横浜弁護士会新聞

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2002年10月号(3)

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支部便り
海が狭くなった
横須賀支部 小林 秀俊
 横浜地方裁判所横須賀支部の庁舎は高台の上にあり、ここから東京湾を望む景色は素晴らしいものがある。眼下の街並みを見おろし、街並みが終わると海が広がり、海には緑の猿島が浮かんでいる。猿島の向こうには対岸の房総半島があり、晴れた日には遠く東京湾横断道路まで見ることができる。この景色は、上の階に行くほど素晴らしく、一番のおすすめは債権者集会が開かれる四階の会議室である。
 弁護士会横須賀支部は、裁判所庁舎の一階にあり、その窓から見える景色も素晴らしいものであった。ところが、この数年の再開発で、その景色が大分変わってきた。まず、窓から見えていた広い海が、大規模な埋め立てで狭くなった。そして、その埋立地の上にいくつものマンション等の大規模な建物が建てられて、支部の窓から見える海が一段と狭くなってきたのである。現在建設中の建物が完成すると、支部の窓から猿島が見えなくなるのではないか。
 裁判所横須賀支部は、眺望権を認めた判決を生んだ裁判所である。この判決も、裁判所から見える景観があってこそ生まれた気がする。裁判所から見える景色が変わっても、本当に環境に配慮した判決は生まれるのだろうか。

新人弁護士奮闘記 第55期 藤田祐子会員
千里の道も一歩から
 弁護士になって早一〇か月。と書いてみて、あれ、もう一〇か月も経っちゃったのか、と突然焦燥感に取り付かれた。見るもの聞くもの全てが新鮮、千里の道も一歩から、などと、とぼけたことをぬかしつつ、己の無能さを「新人だから仕方がないし」とあまりにも寛容に容赦してやって、のらりくらりと日々を過ごしているうちに、いつの間にやら結構な時が流れているではないか。
 じっくり見つめ直してみると、現在の自分ときたら、その寛容さがたたって、刑民問わず、未だに独りで法廷に出るとなると、不慮の事態に対応しきれずへどもどし、法律相談の際は、「どうかムズカシイことを聞かれませんように」と神に祈りっぱなしというていたらくである。
 これはいけない、新人であると言う事実を己の都合のいいようにしか役立てていないではないかと深く反省することしきりだが、しかしながら、今ひとたびこの一〇か月を振り返ってみると、私とて、それなりに本来の新人らしく奮闘した時が無かったわけでもないと思われる。
 出しても出しても無下にはねつけられる保釈請求のその却下っぷりや、闘争の殆ど全てを無にするかの如き調書の任意性の認められっぷりに、「日本の刑事司法は間違っとる、今は無力な自分でも、必ずいつの日かこの間違いを正してくれん」と憤ったことなどもあったのであるからして。
 結局、この一〇か月というものは、己の無能さと無力さと深くお付き合いをしてきた期間であり、今現在も正にそのお付き合いは続行中なのだと思われる。してみると、それはある意味まことに新人弁護士らしいとも言えるような気がする。
 とはいえ、一〇月にはもう、第五五期が、まったき新人弁護士としてデビューしようかというこの頃、流石にそろそろ、己の弁護士としての能力の向上を真剣に図らなければならないと、やはり一抹の焦燥感に取り付かれながら思ったりするのであった。

常議員会レポート第7回(平成14年9月11日)
 第一号議案から第三号議案までは人事案件
(第四号議案)
新入会員入会許可について
 第二東京弁護士会から登録換えによる入会申込が一名あり許可された。また、今年一〇月司法修習を終了する五五期司法修習生二六名から入会申込があり、研修終了を条件に入会が許可された。新入会員の活躍が期待される。
(第五号議案)
刑事専門事務所の設置は必要か!
 日弁連刑事弁護センターは、「被疑者・被告人の国費による弁護制度に対応する体制の整備について」において、神奈川県では年間一〇〇件を受任する三五名の刑事専門弁護士が必要との試算をしており、これについて当会の意見を求められていた。理事者は、当会の刑事弁護センター、子どもの権利、司法制度改革実現本部第二部会など各委員会の検討を経て回答をまとめた。当会の意見は、今年度から導入された国選弁護人当番制度、当番弁護士制度、毎年の入会状況などから、当会の一般弁護士で対応することが可能なので、刑事専門事務所の設置は必要ないとの結論をまとめた。本当にやれるのか不安もある、弁護士の専門家自体は否定できないなどの意見も出されたが、理事者提案を承認した。
(第六号議案)
仲裁法制についての意見書に議論
 司法制度改革推進本部の仲裁検討会が「仲裁法制に関する中間取りまとめ」を出しており、広く意見を求めている。予め仲裁合意があれば、紛争が発生した場合は、その仲裁に従わなければならない内容で、裁判所に訴えがなされても訴えが却下されることになる制度である。当会の消費者問題委員会から消費者保護の観点から問題があるとの意見が出され、意見書をまとめたが、当会のあ・仲センターからも仲裁制度を積極的に活用すべきであるとの意見があり、調整が為された上で提案された。常議員からは、消費者問題だけではなく、労働契約にも適用された場合にも問題が大きいとの指摘がなされ、その旨修正された上で承認された。
(第七号議案)
簡裁の事物管轄の引き上げに反対
 簡易裁判所の事物管轄を大幅に引き上げようとする意見が司法書士会などを中心に出されていることについて、現在の簡易裁判所の実情(事件数の増加に伴う受け入れ体勢の整備が無いこと、消費者金融事件の増加等)から見て、事物管轄の引き上げには反対であるとの意見を採択した。
(第八号議案)
臨時総会の議案決定
 一〇月四日午後一時より開催が予定されている臨時総会の招集及び提出議案が承認された。主な議題は、(1)支部に関する会則・会規の制定、(2)懲戒手続に付されたことの公表に関する会規制定等である。(1)は、これまで事実上存在した当会の支部を会則・会規上位置づけて正式な機関とするものであり、(2)は、国民の信頼を確保するとともに、非行に掛かる被害の拡大を防止するために、当会会員について懲戒処分が出る前に、懲戒に付されたことを公表する制度を新たに設けることである。
報告事項
 法制審議会民事・人事訴訟法部会の「人事訴訟手続法の見直し等に関する要綱中間試案」について、日弁連から意見照会が当会に来ている件について、当会の司法制度委員会が取りまとめた意見について、八月三〇日付けで委員会の意見である旨付記した上で、日弁連へ送付した旨の報告があった。
 (財)法律扶助協会神奈川県支部と当会との間で「人件費の負担に関する協定」を締結した旨の報告があった。
 法律相談センター川崎相談所は、一〇月一日から開設されるが、そこで働くパート職員を三名採用したとの報告があった。
(副議長 森 卓爾)
常議員からズバリひとこと
 常議員会の一週間前、今回も袋に入りきれないほどの資料が届いた。司法制度の問題に関する弁護士会の意見書案が四つ。司法改革の波が、私たち弁護士の足元にまで押し寄せてきているのを痛感する。特に刑事専門事務所の設置に関する回答案は、身近であると同時に、これからの刑事弁護のあり方について深く考えさせる内容であり、審議にあたり様々な意見が交わされた。皆様是非一度手にとってお読み下さい。
第三二期 池田 陽子

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