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弁護人が「証人の発言に異議あり!」と言わない理由 |
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2015年05月15日青野 壽和弁護士
「異議あり!証人の発言はムジュンしています」
刑事物の弁護士ドラマやゲームなどで見かけるこうした台詞、弁護人が実際に言うことはないのですが、それはどうしてでしょうか。
「異議」とは、一般的には「何かに対して不満・不服である」ということであり、法律用語でもあまり変わりません。
ただし、刑事裁判での異議は、裁判官(※)に対して言うことになっています。なぜなら、裁判手続を取り仕切り、それが正しいかどうかを判断するのは裁判官だからです。だから、異議は裁判官に「手続でおかしなことが行われているので、止めさせて(止めて)下さい」と言う意味で言うわけです。
では、事件に関係して証人が矛盾したことを言ったことは、異議を言えることなのでしょうか。
そもそも、証人の言い分は書面で読んでも分かるのに、裁判でわざわざ証人尋問をするのはなぜでしょうか。それは、証人が経験したことを法廷で実際に話してもらい、しゃべり方や態度、相手方からの質問への返答等も考え、証人の言い分が信用できるかを裁判官が確かめるためです。
だからもし、弁護人の質問に対し検察側の証人が矛盾したことを言いだしても、それは書面では分からない「証人尋問の成果」であり、裁判官としては、まさに聞きたかったこととも言えます。よって、何もおかしなことではないので、異議を言うようなことではなく、法律上も異議は認められていません。
一方で、検察官が証人を威嚇するような質問をしたり、事実でないことを前提として質問をしたりするような場合は、証人の言い分が信用できるか確かめることの妨げになり、放置すると、証人尋問をする意味がなくなってしまいます。このようなことから、これらについては法律上も異議を述べることができることになっており、検察官の質問の仕方について、弁護人は異議を述べるということになります。
(※法文上は裁判所・裁判長ですが本コラムでは便宜上裁判官で統一します)
執筆者情報
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