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会長声明・決議・意見書(2017年度)

憲法記念日会長談話

2017年05月02日更新

 本年5月3日で日本国憲法が施行されて70年になります。

 国内外で多くの犠牲者を生んだアジア太平洋戦争への反省を踏まえ、私たちは、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義を3つの基本原則とする新しい憲法を制定しました。

   大日本帝国憲法の下では、人権は、臣民としての権利にすぎず、法律の定めによってどのようにも制限されるものでしたが、日本国憲法の下では、私たちは、ひとりひとりかけがえのない個人として尊重され、誰もが生まれながらに侵すことのできない基本的人権を持っているとされています。 

 しかしながら、この1年を振り返って、とりわけ、この神奈川県においても、川崎で在日コリアンの人々への差別や憎しみをあおるヘイトスピーチデモが行われたり、津久井やまゆり園で19人もの障がい者が殺害されるという痛ましい事件が発生した際に障がい者に対する差別的な言説が行われたり、福島原発事故避難者である子どもへのいじめに対し学校や教育委員会による適切な対応がなされなかったり、小田原で市職員が生活保護受給者を訪問する際に差別的な文言を印刷したジャンパーを着ていたことが発覚したりするなど、少数者の人権が侵害されるさまざまな事件が相次いでいます。

 また、国政についてみると、現在国会で審議中の組織犯罪処罰法改正案は、いわゆる共謀罪の創設を含むものですが、内心の自由(思想良心の自由)や表現の自由等を侵害するおそれの極めて高いものです。

 人権を保障するために憲法により国家権力を制限する立憲主義も、危機に瀕しています。 

 安全保障関連法をめぐって、昨年11月15日に、南スーダンの国連PKOに派遣されている自衛隊に対し、「駆け付け警護」などの新たな任務が付与されたことから、自衛隊が、政府軍、反政府軍を始めとする武装勢力と戦闘を行うという、憲法第9条の禁止する武力の行使へと発展しかねません。また、本年5月1日から、改正された自衛隊法95条の2に基づき、防衛大臣は自衛隊に対して米海軍の補給艦の武器等防護を命ずるに至りましたが、これは、まさに外国の軍隊のために、現場の自衛官の判断により敵対勢力に対する武器使用を認めるものであって、実質的な集団的自衛権の行使になりかねない、極めて危険なものです。安全保障関連法の適用・運用次第で、この国のあり方や命運が左右されかねない危険な状況があります。

 そして、衆議院憲法審査会では憲法を改正し緊急事態条項を盛り込むべきか否かが議論されていますが、緊急事態条項は人権保障と権力の分立を一時的に停止する規定であり、立憲主義を破壊する危険性があり、慎重の上にも慎重な議論が必要です。

  日本国憲法施行70年を迎えるにあたり、神奈川県弁護士会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の団体として、こうしたさまざまな問題について、さらにいっそう真摯に取り組み、人権が十分に保障され、憲法が生かされる社会を目指して、努力を重ねていきたいと思います。

2017年(平成29年)5月3日
神奈川県弁護士会
会長 延命 政之

 
 
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