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オーボエ

2022年03月04日大﨑 徹弁護士

 オーボエという楽器を30年ほど細々とやっています。
 クラリネットより一回り小さい縦笛で、オーケストラの真ん中あたりに座り、舞台上の音合わせで最初に基準音を出す楽器です。

 オーボエは2枚の葦を重ね合わせた「リード」という発音体を口に咥え、重ね合わせた葦の隙間に息を吹き込んで音を出します(ストローを咥えてピャーと鳴らす要領)。リードの隙間は0.5ミリもなく息が殆ど入らないくせに、高圧で息を吹き込まねば音が出ません。その結果、奏者は肺の中に余った二酸化炭素によって窒息死しかけたり、加圧し過ぎて毛根がダメージを受け抜け毛が増えたりします。私の場合、ハタチを過ぎてから総毛一挙に天然パーマへと変貌し、周囲をあっと驚かせました。

 さて、オーボエ奏者はこの「リード」を自作します。素材は南フランス産の葦で、専門の楽器店で1枚ずつ選んで購入します。温暖化により栽培が難化し、高いものだと1枚700円もして懐を圧迫します。
 楽器店からの帰路は警官の目が気になります。鞄の中にはチャック付きビニール袋に封入された怪しげな植物片が大量にあるため、職務質問での追及は熾烈を極め、私の弁解は理解されずに嚙み合わない攻防が予想されます。

 無事帰宅すると、葦を水に浸し2枚に重ね、専用チューブに糸で括り付けてから、咥える側の先端をナイフでカリカリ削っていきます。1本作るのに1時間以上かかるのに、良いリードは5本に1本もできないので、必然的に4時間は徒労と化すという狂気の作業です。

 良いリードができても吹いているうちに鳴りが悪くなり1か月ほどで寿命が尽きます。よって吹き続けるためには作り続けねばならず、オーボエ奏者は、今日も妻子の冷たい視線に耐えながら、孤独な闘いを繰り広げるのです。

 かくも厄介なこの楽器はギネスブックで難度No.1に認定されているそうです。
 そんなオーボエの魅力をまだ御存じでない方は、チャイコフスキーの交響曲第4番かブラームスのヴァイオリン協奏曲(いずれも2楽章)などを是非聴いてみてください。

写真1

オーボエ

写真2

リード作り

 

執筆者情報

弁護士名 大﨑 徹
事務所名 アレイナ横浜法律事務所
事務所住所 横浜市中区山下町252番地
グランベル横浜ビル1階4号
TEL 045-222-3830
FAX 045-222-3831

 

こちらに記載の事務所情報等は執筆当時の情報です

 
 
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