横浜弁護士会新聞

back

2001年12月号(1)

next
国選弁護当番制度来年4月から実施へ
 刑事弁護センター運営委員会を中心に国選弁護改革を進めてきた当会は、来年4月からの「国選弁護事件の当番制度」の実施に向けて準備を進めている。この制度は、国選弁護の登録者に1年間に何回国選弁護事件を受任するか希望を聞き、原則としてその希望回数分だけの期日を国選担当日として予め日程を割付け、担当者はその担当日に公判が予定されている事件の中から自分が推薦を受ける事件を先着順に選択するというもの。
 当会としては、予め国選担当日が決まることで国選事件のための日程が確保され易くなり、新たな国選登録者が増えることを期待するとともに、これまで毎年国選登録をしながら期日の調整がつかないなどの理由で、実際には1件も国選弁護を受任できなかった会員の便宜を図り、国選弁護事件受任の平準化を目指す。
(制度の概要)
(1)登録者は年間の受任希望回数を申し出る
(2)弁護士会が登録者に国選弁護担当日を割り付ける
(3)登録者は担当日の事件から事件を先着順に選択する
(4)事件を選択せずに事件が残った場合は弁護士会が事件を指定する場合もある
新制度における受任手続
1.公判日
4週間(28日)前
   
1.公判日4週間(28日)前
担当者に、FAXにて、国選事件開示の連絡をさせて頂きます。
担当者は、原則として公判日3週間前までの1週間の間に、弁護士会にて公判日の事件の中から、希望する事件を選択して頂きます。
事件の受任につきましては、開示日以降先着順となります。
2.公判日
3週間(21日)前

3.公判日
3週間前以降

4.公判日
2週間(14日)前
 
2.公判日3週間(21日)前
原則として、受任手続は終了いたします。
公判日3週間前以降は、
(1) 事件が残っている場合
  刑弁より担当者へ事件を割当てさせて頂きます(FAXにて連絡します)。
(2) 公判日の事件が全て受任された場合
  受任手続をされなかった担当者は、そのまま担当日の割当てを外れることになります(連絡なし)。
※公判日3週間前以降の事件の割当ては、公判日2週間前までには終了します。
…公判日2週間前を過ぎても連絡がない場合は、担当解除ということになります。
5.公 判 日
新制度のシミュレーション(その1)
平成14年10月31日(木) 事件数>担当者の場合
事件名 出入国管理
(横浜地裁)
出入国管理
(横浜地裁)
交通法違反等
(横浜地裁)
窃 盗
(横浜地裁)
覚醒剤取締
(横浜地裁)
出入国管理
(横浜地裁)
業務上過失
(横浜地裁)
業務上過失
(横浜地裁)
覚醒剤取締
(横浜地裁)
常習累犯窃盗
(横浜地裁)
担当者 A弁護士 B弁護士 C弁護士 D弁護士 E弁護士
F弁護士 G弁護士 H弁護士 I弁護士  
10月31日の事件数は10件、担当者は9名なので、すべての担当者に受任手続をして頂くことになります。
また、この日の事件は担当者だけではすべての事件の弁護人が決定しないので、応援者名簿より1名、事件受任の依頼をさせて頂くことになります。
新制度のシミュレーション(その2)
平成14年11月1日(金) 事件数<担当者の場合
事件名 公務執行妨害
(横浜地裁)
窃 盗
(横浜地裁)
窃盗未遂
(横浜地裁)
建造物侵入等
(横浜地裁)
交通法違反等
(横浜地裁)
傷害・恐喝
(横浜地裁)
傷害・恐喝
(横浜地裁)
     
