2002年1月号(4) |
やりがいと大変さと |
弁護士になってから早一年二か月。非常に充実した毎日でしたが、これまで直面したことのない激しい人間の感情を目の当たりにする日々でもありました。ときにその対象は私自身になり、本人訴訟の相手方から「あんたを一生許さない」等と言われ落ち込んだこともあれば、会ったこともないのになぜか「弁護士河住志保は三〇歳、独身」と決め付けられ、その一部だけ正しい根拠不明な思い込みが怖かったことも…。後者の際は、ボス弁の石川恵美子先生に「二〇代なのに失礼よねぇ!」と豪快に笑ってもらって何だか気が楽になったものです。 |
登録後間もなく扱った在宅の国選弁護事件では、判決言渡期日に被告人が出頭しないという稀有な経験もしました。なんと期日の数日前に、数カ月前に犯した別件で地元(他県)の警察に逮捕されたというのです。他県に送られたため、結局私はそこで解任扱いになりました。 |
累犯前科で執行猶予のつかない事案でしたが、被告人は前刑出所後、悪い仲間のいる地元から離れ、横浜で定職に就いて勤勉に生活していたので、私は「生活を整えて立ち直りつつあるので、今回だけは罰金刑にして下さい」と図々しい(?)弁論をしていました。私の同世代の被告人と「人生というものは」などと大袈裟なことを熱く数時間語ったこともあり、別件の存在は少なからずショックでした。 |
その後、被告人からは長い手紙が何通も届きました。そこには「私のことを心から心配してくれて本当に嬉しかった。もう二度とバカなことはしないと先生に誓う。刑期を終えたらお詫びしたい」と繰り返し綴られていました。被告人が刑期を終える頃、もう新人弁護士とはいえない私はどう思うのでしょう。手紙の束に、彼の更生への意欲を信じようとしたことと、別件判明の衝撃の両方が蘇り、複雑な思いにとらわれます。 |
こうしてみると、私は弁護士の仕事を通じて、人間とは何かということを考えさせられるような気がします。やりがいも大変さもすべてそこに凝縮されていると感じる、弁護士一年目ちょっと過ぎです。 |
真実と嘘とのはざまで |
第55期修習生 岩崎 理子
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「嘘つきだ!」先生が大声で依頼者に対して怒っている。しかも日本語と英語とでかわるがわる。修習初日のことである。依頼者達は、不貞行為に基づく慰謝料請求訴訟の被告である。彼らは今日までずっと自らの依頼した弁護士に、二人の間には不貞関係はない、と言っていた。しかし、隠し子までいたことが弁論期日に相手方の指摘によって発覚したのだった。嘘をつかれた以上、弁護士としては辞任する権利がある、と先生は続ける。依頼者のうち一人は、反省して神妙にしているが、もう一人はなにやら言い訳をしているようだ(英語なのでよくわからないのだ)。小一時間後、依頼者達は揃って謝って、ようやく先生の許しを得て、辞任を免れた。傍らで聞いていた私もほっとした。 |
依頼者達が帰った後、先生に、依頼者の嘘を本当に信じていたのかと尋ねた。嘘ではないかと疑われる証拠もあったからだ。先生によると、依頼者の一人は以前に在留資格に関して自己に不利な事実を正直に話して先生の信頼を得ていたため、嘘かもしれないがもしかして彼なら……と思ったのだという。 |
依頼者が自分に都合よく物事を解釈したり、自分を守るために嘘をつくことはままあるだろう。その時、私ならどう対応するだろう。事件の本当の姿を知りたいとは思うが、依頼者の利益を守る立場である以上、疑わしくともたたかうのだろうか。 |
私の指導担当は、このように可能な限り自分の仕事のすべてを見せてくださり、多忙であるにもかかわらず、惜しみなく事件や自己の信念について話してくださる。このような弁護士のもとで修習できることを私は心から幸せに思う。 |
ちなみにこの事件は紆余曲折を重ね、当事者とそれ以上に両代理人の尽力の結果分割払いの和解が成立し、第一回目の支払額を今日振り込こんだという。少し嬉しかった。 |
(指導担当 三木恵美子会員)
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二〇〇一年六月二七日、一一時間半程の飛行で到着したロンドン・ヒースロー空港は連日の猛暑が去ったとの事で涼しかった(現地時間午後四時ころ)。 |
夕食までホテル近くのケンジントンパークを散策し、緊張と期待で臨んだロンドン最初の食事は全員一致で「味が無い」だった。 |
この時期、午後九時半ころまでロンドンは明るい。ホテル近くの「パブ」で、エール、ビター、ギネス、ラガー等を「ワンパイント」「ハーフパイント」「…プリーズ」と夕食の口直しに閉店(午後一一時)まで飲み、この「パブ」通いは滞在中の習慣になった。 |
今回の旅行は、二一世紀を迎え新体制になった法曹テニスクラブ執行部が「本物のテニスを観戦し更なる進歩を」と企画した(榎本前会長の慰労もチョッピリ兼ねた)もので、総勢二三名での出発になった。 |
チケットは新執行部大友副会長の尽力で手配出来、お陰で、長蛇の列をしり目に入場しセンターコートでの観戦が実現した。 |
ウィンブルドンはセンターコートと第一九まで計二〇面の芝生のコートが敷地内に展開しているが、大会期間(二週間)以外このエリアに入る事は出来ない。 |
美しく、目にも優しい芝生だが、選手は日々変化する芝生への対応に苦慮し「緑の魔物」と言うそうだ。 |
著名選手の息遣いや鼓動が聞こえるグランドコートでは臨場感に酔い、厳かで独特の雰囲気のセンターコートでは、観客の沸き方一つにも、スポーツに対する感度の高さを感じた。 |
田園地方へのツアー、ロンドン市内観光等々、今回の旅行は初夜の食事に少々難があったものの、大満足であった。 |
ヒースロー空港のパブで「ワンパイント…プリーズ」とギネスやビターを指差し、ほろ酔い気分で搭乗し、八日間に亘るロンドン旅行は終了した。 |
(馬場 俊一会員)
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野球部がこのたびユニフォームを一新し、そのお披露目式を一二月八日、横浜スタジアムにて行った。何せチーム名がマリナーズなものだから、当然のようにシアトルモデルを採用。これがなかなか恰好よく、みな気分だけはイチロー、佐々木。さて、これをきっかけに来年は飛躍? |
訂正とお詫び |
12月号3面「会長声明」は「会長談話」の誤りでした。訂正してお詫びいたします。 |
弁護士費用を負担できない方に弁護士費用の立て替えをします | |||||||||||||||||||||||||||||||||
なお、法律事務所での無料法律相談も行っています。詳しくは本部までお問い合わせ下さい。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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いろいろな相談にお応えします。 | ||||||
横浜弁護士会総合法律相談センター | ||||||
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編集後記 | |||||||||||||||||
明けましておめでとうございます。「ブロードバンド」が昨年の流行語に選ばれ、今年は益々スピード化が進みそうです。横浜地裁でも、破産手続の迅速化が検討されるなど、法律家も世の中の潮流と無縁とはいかなそうです。 | |||||||||||||||||
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