横浜弁護士会新聞

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2003年1月号(2)

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弁護士フェスタ 大盛況 熱気あふれる裁判員劇 来場者約一一〇〇人
 昨年一一月三〇日、横浜市開港記念会館と当会会館において、「弁護士フェスタ・in・KANAGAWA」が開催された。今回は「県民集会」から名称を変更して二回目、通算二九回目にあたるが、前回とほぼ同様、参加者は約一一〇〇人に達した。特に裁判員劇は開港記念会館講堂の一階も二階も満員となり、立ち見が出るほどの大盛況であった。
 メインプログラムの場所は開港記念会館講堂。映画「日独裁判官物語」の上映から始まり、人権賞贈呈式、裁判員劇、公開評議、評議結果の報告と進み、予定どおり午後六時に閉幕した。同時に別室では三つのミニシンポと五つの展示、プロ棋士による将棋の多面指しが行われた。また、当会会館では大規模無料法律相談会と二つのミニシンポ、あっせん・仲裁申立の無料受付、写真クラブの展示会など、とても回りきれない盛りだくさんの充実した内容であった。
 なお、法律相談会の参加者は一二八人、あっせん・仲裁申立の件数は二件であった。
 立ち見続出、裁判員劇 −裁判員に応募多数−
 今回のサブタイトルは「裁判員劇から国民の司法参加を考える」。すなわち、県民から裁判員を募集し、裁判員劇の上演後、評議して有罪・無罪の結論を出してもらう。平成一六年に立法化が予定されている裁判員制度を県民とともに考える趣旨で企画された。
 この裁判員には予想をはるかに上回る一〇七人の応募があり、最終的に四七人の裁判員が選ばれた。そこから七つのグループを作り、裁判官役の当会会員が二名入って評議を行うことになった。
 はたして真実は?
 裁判員劇は題して「ヨコハマたそがれ放火事件」。現住建造物放火で起訴された被告人をめぐり、当会会員等による白熱した審理が展開された。見どころの一つは検察側証人と弁護側証人の証言の食い違い。はたして被告人は有罪か無罪か。満員の会場は審理の行方を固唾を呑んで見守った。
 公開評議で議論沸騰
 裁判員劇の裁判官役は森野俊彦裁判官と仁平正夫会員である。裁判員劇の後、この二人が加わり、応募者から選ばれた五人の裁判員とともに公開評議が行われた。
 評議では証人の証言の信用性、被告人の捜査段階での自白の評価、証人と被告人との特殊な関係などをめぐり、議論が沸騰した。評議時間はあっという間に過ぎ、結論は有罪二人、無罪五人と分かれたが、判決では多数決で無罪が宣告された。
 他の評議体も無罪
 次いで他の六つの評議体の評議結果が報告されたが、全ての評議体で結論は無罪となった。また、当日は会場にも評決用紙が配られ、参加者からも評決が寄せられた。会場の結論は有罪四四人、無罪二一七人で、量刑意見の中で最も多かったのは懲役五年であった。
 おわりに
 最後に間部俊明弁護士フェスタ実行委員会委員長が閉会の挨拶に立ち、国民の司法参加の意義を訴えた。
 プレシンポの参加者、裁判員の応募者、そして今回の弁護士フェスタの参加者、いずれも予想を上回る多さであり、我々が思っている以上に市民の関心は高い。
 司法制度改革が立法段階に入っている現在、我々こそが襟を正さなければならないと言える。
 横浜弁護士会第7回人権賞に広田和子さん
 広田さんは、平成一〇年医療ミスの注射をうたれ、その副作用から廃人のような姿となり絶望的な気持ちで閉鎖病棟に入院した体験を持つ、精神医療の被害者である。
 現在は被害者の立場を乗り越え、「精神医療サバイバー(生還者)」として、また「保健福祉コンシューマー(消費者)」として活動している。
 広田さんは、他の病気と区別せず安心して二四時間受診できるような精神科救急医療体制と相談窓口を行政として早急に作って欲しいと訴え、精神障害者とその家族の相談などにあたっている。
 ミニシンポ紹介
「危機に立つ消費者被害救済」
消費者問題対策委員会
 政府が法案を制定しようとしている「新仲裁法」、「弁護士費用敗訴者負担制度」は市民・消費者の「裁判を受ける権利」の根幹に関わる問題であるとして、その問題点と、我々はどうすべきかを考えるシンポジウム。
「みんなで追い出せ暴力団!!」
非弁・民暴対策委員会
 本年四月に起きた拳銃発砲を伴う暴力団の対立抗争殺傷事件を題材に、暴力団等の反社会勢力に善良な一般市民や企業が蝕まれないための対応策を考えるシンポジウム。
「DV防止法施行後DV被害者支援はどう変わったか」
人権擁護委員会
 DV防止法施行から一年が経ち、配偶者暴力相談支援センタースタッフ、シェルター運営者、弁護士が意見を交換し、これからのDVの防止と対策について考えるシンポジウム。
「大人が子どもにしてあげられること」
子どもの権利委員会
 横浜市自立援助ホーム「えんどうホーム」の遠藤浩氏が子どもと一緒にとる食事の大切さなどについて講演した。
「犯罪被害者の求めにどう応えるか」
犯罪被害者支援委員会
 県警本部の被害者対策室長星野英夫氏、NPO神奈川被害者支援センターの伊東義矩氏、今泉岳雄氏らがそれぞれの立場から活動の紹介や経験談が語られた。

