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古池の真実 |
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2017年05月08日太宰 順一弁護士
新緑の季節になりました。この季節になると思い出すのが、「目に青葉山ほととぎす初鰹」という俳句です。爽やかな五月の風景を思い起こさせるとともに、鰹のたたきを食べたくなる句です。
この句は山口素堂のものですが、俳句と言えば日本人なら誰でも思い浮かべるのが松尾芭蕉です。松尾芭蕉は有名な俳句をいくつも詠んでいますが、その中でも真っ先に思い浮かぶのは、「古池や蛙飛び込む水の音」です。
この句の解釈は、学校で習ったところでは、静寂の中で、蛙の水に飛び込む音が一層静寂を思わせるというものです。これだけではなく、この句を見ると、私には、色々な情景が浮かびます。場所は、江戸の古寺です。寺は、市川雷蔵さん演ずる眠狂四郎がねぐらにしていそうな、人の寄り付かない少し荒れた寺です。池の周りには、石が並べられ苔むしています。池のそばの木が茂っていて、昼も薄暗くなっています。池の水も藻で緑になっています。そのような池にトノサマガエルがぴょんと飛び込みました。この句のどこにも江戸のエの字が出てきません。しかし、芭蕉は江戸に住んでいました。このため古池は江戸にあるはずと考えました。
古池は近江の地にあった
あるとき秘仏の開帳があるというので滋賀県にある岩間寺に行きました。境内を歩いていると、意外なことが書いてありました。「古池や」の句の古池は、これだというのです。意外な思いが一挙に募りました。古池は江戸ではなく、近江にありました。そして街中ではなく、山の中です。寺は、荒れ寺では決してありませんでした。それどころか、創建が古い、名刹です。池は日のさす明るいところにありますし、古色蒼然たる池ではありません。私が句から抱いた想像あるいは妄想が全部覆りました。
古池やの句を思い浮かべると、今も昔抱いた想像が頭に浮かびますが、明るい現実の古池が同時に頭に浮かび、複雑な感情にとらわれます。
執筆者情報
弁護士名 | 太宰 順一 |
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事務所名 | ポートサイド太宰法律事務所 |
Webサイト | http://portside-dazai.sakura.ne.jp/ |
こちらに記載の事務所情報等は執筆当時の情報です