2018年06月14日更新
本年4月27日、特定複合観光施設区域整備法案(以下「カジノ解禁実施法案」という。)が国会に上程された。
当会は、これまで、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案(いわゆる「カジノ解禁推進法案」)に対し、深刻なギャンブル依存の問題をさらに悪化させること、暴力団等の反社会的勢力がカジノ経営に直接・間接に関与し資金源を得ることやマネーロンダリングのおそれを排除できないこと、ギャンブル依存者が生み出される等による生産性の喪失や社会コストの増加について何ら検討がなされていないことなどの理由から、平成26年10月9日付けで廃案を求める意見書、平成27年7月8日付けで廃案を求める会長声明、平成28年12月12日付けで廃案を求める会長談話を発表し、カジノ解禁に反対の立場を明らかにしてきた。
その後、カジノ解禁推進法案は同年12月15日に成立したが、この度、国会に上程されたカジノ解禁実施法案は、刑法第185条及び第186条の規定を適用除外として、このカジノ解禁推進法を具体的に実施するための法案である。
この点、当会が従前から主張しているとおり、反社会的勢力がカジノ経営に直接・間接に関わることを完全に排除することは不可能であり、反社会的勢力が資金源を得ることやマネーロンダリングのおそれを排除できるものではない。そして、生産性の喪失や社会コストの増加についても十分な検討がなされているともいえない。
また、カジノ解禁実施法案は、ギャンブル依存症対策として、入場回数制限を7日間で3回、28日間で10回まで、入場料を6,000円と定めている。政府は、世界最高水準の規制を導入すると繰り返し説明していたが、シンガポールが入場回数最大月8回、入場料8,000円としていることと比較しても、世界最高水準の規制とはいえない。一回当たりの賭金金額の規制、入場時間の制限、プレイ時間の上限規制等について、何ら具体的な規制内容が示されておらず、「世界最高水準の規制」が示されているとはおよそ言い難い状況にある。これでは、ギャンブル依存症対策として、およそ不十分である。さらに、一定の条件を付しているとはいえ、カジノ事業者が顧客に金員を貸し付けることを可能にしており、ギャンブル行為を促進するような定めもある。
本来、カジノの開設は、賭博場の開帳として刑法が禁じていることであり、刑法を所管する法務省は、カジノについて、目的の公益性等配慮すべき8項目を指摘してきたところである。しかしながら、法案において、これらの配慮は不十分であり、法案審議においても十分な審議が行われていない。
加えて、昨年8月に実施された意見募集(パブリックコメント)でも、1234名から提出された意見のうちカジノに反対するという意見が829件もあり、これに対するIR制度に賛成するという意見はわずか44件であった。各種世論調査でもカジノに反対あるいは慎重とする意見が賛成とする意見を圧倒しており、国民の理解を得られているとは到底言えない。
以上より、当会としては、今国会に提出されたカジノ解禁実施法案に強く反対し、廃案を求めるものである。
2018年(平成30年)6月13日 神奈川県弁護士会 会長 芳野 直子
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