担当者 A弁護士 B弁護士 C弁護士 D弁護士 E弁護士
F弁護士 G弁護士 H弁護士 I弁護士  
11月1日の事件数は7件、担当者は9名なので、受任手続をして頂く担当者は7名となります。
具体的には、担当者A弁護士〜G弁護士が既に受任手続を終えた場合、裁判所より急遽国選弁護人推薦依頼がない限り、H弁護士およびI弁護士は担当を外れることになります。
 本年度の実施については、当会は既に会員集会や本制度についてアンケートなどで会員の意見を聞き、また裁判所とも協議しているところである。担当の木村保夫副会長に本制度についての会員集会での会員の意見や本制度の抱える問題点を中心にQ&Aの形で答えてもらった。
もしかすると、本制度は誰にとっても使い勝手のよい制度ではないかも知れない!?
 本制度について、会員集会などでの会員の意見はどうですか。
 多くの会員には、本制度導入の趣旨を理解していただいていると思います。仮アンケートでは六割ほどが賛成ということでした。
 しかし、乱暴な言い方をすると、もしかすると、本制度は誰にとっても使い勝手のよい制度ではないかも知れません。
 なぜなら、本制度は一言で言うと他の仕事との関係で「余裕があるときにやろうとしていた国選弁護事件を、やると言った以上本当にやらなくてはならなくなる制度」だからです。
 これまで、年間七〜一〇件位国選事件を受任してきた会員は「当番や国選で否認事件をやっていたり、次々と追起訴の事件をやっているときには、国選の事件依頼のハガキが来ても、その事件が済んだら次の国選をとりに行こうと思ってやってきたが、これからはそんなことはおかまいなしに先に担当日が決まっているので大変だ」と言います。
 また「国選もやらなくてはと思いながら登録はしていたけど、破産管財事件や民事再生事件で忙しくなって国選を受けられないときもあった。これからは、そうは言っていられないんだよね」という会員も大勢います。
 いずれもよく理解できます。でも、それでもやはりそういった方にも是非ご協力をお願いしたいのです。
 なぜなら、その結果が今日の国選弁護の現状を招いたと考えるからです。
 