会場にあふれる市民 プレ企画に一九〇人
 昨年一一月二二日、弁護士フェスタのプレ企画として「国民の司法参加を考える集い」が開かれた。中坊公平司法改革国民会議運営委員、三谷太一郎成蹊大学教授の知名度もあってか、弁護士会館五階大会議室が、定刻前から満席となり、臨時に搬入したパイプ椅子も足りない盛況ぶりであった。
 冒頭の青木孝副会長の挨拶の後、中坊委員から、司法改革の意義について、「日本国初めての利用する立場からの改革である。OUR TOWN、OUR COURT、OUR LAWYERと誇れる裁判員制度に」との講演があった。続いて、三谷教授から、「陪審員制度は、決して日本に馴染みのない制度ではなく、歴史的経験が現に存することを認識すべき」として明治以来の陪審制導入の動きについての詳細な講演があった。最後に、岡田尚会員から「よりよい裁判員制度の実現のために」と題して、実効性をあげるためには裁判員の数・構成体のほか、裁判の現状を変えることが必要との指摘がなされた。
 間部俊明弁護士フェスタ実行委員会委員長から、「県民と弁護士・弁護士会との協同作業により地域に根ざした司法改革を実現させよう」との閉会挨拶で、熱気につつまれたプレ企画が閉幕した。
(小沢弘子会員)

第8回民裁懇開催される 女子と男子との賠償は違っていい?
 昨年一一月八日、横浜地裁一二階の大会議室において、当会会員弁護士四四名、裁判官三二名、書記官一七名の総勢九三名が参加して民事裁判懇談会が開かれた。従来は手続問題を中心とするテーマが選ばれてきたが、今回は損害賠償問題を中心に議論が展開された。
 はじめに、吉本徹也横浜地裁所長により、活発な議論による成果を期待する旨の挨拶があり、続いて、川口代志子裁判官から「交通損害賠償訴訟における損害額算定について」とのテーマで報告がなされた。後遺症や死亡に対する慰謝料額の増加傾向の紹介や、年少者の逸失利益を算定する際の男女の取扱いを同一にする例など近時の裁判例を踏まえた興味深い話である。その後の質疑では、判決と和解における算定方法の異同等、実務的に重要なポイントが話し合われた。
 次に、渡辺智子会員から「セクハラ・DV等女性をめぐる損害賠償の実例と今後の動向」というテーマで報告がなされた。全国にわたる様々な裁判例や豊富な取扱い例などが紹介され、悲惨な実態が明らかになるとともに、近時の認容額の増加傾向が示された。同会員らの献身的な活動に負うところも多いものと思われ、会場からの質問もそれら苦労話に関するものがあった。また、同会員の「丁寧な判決は被害回復に重要な意味を持つ」との発言には共感が寄せられていた。
 さらに高橋健一郎会員により「マンション問題に関わる損害賠償問題について」とのテーマで報告がなされた。各出席者にも身近な問題であり、管理組合の運営や集合住宅の居住関係の難しさが浮き彫りにされた。裁判所の訴訟指揮などに対する同会員の要望として、「無理なものは無理と最初から言う、無理とわかっていても最初から無理とは言わない」という微妙な心証開示方法について、思わず唸る一幕もあった。
 こうして、最後は池田忠正会長により、関係者の労を謝し、今後もさらに発展させて欲しいとの挨拶で今回の懇談会は終了した。
 今後も概ね三から四か月に一回の割合で民事裁判懇談会を開催して行く予定である。時宜に適った様々なテーマで民事裁判の抱える手続問題を協議し、当会と裁判所との理解を深める有意義な場として、さらに充実・発展させたいと念願している。多数の会員の参加を期待したい。
 民事裁判手続運用委員会
委員長 木村良二

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