2002年11月号(2) |
一〇月一二日午後一時四〇分より、小田原保健センターにおいて、模擬裁判「恋の城下町放火事件」が開催された。市民に向けての模擬裁判は神奈川県内では初の取り組みであり、また、支部主催の模擬裁判は全国初のことである。他の弁護士会の模擬裁判で使用された脚本をもとに小田原支部独自のアレンジを加え、小田原支部の会員が裁判官、検察官、弁護人、被害人、証人役に扮するという、脚本、配役から裏方に至るまですべて小田原支部会員による手作りで準備が進められた。小田原支部として、市民に向けてのこのような取り組みは初めてのことであり、果たして当日どれだけの市民が集まるか見当がつかなかったが、朝日新聞や神奈川新聞で大きく取り上げられ、また、会員が街頭でビラ配布をしたことなどが功を奏してか、裁判員役について市民の方々に事前に葉書で応募してもらったところ、小田原市内周辺に限らず、横浜、厚木、伊勢原等管内各地から二〇数名の応募があった。年齢層も一七歳の学生から七〇歳代までと幅広く、当初の予想以上の反響であった。このため、当日の傍聴人はこの一〇倍を超えるだろうと予想し、立見客が出た場合のことも考えて、本会場の他、ビデオを用意し別室でも傍聴できるよう万全の体制で臨んだ。実際には、当日、裁判員役の市民二二名の他、百数十名の市民がつめかけ、定員約二〇〇名の本会場がほぼ埋まる状態であった。立見客が出た場合の心配は杞憂に終わったが、三時間半にわたる長時間にも関わらず途中で退席する人もなく、皆熱心にメモを取るなどして、裁判劇の進行を見守っていた。裁判員は三グループに分かれて評論してもらった。その結果、一つのグループでは無罪の結論が出たが、他の二つのグループでは時間内に意見が一致しなかったため、有罪、無罪それぞれの数を発表してもらった。傍聴人にも評決用紙を配布し、結論を記載してもらったが、裁判員・傍聴人の意見は、無罪が八割近くを占めた。その理由は、疑わしいが合理的な疑いが残るというものが大半であり、人を裁く難しさを実感している様子であった。最後にアンケートを記入してもらったところ、将来裁判員に選ばれたらぜひ参加したいという意見が多く、裁判員制度に対する市民の関心の高さが伺われた。 |
この模擬裁判の企画が持ち上がったのは約半年前であるが、なかなか準備が進まずどうなることかと思っていたが、本番では、本業以上に熱が入っていたと評されるほど会員たちは皆熱演し、本番に強い弁護士の底力を発揮していた。 |
(八木下美帆会員) |
平成一四年九月二七日に、つくば国際会議場において、平成一四年度関東弁護士会連合会定期大会が開催された。 |
まず、午前一〇時より、子供のための法教育をテーマとしたシンポジウムが開かれた。「法教育」は、司法関係者にとっても、馴染みのない言葉であり、その内容もつまびらかでないが、一般市民、特に子供達に対し、法や法制度に対する理解や法過程への参加を促す学校教育は、今後の民主的な法国家を形成するのに不可欠であるとの基調報告がなされた。 |
さらに、戦後、法概念中心の教育に偏重し、社会ルールを中心に据えて法の中の価値を教えることを怠ってきたとの反省を踏まえた江口勇治筑波大学教授の講演や、筑波大学付属中学校の館先生からの、生徒らの間で「民主的」という言葉がだんだん使われていなくなっているという現状の報告、カリフォルニアの公民教育センター顧問のノーマ・ライトさんの「正しい答が何かではなく、生徒達に考えさせることが大切である」という貴重な意見、さらに台湾律師(弁護士)から台湾での法教育についての報告がなされた。当日は、学校関係者及び一般市民の参加が三五〇名にのぼり、弁護士の三〇〇人と併せて六五〇人という大勢の人々が参加し、子供のための法教育という問題に対する関心の高さがうかがえた。 |