本庁管轄についていうとわずか五五・五%の会員しか国選登録せず、しかも、国選登録した会員の四〇%が年間〇〜二件しか受任していない現状がある一方で、年間八三件を受任した登録会員をトップに受任事件数上位一〇名の会員で国選事件全体の二〇%を受任しているという現状があるのです。やはりこのような事態は改善されるべきであると考えます。
 刑事弁護センターや当会は、ここ一〇年間、事ある毎にこうした現状を会員に訴え、また国選登録の勧誘活動をしたり、現在のはがき制度を復活させたり様々な改革を試みてきました。
 その結果、確かに国選登録者は以前よりは増えました。
 しかし、会員の「いま忙しいので国選弁護をやっている暇がない」という「大きな壁」はどうしても越えられなかったのです。
 考えたら、いまの我々に「忙しくない」というときは果たしてあるのでしょうか。
 眼前に迫った被疑者国選制度を担っていくには、「暇なときに国選弁護をやる」という意識を改めて「法律相談のように日常的な業務の中に国選の刑事事件を組み込んでいく」という姿勢が求められていると考えるのです。
 仮アンケートで「いままで国選登録していなかったけど、この制度なら予め期日が決まるのだから、国選登録して、たとえ年間二件でも三件でもやるよ」と答えた中堅会員も少なからずいました。
 嬉しくもあり、また勇気が湧いてくる回答でした。
残った事件がどんな事件でも拒否できないとして受任義務を課すことはない
 事件選択期間に事件を取りに行かないと当会の方で受任する事件を指定してくると聞きます。
 また、先着順ということなので、事件を取りに行ったら事件が一件しか残っておらず、それが強制わいせつ事件で自分の信条から性的犯罪の弁護はやらないという場合でも受任義務があるのでしょうか。
 もし、受任義務があるとすれば、国選登録自体を取り消す会員もでてくるのではないでしょうか。
 国選弁護事件を熱心にやってきた会員のなかで本制度が導入されたら国選登録することに躊躇する理由としてこのような理由を挙げる会員もいました。この受任義務の問題については、いずれ、当番弁護士の場合も含め突き詰めて議論すべき問題ではあるとは思いますが、本制度においても受任義務は課しておりません。
 本制度については「国選弁護人推薦に関する規則」の改正という形式をとりましたが、同規則でもこのような場合について「委員会は、その会員をその本件の国選弁護人とし推薦すべき者を指定することができる」と規定するのみです。
 ただ、受任義務を課さないというのは、このような「残った事件を受任することが信条に反する」という場合やそれに準ずる正当な理由がある場合に限り、ただ「多忙である」という理由で受任を拒否することは本制度の趣旨に反するところであると思います。
公判日よりも四週間以上前(例えば六〜八週間前)の事件はその都度通知し、事件を選択してもらいます
 当会の説明によると「裁判所からは、遅くとも公判日の四週間前に事件を弁護士会に出してもらう。
 事件がきたら以後一週間の間に各自弁護士会に来会して事件を選択する」とありますが、これまで四週間より前(例えば公判日の六〜八週間前)に来ていた事件も四週間前になるまで裁判所から推薦依頼が来ないのでしょうか。
 あるいは裁判所からは四週間より前に事件が来ても弁護士会の方で四週間になるまで事件を寝かせて選択させないのでしょうか。
 それでは被告人にとっては不利益になるし、弁護人としても充分公判前の弁護活動をする機会が失われるのではないでしょうか。
 逆に、公判日まで四週間を切ってから(二〜三週間前)来た事件はどうするのですか。
 裁判所との協議で裁判所が一番心配したのはこの点のようです。
 本制度実施後も裁判所からは従前どおり、公判期日の四週間より前に推薦依頼が来る場合がありますし、その場合に弁護士会の方で四週間になるまで事件を寝かせて事件選択させないということはありません。
 四週間よりも前の事件はその都度、当該日を担当日とする会員に通知し、事件を選択してもらいます。
 逆に、公判日まで四週間を切ってから来た事件(公判日の二〜三週間前に来た事件)については、もともと当該日を担当としていた会員がすでに別の予定を入れて受任できない時は、「応援弁護士」に受任していただくようになります。
 「応援弁護士」は中途入会の会員や割付けられた担当日以外でも日程が合えば受任してよいとして予め登録していただいた会員で構成されます。裁判所には公判前に充分な弁護活動をするためにも、また本制度の運用上からも「遅くとも四週間前に」とお願いしてありますが、そのような事件が来た場合には、やむを得ません。
 本制度について、会員の皆さんにも是非趣旨をご理解していただき、ご協力をお願いします。
(木村 保夫副会長)

山ゆり
 先日、司法試験の合格発表があり、ひょんなことから大学別合格者数一覧表を入手した。この中にお一人、東京芸術大学出身の方がいました。どなたかは存じませんが、おめでとうございます
 異論もあろうが、美術にしろ音楽にしろ、芸術の素晴らしさは人に喜びや感動を与える点にある。この感動を味わいたさに学生時代、最低でも月に二回はクラシックの音楽会を聴きに行った。今は亡きカラヤン指揮ベルリンフィルのブラームス交響曲第1番、ポリーニのドビュッシーエチュード全曲演奏など、鮮明に思い出す。いや、正確にはどんな演奏だったかはあまり覚えていないが、どれだけ感動したかは本当に良く覚えている。体中が震え、そのあと涙が止まらなかった
 しかし今の仕事は、残念ながら感動とは無縁である。仕事がうまくいった時にはそれなりに嬉しいが、法廷で目頭が熱くなったことなど一度もない。ましてや依頼者を感動させることなど、一生無いかも知れない
 私は演奏会で味わった感動によって、大げさに言えば自分が変わったと信じているし、そんな感動を与えてくれた演奏家達を心から尊敬している。だから芸大出身の方が法曹界に入ろうとされるのを見た時の最初の率直な感想は「どうして?」というものであった イラスト
 でも弁護士も、依頼者の窮状を救い、依頼者に満足を与えることは可能だし、弁護士にしかできない仕事もある。芸大出身の方の法曹界でのご活躍をお祈りしつつ、私も少しでも依頼者に満足を与えることができるよう、精進しなければ。
(奥園龍太郎)

▲ページTOPへ
戻る
内容一覧へ