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何故ハトの子どもを見かけないのか

2024年11月15日島 幹彦弁護士

 小学生の頃、兄がオーストラリアの土産でカモノハシのぬいぐるみを買ってきてくれた。カモノハシは、哺乳類なのに卵生で、カモみたいな嘴があり、足には水掻きがある。モグラを水鳥化したようなイメージである。ぬいぐるみをもらったのがうれしくて、何となくこの珍妙な生物が好きになった。

 カモノハシに限らず、オセアニアの生物は独特である。早い段階で他の大陸との往来が途絶えたからであろう。しかし、有袋類には、有胎盤類と似ているものが少なからずいる。オオカミとフクロオオカミ、モモンガとフクロモモンガ、モグラとフクロモグラ等である。小学生の私は、「何故袋がある種とない種に分かれたのだろう」、より正確には、「何故オセアニアでは様々な動物が悉く袋がある生態に進化したのだろう」と疑問に思っていた。

 しかし、この疑問は、前提の理解を誤ったものである。有袋類は、進化の過程において、有胎盤類と分化してから、多様な生態に進化していったのであって、オオカミからフクロオオカミにあるいはフクロオオカミからオオカミに直接進化したわけではない。有袋類と有胎盤類が、それぞれに環境に適応する中で、似た形態に進化するものがあっただけである(収斂進化)。「フクロ~」の名称も、既知の有胎盤類に似ていることから付けられたに過ぎない。西インド諸島をインドの西側の島々と思い込むようなもので、小学生の私は、大して考えることも調べることもなく、名前と見た目から、勝手にオオカミとフクロオオカミを親戚扱いしていたのである。

 最近、『葬送のフリーレン』という漫画が気に入っているが、その中で収斂進化の話が出てきた。絶滅した海生爬虫類の形態がそっくりな話からこの言葉を知ったせいか、有袋類と結び付けて考えていなかったが、漫画でこの言葉が出てきた瞬間、はたと気付いた。オオカミとフクロオオカミも収斂進化であると。小学生の頃の誤った認識を、無思考と思込みを、そのまま放置してきたことが恥ずかしくなった。

 少し前に、「何故ハトの子どもを見かけないのか」というクイズを出された。そもそもハトの子どもを見かけないと思ったこともなかった。調べてみたところ、主たる理由の1つは、私には思いもよらないものであった。生物は不思議である。そして、やはり無思考と思込みはよくないと思った。

写真1

みんなソックリ収斂進化

写真2

普段見かける大人のハト

 

 ※いずれも執筆者が思いのままにマウスを走らせた絵です。

執筆者情報

弁護士名 島 幹彦
事務所名 弁護士法人Next横浜オフィス

 

こちらに記載の事務所情報等は執筆当時の情報です

 
 
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