引き続き開かれた定期大会では、子供に対する法教育の必要性と重要性を訴える「子供のための法教育」に関する宣言、及びダムに代わる総合的な水循環社会の実現を目指す「自然環境保全の視点から見るダム問題の解決について」の大会決議がなされた。宣言がなされた頃には、曇天の中に、晴れ間ものぞかれ、天下の名峰筑波山もくっきりと姿を見せ始め、まさに法教育の今後を指し示すかのようであった。 |
さらに、午後五時三〇分から懇親会が催され、一都一〇県の会員らが、今回の大会担当である茨城県弁護士会及びシンポジウム委員らの労をねぎらうと共に、互いに旧交を温め合った。 |
(副会長 尾立孝司) |
開設披露パーティ盛況 |
一〇月一日から、川崎岡田屋モアーズ四階にて、川崎法律相談センターが開設運営されることとなった。 |
それに先だって、九月二五日、川崎日航ホテルにおいて、その開設披露パーティーが催された。 |
当日は、神奈川県、川崎市をはじめ、司法書士会、税理士会、土地家屋調査士会、行政書士会等からの多数の来賓の出席も戴いて盛況なパーティーとなった。 |
冒頭池田会長より川崎法律相談センター開設の経緯について説明がされた。川崎法律相談センターは、もともと平成八年から武蔵小杉駅近くの中小企業婦人会館にて午後四時から七時までに限って運営されていたが、それを、武蔵小杉駅に比して乗降客の多い川崎駅という場所で、なおかつ、デパートという市民にとって利用し易い場所にセンターを設けたこと、また相談日時においても平日昼間は午後一時から午後七時一五分、土曜・日祭日の午後一時から午後五時までに相談が実施されるなど内容を拡充させたことから、敢えて川崎法律相談センター「開設」としたとのことであった。 |
また、来賓からも、市民の法律相談に対するニーズが高まる中、このような相談日時の拡充された常設の法律相談センターが開設されることに、喜びと期待をもっているとの祝辞が寄せられた。 |
これで、当会が主催する法律相談センターは、県内七か所となるが、今後もより県民に利用しやすいものとしていけるよう会員の努力・協力も仰ぎたいとの副会長の挨拶でパーティーは終了した。 |
九月一三日、弁護士会館五階において、「民事再生事件(個人再生事件を含む)、破産事件の現状と問題点」についての会員研修が行われた。講師は、横浜地方裁判所第三民事部の田中治判事である。 | |
厳しい不況が長く続いているため、破産・再生事件が弁護士の業務のかなりの部分を占めるようになってきていると同時に、破産事件の法律制度・運用が激しく変わりつつある。 | |
そのような現状を反映してか、横浜地裁での破産・再生事件の運用について詳しい情報を得たいという会員で会場は満員であった。 | |
ファックスでの出席の予約もすぐに定員に達して締め切られたとのことである。 | |
個人債務者再生制度は平成一三年四月一日から始まって一年半、また、横浜地裁の小規模管財制度は平成一四年一月一日から始まって一年経っておらず、これらの制度の運用は、まだ当会会員の間で熟知されているとは言い難い。そのため、研修の内容も、これらの制度について横浜地裁でどのような運用がなされているか、当会会員が申立代理人や小規模管財を含む破産管財人、個人再生委員や監督委員として破産・再生手続に関わるにあたって、裁判所がどのようなことを望んでいるか、が中心となった。 | |
田中判事は、淡々と話を進めながら、横浜地裁の第三民事部で、現在どのような事項が法的手続上または事務手続上問題とされ、検討されているかについて言及し、裁判所の現場の状況だけでなく、今後の見通しにも話が及んだ。時には、田中判事が弁護士の立場に温かい理解を示して出席会員の笑いを誘う場面もあった。当会と裁判所とが協力体制に向けて積極的であることも示すとても有益な研修であった。続編を望む次第である。 |
▲ページTOPへ |
内容一覧へ |