞれ40〜60人の参加者を集め盛り上がっており、諸問題への市民的関心の高まりを肌で感じさせられた。小部屋展示(刑事弁護、BC級戦犯、犯罪被害者)はいずれもビデオを流して関心を集めていた。
 午前11時から始まったフェスタが終了したのは午後5時半。一日を通じ約1200名もの老若男女が集まったのであり、弁護士への期待の高まりを改めて実感させられた。

市民の意識に一石 パネルディスカッション 3人のパネリスト白熱の討論
 午後4時からは「司法改革の行方」というタイトルの下、裁判員制度の是非、現在の刑事裁判手続の問題点といったテーマについてパネルディスカッションが行われた。パネリストはジャーナリストの江川紹子氏、元日弁連会長で中央大学理事長の阿部三郎弁護士、日弁連刑事弁護センター事務局長の岡田尚会員の3名。小島周一会員が司会を務める中、江川氏から発せられる市民の立場での疑問点に阿部・岡田両弁護士が答えるという形でディスカッションが進められた。
 江川氏からは(1)裁判の遅延(2)一般市民と法曹との意識の乖離(3)傍聴席からは事件の内容がわからない(4)弁護人毎の力量の差から被告人の運命が左右されかねないといった問題点が指摘され、また、阿部・岡田両弁護士からは真実の発見と人権保障という刑事訴訟法の目的や無罪推定の原則といった基本原理に遡りつつも、わかりやすい語り口で刑事裁判制度の説明がなされた。
 裁判員制度については、江川・岡田両氏から急速な議論の中で裁判員に選ばれる市民の負担軽減に関して十分議論が行き届いていないといった鋭い指摘がなされ、会場は一様に頷いた。
 会場の声を聞いたところ「裁判員制度について議論が急がれる一方で問題点が多いことがよくわかった」、「ジャーナリストと弁護士と異なる立場からアプローチすることにより問題点が際立った」とのことであり、司法改革に対する市民の意識に一石を投じるという本企画の目的も達成されたと言えよう。3人のパネリストによる白熱した討論により、パネルディスカッションも大成功のうちに幕を閉じた。

喜びと新たな決意 人権賞
 今年度の人権賞には昭和35年以来40年以上にわたって厚木基地の爆音被害救済に取り組んできた厚木基地爆音防止期成同盟、自らの満州での体験を契機に中国残留孤児のための自立支援に尽力してきた元新聞記者の菅原幸助氏の一団体・一個人が選ばれた。
 受賞のために会場に訪れた同期成同盟の代表鈴木保氏は「大変重い賞を頂きました。今日の受賞は人権の抑圧を解消するための大きな勇気と励みを我々に与えてくれました。これを励みに今後もこの空から爆音をなくすため一層頑張っていきます。」と喜びと決意の言葉を述べ、また、菅原氏も「中国残留孤児の自立支援のためのボランティア活動や国家賠償訴訟の支援はまだ道の途上にあります。この受賞を契機によりたくさんの市民、そして法曹の方から我々の活動に対するご理解、ご協力を頂ければと考えています。」と未解決の問題に取り組んでいく必要性を指摘した。
 冷たい小雨にもかかわらず、会場は一般市民をはじめ両受賞者の関係者で満員の盛況であり、菅原氏の受賞の光景を一目見ようと集まった中国残留孤児の方々のために中国語による同時通訳も行われ、感情のこもった美しい中国語の響きが会場に華を添えた。

犯人は…サンタクロース? 裁判員劇
 昨年に引き続き行われた裁判劇の題名は「ストーカーサンタ殺人事件」。クリスマスイブの夜に女性が殺害され、その現場近くでサンタクロース姿の被害者の元恋人らしき人物が目撃されたが、この元恋人は被害者にストーカー行為をしていたことが疑われたことから、殺人事件の犯人として逮捕・起訴されたという事件である。
 昨年の裁判劇「ヨコハマたそがれ放火事件」が市民の好評を博したことから、今年の劇にも多くの期待が寄せられており、会場は立ち見の観客が出るほどの盛況となった。
 観客全員が裁判員
 今年の裁判劇は、舞台上で殺人事件の裁判を上演し、会場に詰めかけた観客自らが裁判員となって、劇中の弁護人や検察官、証人や被告人のやり取りを見聞きし、裁判終了後自ら有罪無罪を判断して票を投ずるという形で行われた。
 現在横浜で修習している修習生が検察官を演じたほか、裁判官役の宗会員や仁平正夫会員ら当会会員が被告人を除く全ての配役を演じ、いずれも役者顔負けの見事な演技で観衆を魅了した。
 裁判では、凶器のバタフライナイフが被告人の物であるかどうか、動機に関し被告人が被害者に対しストーカー行為をしていたのか否か、被告人のアリバイ、現場近くで被告人を目撃したという証言の信用性等多くの争点が浮上し、観客は熱心に裁判の進行を追っていた。
 評決結果はいかに?
 1時間半に及ぶ裁判劇の終了後、評決用紙が回収されたが、結果は回答数360のうち、有罪が49票、無罪が311票、白票が4票と無罪に投じた観客が圧倒的多数となり、シンポジウムでパネリストとなった3人も全員が無罪に投じた。
 無罪の理由としては、多くの人が元恋人は疑わしいが証拠が不十分との理由を挙げていた。
 裁判劇は市民が裁判員制度について体験的に学ぶ最も有効な手段であり、今回の意義もまた大きかったものと思われる。

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